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御神火ライド2018

社員と一緒にハイエンドバイクで“タイムアタック”!ドイツのトップブランド「キャニオン」大解剖 家族的な社風と最新設備が生む高品質バイク

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 ドイツ中西部の町、コブレンツに本社を構えるスポーツサイクルメーカー「Canyon」(キャニオン)を9月下旬に訪問した。工場見学、食堂でのランチ、オフィス訪問に加え、キャニオンのスタッフと共に走った風光明媚な丘陵地帯、約60kmのライドの様子をレポートする。

キャニオンのヘッドクオーター、工場が入る建物=ドイツ・コブレンツキャニオンのヘッドクオーター、工場が入る建物=ドイツ・コブレンツ

アットホームな社風

敷地内に駐車されていたCanyon Factory Enduro Teamのチームカー敷地内に駐車されていたCanyon Factory Enduro Teamのチームカー
社員専用の屋内駐輪場。自社製だけでなくさまざまなバイクが掛かっていた社員専用の屋内駐輪場。自社製だけでなくさまざまなバイクが掛かっていた

 コブレンツは、ドイツ西部を縦断する国際河川・ライン川に、フランスを水源とするモーゼル川が合流する地点に位置する。キャニオンの社屋は、市の中心部を少し離れ、蛇行するモーゼル川に包まれたような土地にあった。

 2階建ての広大な建物には、デザインチームやサービスセンターのオフィス、組み立てや修理を行なう工場、さらに一般客が利用可能なショールームやショップが備わる。セールス・マーケティングの部署はまた別の建物に用意されていた。現在は本社で総勢350人ほどが働いているという。

 朝10時、「Cyclist」のジャージ姿でキャニオンの社屋を訪れた記者に対し、スタッフの誰もが微笑みを投げかけてきた。この日初めて訪れた記者にも、家族的な社風が十分に伝わってきた。

 まもなく50歳という創業者、ローマン・アーノルド社長は、社員がよりよい環境で働けることへの探究心が旺盛なのだそうだ。「休憩スペースの椅子のデザインも自分でしてしまうくらい」と笑うのは、ガイドを勤めてくれたセールス・プロジェクトコーディネーターのザビーネ・ニーダーヴィーザーさん。社員が利用できるキッチンや、子供を持つ親のためのキンダーガーデンも完備され「とても働きやすい環境」なのだという。

歴史的なバイクが並んだギャラリー入口。一番左はアーノルド社長が15歳の時に初めて乗った特大サイズの自転車歴史的なバイクが並んだギャラリー入口。一番左はアーノルド社長が15歳の時に初めて乗った特大サイズの自転車
キャニオンの始まりは、アーノルド社長がイタリアから運んだ自転車をドイツで販売していたことキャニオンの始まりは、アーノルド社長がイタリアから運んだ自転車をドイツで販売していたこと
他部署のメンバー同士が顔を合わせて楽しいランチタイム他部署のメンバー同士が顔を合わせて楽しいランチタイム

 「Mahlzeit(マールツァイト)!」とお昼時のあいさつが飛び交うランチタイムは、敷地内に分散している社員同士が顔を合わせるチャンスだ。食堂で記者がお邪魔したテーブルでは、社内のデザイナーのほかに、同社が機材サポートするMTBチーム「トピーク・エルゴン」のチームマネージャーやメカニック、またプロロードレースチーム「カチューシャ」のチーム・リアゾン(橋渡し)マネージャーらがいっしょに食事を楽しんでいた。

新設されたばかりの来館者用メンテナンスコーナー新設されたばかりの来館者用メンテナンスコーナー
ヘッドクオーターのオフィス通路に飾られたジャージの中には、小柄なホアキン・ロドリゲスのものもヘッドクオーターのオフィス通路に飾られたジャージの中には、小柄なホアキン・ロドリゲスのものも

 

高品質を維持するために、すべてのバイクをCTスキャン

修理コーナーではユーザーから送られてきたバイクが並ぶ修理コーナーではユーザーから送られてきたバイクが並ぶ

 キャニオンの特徴は、代理店・小売店を通さない直売方式をとっていること。高品質なバイクを、より多くの人に乗ってもらうために貫かれてきた方針だ。ユーザーは、購入後30日まではバイクを返品可能。またアフターサービスとして、料金着払いで修理を受け付けている。工場内に設けられた修理コーナーには、世界各地から送られてきたマウンテンバイク(MTB)やロードバイクがズラリと並んでいた。

 販売拡大に合わせ、同社はドイツ以外にもフランスやイタリアに現地サポートセンターを開設。本社では今年8月、同社製バイクのユーザーが来訪時に利用できるメンテナンスコーナーも敷地内に新設された。

 またキャニオンのもうひとつの大きな特徴は、組み立て前のすべてのバイクを対象に、工業用CTスキャンを用いて、外からは見ることができない内部の不具合の有無を確認している点だ。異物混入や形成の不備、キズ、それに素材の厚みが均一かどうかまでチェックされ、規定外であれば出荷製品から省かれる。

