カインズ流 ロードバイク生活を極めたい<12>道中で声援をもらって勇気百倍! ビギナーの2人が「まえばし赤城山ヒルクライム」を走って伝えたかったこと

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いよいよ“決戦”に挑むイッシー(左)とトモ子さん“決戦”に挑むイッシーとトモ子さん

9月29日、いよいよ「第3回まえばし赤城山ヒルクライム」本番の日がやってきた。この連載を通じて本格的なサイクリングに取り組み始め、この日のために厳しい特訓を乗り越えてきたイッシーとトモ子さん。2人は、大会協賛社であるホームセンター「カインズ」の社員であり、社命を受けて過酷なヒルクライムに初出場した。(レポート 佐藤喬)


なぜヒルクライムに挑まなければならないのか?

早朝のスタート地点にズラリと並べられた出場者のロードバイク早朝のスタート地点にズラリと並べられた出場者のロードバイク

 早朝、大勢の選手たちが集結するスタート会場に、少し緊張した表情の2人の姿があった。

 トモ子さんはカインズ本社に勤めるビジネスウーマン、そしてイッシーは系列の自転車ショップ「カインズサイクルパーク」桶川店のスタッフ。ともにスポーツサイクルに本格的に乗った経験はなかったが、およそ3カ月前、カインズ社内の“代表選手選考”で白羽の矢が立った。

 まえばし赤城山ヒルクライムは距離20.8km、標高差1313mと、日本でも指折りの厳しい大会だ。もし完走できなかったら…Cyclist読者の皆さんの期待を裏切ってしまい、社内での立場も危うくなりかねない。しかし2人の気持ちは前向きだった。

緊張が和らいだのか、笑顔をのぞかせたトモ子さん緊張が和らいだのか、笑顔をのぞかせたトモ子さん

 なぜ“過酷なレースに挑め”との社命が下ったのか? 上司から詳しい説明はなかったが、トモ子さんとイッシーにはその理由が分かりかけていた。振り返れば、レース出場が決まって以降、充実した日々を過ごしてきたからだ。

 荒川でポタリングデビューを果たし、真夏のエンデューロレースを乗りきり、そしてプロ選手の指導を受けて…そしてついに、積み重ねてきたトレーニングの成果を発揮する日を迎え、何だか清々しい。

 「自転車の楽しさを、僕たちの姿で伝えられるのではないか」

 前夜、バイクやウェアの準備をしていたイッシーの胸中では、そんな思いが確信に変わりつつあった。

 

Cyclistからの“刺客”

 トモ子さんの勝負服は、お気に入りのイエローのサイクルジャージ。会場の雰囲気に慣れると、表情もリラックスしてきた。「前回の特訓が地獄でしたからね…もう怖いものなしです!」

ちょっぴり(?)オーバーウェイトのイッシー(右)と本山さんちょっぴり(?)オーバーウェイトのイッシー(右)と本山さん

 そしてイッシーはと言えば…「Cyclist」のジャージを着た男性と世間話に花を咲かせている。初めて見るこの男性は、前回の特訓を指導した米山一輝記者ではない。普段は産経デジタルの社内で「Cyclist」のシステム開発を担当しているエンジニアの本山大人さんだ。

 実は本山さんは、この連載をきっかけに、カインズのオリジナルロードバイク「ソヴェール」(4万9800円)に乗り始めたという。過去にはソヴェールを駆って取材に出かけ、イベントレポートや、サイクリングロード紹介も執筆したそうだ。つまり、ソヴェールを通じて自転車の魅力を知った仲間なのである。

 イッシーと似てふくよかな体型で、体は一回り以上大きい本山さん。今大会へ出場するにあたり、Cyclist編集長から「イッシーに勝ってこい!」と送り込まれた“刺客”でもある。もっとも、2人ともヒルクライム大会は初体験であり、勝つも負けるもないのだが…

 

リラックスしてスタート

 開会式を経てスタート地点に並ぶ。皆、緊張は見られない。いい感じである。

 「前回の特訓で一皮むけました」とイッシー。「そうそう、コース途中の姫百合駐車場(15.1km地点)までは試走もしました」と準備万端のトモ子さん。初のヒルクライムにテンションが上がる本山さんも含め、チーム・カインズの戦意は高い。

 そしてスタート! しばらくは市街地を抜けるほぼ平坦な道路をパレード走行だ。イッシーと本山さんは意気投合したのか、並んで楽しそうに走っている。トモ子さんも快調に足を回す。

スタートに並んだイッシー(右手前)と本山さん(中央)スタートに並んだイッシー(右手前)と本山さん(中央)
“ライバル”同士、仲良く並んで走るイッシー(右)と本山さん“ライバル”同士、仲良く並んで走るイッシー(右)と本山さん
トモ子さんをチラっと見ながら追い抜いていく“ヒルクライム王”長沼隆行さん(中央)。この連載で指導をしていただいたトモ子さんをチラッと見ながら追い抜いていく“ヒルクライム王”長沼隆行さん(中央)。この連載で指導をしていただいた

 沿道の声援の多さには驚かされた。道路の両側に並ぶ地元の人たちからの応援が熱い。「こんなにたくさんの人に応援してもらえるなんて…」と、トモ子さんは感動している様子だ。