フロントフォークをCTスキャンしているところフロントフォークをCTスキャンしているところ

 規定外の例を説明してもらったが、フレームの一部でわずかに薄い部分があったり、部分的な形成不備があったり―という程度で、素人には気づくのも難しい小さな問題に思われた。しかし、作業の様子を説明してくれたクリスティアン・ヴァンガードさんは、「CTスキャンはキャニオン製品の品質を維持する重要な工程」とアピール。「ほかのメーカーがこうしたチェックをしないでいられることが不思議」とまで言い切った。

ヴァンガードさんが厳しい眼差しでスキャン画像をチェックするヴァンガードさんが厳しい眼差しでスキャン画像をチェックする
スキャン作業により問題を発見した場合は、該当箇所にこのシールが貼られ規格外製品とされるスキャン作業により問題を発見した場合は、該当箇所にこのシールが貼られ規格外製品とされる

 品質管理部門では、80kgの重りや半日程度続く振動で負荷を加える耐久テストの様子も見ることができた。同社がロードバイクとトライアスロンバイクに付与する「6年間保証」は、こういった万全の体制による自信と実績に基づいているのだと、強く実感した。

フォークコラムをカットしていた担当者。「僕はさながら、フレームとフォークの結婚式を執り行なう司祭だね!」フォークコラムをカットしていた担当者。「僕はさながら、フレームとフォークの結婚式を執り行なう司祭だね!」

 ビギナー向けバイクやMTBの組立作業が行なわれているエリアでは、組み上がったフレームが並ぶ一方で、作業予定・作業完了数と時間の経過を棒グラフの減り具合で視覚的に確認できるモニターが天井各所に吊るされていた。作業スタッフにとっては、なかなか心臓に悪そうだ…。工場での勤務は、バリバリと作業を進められるように2シフト制が取られているという。この日も午後6時を回りほかの社員が帰ったあと、工場内から試乗へと飛び出していくスタッフの姿が見られた。

ところ狭しと並んだホイール。その奥には、組み立て作業の状況を確認できるモニターが見えるところ狭しと並んだホイール。その奥には、組み立て作業の状況を確認できるモニターが見える
工場内から試走へ繰り出すスタッフ。雨の日は、この細い通路が試走コースとなる工場内から試走へ繰り出すスタッフ。雨の日は、この細い通路が試走コースとなる

 工場内の片隅に設置されたボードには、いくつか張り紙があった。ニーダーヴィーザーさんは、「スタッフから集めた現在進行中の課題・改善済みの課題を掲示しています。意見が採用されて環境改善に貢献したスタッフには、相応のボーナスが入る仕組みです」と説明してくれた。現場の声を尊重し、上層部の目が届かない場所でも環境改善を進めている証だ。

 

ハイスペックなカーボンバイクでライドへ

 午後3時、ガイドに付き添ってくれたニーダーヴィーザーさんに、ロードバイク部門のプロダクト・マネージャー、セバスティアン・ヤチャックさんが加わり、いよいよライドのスタート。記者に貸し出されたのは、キャニオンのフルカーボン最上位シリーズ「Aeroad CF」というハイスペックマシンだ。

記者サイズにフィッティングしてもらったAeroad CF。XSサイズでもかっこよさは抜群記者サイズにフィッティングしてもらったAeroad CF。XSサイズでもかっこよさは抜群

 身長159cmの記者には、XSサイズでも少し大きめで、サドルを下げようとしてもシートポストがボトルケージのネジに干渉して下げられない。するとヤチャックさんが「ちょっと待ってて」と工場へ向かったかと思いきや、シートポストの長さを少しカットして戻ってきた。完璧なフィッティングサービスだ。

サイズ調整のために工場でカットが施されたシートポストサイズ調整のために工場でカットが施されたシートポスト
すばらしいバイクを手に恐縮中の記者すばらしいバイクを手に恐縮中の記者
モーゼル川沿いのワイン畑を横目に走るニーダーヴィーザーさん(左)とヤチャックさんモーゼル川沿いのワイン畑を横目に走るニーダーヴィーザーさん(左)とヤチャックさん

 モーゼル川流域はドイツ有数のワイン産地。斜面に広がったワイン畑をかすめる小道を走り抜けた。時折、ワイン居酒屋がひしめく小さな集落に出会うと、リースリング種の白ワインが恋しくなる。

 不意に、「乗り心地はどう?」とヤチャックさんから問われた。記者自身の愛車は、フレームがフルカーボン製でありながらロングライドに向いたバイクのため、この“決戦仕様バイク”は正直に言って硬いと感じていた。感想をそのまま伝えたところ、ヤチャックさんはニヤリと笑った。「このあと性能がわかる場所に行くよ」

 

いつでも誰でも“上りタイムアタック”で勝負!

「Canyon Stoppomat」で打刻をしてスタート!「Canyon Stoppomat」で打刻をしてスタート!

 17kmほど走った時点で、「Canyon Stoppomat」と書かれた小さな屋根付きのスタンドが現れた。ここから、長さ8.4km、平均勾配4.2%の坂が続くのだが、このスタンドには時間を打刻する機械が設置され、フィニッシュ地点にも同様のスタンドが設けられている。同じくスタンドに置かれている専用台紙にスタート・フィニッシュタイムを打刻してエントリーすれば、だれでも自由にタイムトライアルに参加できるというわけだ。ドイツ国内には現在、14カ所のStoppomatタイムトライアルポイントが設置されており、そのうちこの場所はキャニオンがサポートをしているのだという(現時点での順位などはここから確認できる)。

 いつも練習に使っているコースで、見ず知らずのライダーたちとタイムトライアル勝負ができる…なかなか面白い趣向だ。オンラインでつながる術は、走行ルート管理アプリなどで存在してはいるものの、だれとでも同距離での記録を比べられるわけではない。アナログとデジタルのメリットを生かしたシステムに感心しながら「準備はOK?」と、さっそく記者も打刻! 急いでスタートを切った。

 “坂”と言っても緩い上り勾配がだらだらと続く道、ペダルを回しながら会話を楽しんだ。その間にも、どこかでウサギやシカが落ち葉をかき分ける音が聞こえた。

 会話の内容は、道端の特大キノコが実はとてもおいしいといったことから、コブレンツからおよそ50km離れたサーキット、ニュルブルクリンクでの“自転車”24時間耐久レースに参加したという話まで。1周22kmのうち最大勾配17%もあるコースを24時間…聞くだけで気が遠くなりそうだ。

 ヤチャックさんが涼しい顔で進む傍らで、ニーダーヴィーザーさん、そして記者も息が上がってきた。キャニオンがサポートするUCIプロチーム「カチューシャ」のライダーとニーダーヴィーザーさんが以前走った時には、彼女が苦しい顔で進む横でライダーは余裕で携帯電話をいじっていて「とても屈辱的だった。さらに『押してあげようか』だなんて聞いてくるから、きっぱり断ったわ」と笑った。するとヤチャックさんは、「それが彼らの仕事だからね。彼らは逆にフランスやイギリスでバイクが何台売れたかなんて知らないだろ?」。すかさず双方をフォローする様子が温かい。

「がんばれ~」「がんばる~」という状況「がんばれ~」「がんばる~」という状況
フィニッシュ地点で打刻されたタイムはこのとおりフィニッシュ地点で打刻されたタイムはこのとおり

 フィニッシュ地点に到着! 達成感に満たされながらはしゃいでいると、打刻を急かされた。そうだった、打刻打刻…結果は、34分01秒。トップの選手は16分51秒、ヤチャックさんの記録は19分03秒というから、ずいぶんとゆっくり上ったものだ。

城をバックに走るニーダーヴィーザーさん城をバックに走るニーダーヴィーザーさん

 上りがあれば、下りがある。その後、7kmほど続いた下りでは、Aeroad CFの性能を存分に体感した。もちろん、サドルから腰を上げダンシングで上っていたときもバイクの良さは感じられたが、下りで時速50kmというスピードが出ても車体はまったく安定し、風を切ることに快感を与えてくれる。むしろ、それだけ普通にスピードが出てしまうことに不安を感じた記者の緊張がバイクにダイレクトに伝わり、進路をぶれさせてしまう感じだ。なるほど、と素晴らしさを実感しながら、できるだけ気持ちを落ち着かせて下っていった。

 

アフター5はライドやトレーニング 会社以外の時間も大切に

左側からモーゼル川、右側からライン川が合流する「Deutsche Eck」(ドイツの角、の意)にて記念撮影。左からニーダーヴィーザーさん、記者、ヤチャックさん左側からモーゼル川、右側からライン川が合流する「Deutsche Eck」(ドイツの角、の意)にて記念撮影。左からニーダーヴィーザーさん、記者、ヤチャックさん

 コブレンツ市街を、今度はライン川沿いに戻ってきた。すでにアフター5を迎え、MTBに乗ったグループやトレーニングへ向かうロードバイカーに頻繁に遭遇するようになった。ふと、一緒に走っていた2人が止まった。なんと、夕食に出かけようと歩いていたアーノルド社長と遭遇したのだ。3人が話している雰囲気は、とても気さくだ。ニーダーヴィーザーさんが「社長ってすごくシャイなの」と笑いながら教えてくれた。社員に慕われている社長のキャラクターや、アットホームな社風、そして互いの信頼感が伝わってきた。

コブレンツビールで乾杯!コブレンツビールで乾杯!

 キャニオンでは年2回、ユーザーを招いたライドイベントを開催している。そこではアーノルド社長をはじめ、カチューシャの選手らも参加して、モーゼル川沿いのサイクリングを楽しむのだという。

 オフィスへ戻ると、午後6時半にはすでに誰も残っていなかった。皆が思い思いにサイクリングなどプライベートの時間を楽しんでいる頃だろうか。

 記者もニーダーヴィーザーさんと待ち合わせをして、着替えてからワインレストランへと向かった。まずはコブレンツビールで乾杯! そして止まらない女子トークに、夜は更けていった。

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