 スタートから3km余り、赤城山大鳥居をくぐったあたりから、だんだんと上り基調になってくる。

次第に傾斜が厳しくなり、イッシーも真剣な表情に次第に傾斜が厳しくなり、イッシーも真剣な表情に

 8.9km地点の第1給水所に到着すると、水分補給とストレッチのために一休み。再出発後は、徐々に勾配がきつくなり、本格的なヒルクライムの様相を呈してきた。2人ともまだ余裕がある。「車が来なくて気持ちいいですね」と、快調に脚を回すトモ子さん。イッシーは若干追い込んだ表情になったが、「心拍数は160拍弱くらいですね」と冷静に分析してみせた。

 

対向車線からの思いがけない声援に感動

 やがて10kmを過ぎると、コースの周囲がだんだんと山深くなってきた。あれだけ周囲にたくさんいた参加者たちも、だんだん減ってきた。それだけ、チーム・カインズが遅れつつあるということか。

Cyclist代表の本山選手、気分が悪くなって休憩中Cyclist代表の本山選手、気分が悪くなって休憩中

 快調に走っていた本山さんだが、頑張りすぎたせいか、胸のあたりが気持ち悪くなってしまい、途中で自転車を降りて休憩することに。トモ子さん、イッシーの2人は淡々と上っているようだが、やはり苦しそうだ。イッシーの表情はさらに険しさを増している。それでも、前回の特訓でペースを守ることを覚えた2人は、なんとかこらえつつ前に進む。

顔を紅潮させて懸命にペダルを踏むトモ子さん顔を紅潮させて懸命にペダルを踏むトモ子さん
“赤城山ヒルクライム サイコー!!”“赤城山ヒルクライムサイコー!!”
いよいよ坂が厳しくなり、表情が失せてきたイッシーいよいよ坂が厳しくなり、表情が失せてきたイッシー

 空気が一段と冷え、霧が出てきたコースを上る。寂しさが募る。Cyclistの本山さんは先行してしまい、もういない。山の中なので、もちろん沿道の応援もない。お互いに励ましあいながら上る2人だが、イッシーの心拍数は危険水域に入り、終始うつむき加減になる。

対向車線には、すでにゴールした選手たちが集団で下山してきた対向車線には、すでにゴールした選手たちが集団で下山してきた

 「カインズがんばれ!」

 突然、声援が飛んできた。顔を上げてみると、対向車線をハイスピードで下ってくる一群がある。先にゴールした強豪選手たちが、いくつかのグループに分かれて下山しているのだ。そして、まだ上り坂に悪戦苦闘しているイッシーとトモ子さんを見つけてくれた。

 「あれ、カインズの人じゃない?」「がんばって!」

思いがけない声援を受けて勇気百倍! パワーがわいてきました思いがけない声援を受けて勇気百倍! パワーがわいてきました

 すれ違いざまに聞こえる声。明らかに、この連載を読んでくれていた人がいて、そして目標としていたヒルクライム大会の本番で応援してくれているのだ。

 最も苦しいこのタイミングで、予想もしていなかった激励は本当に心強い。これまでの努力が報われた瞬間だ。トモ子さんも感動で胸がいっぱいになった。「連載を見ていてくれた人がいたんですね! うれしいです」。ご声援、本当にありがとうございました!

 

標高1433mのフィナーレ

 視界が急に開けた。はるか前方にゴールのアーチが見える。「やった! もうすこし!」。ここまでくれば心配はいらない。残り少ない距離が、むしろ名残惜しいくらいだ。ひと踏み、ひと踏み、味わいながら進む。

いよいよ最後の直線、長かった~。嬉しさに笑顔がこみ上げてきましたいよいよ最後の直線、長かった~。嬉しさに笑顔がこみ上げてきました

 そして、ついにゴール! カインズの看板を背負って赤城山ヒルクライム完走という使命に挑んだ2人は、数々の困難を乗り越え、ついに目標を達成することができた。道中の思わぬ応援もあり、2人は感無量。

減量はできなかったけれど、完走はできました減量はできなかったけれど、完走はできました
練習も、レース本番も、すべてが楽しかったです!練習も、レース本番も、すべてが楽しかったです!

 山を下る前に記念撮影。標高は実に1433m。風景は下界のそれとはまったく違う。2人ともいい表情だ。やり遂げた達成感と、応援への感謝と、見たことのない風景。すべてが喜びに感じられた。

◇           ◇

 カインズのオリジナルスポーツバイク「ソヴェール」の販売をきっかけに始まった赤城山ヒルクライムへの挑戦。完走を果たしたトモ子さんとイッシーは、決して特別な存在ではなく、普通のOLであり会社員だ。そんな2人の奮闘を通じて、自転車ならではの喜びや充実感を再確認することができた。順位やタイム、また自転車の価格や装備にとらわれることなく、誰もが楽しめる魅力が自転車にはある。

 「サイクリングをもっと気軽に、多くの人に楽しんでもらいたいですね」と話すトモ子さん。「そのために、僕たちは頑張っているんですよ」と、カインズサイクルパークに勤めるイッシーは胸を張った。


(協力:カインズサイクルパーク)


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