カインズ流 ロードバイク生活を極めたい<11>「まえばし赤城山ヒルクライム」直前スペシャル! 濃霧の奥武蔵でCyclist編集部による地獄の特訓

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ヒルクライム“特訓”へと向かう(右から)トモ子さん、イッシー、米山一輝記者

9月29日の「まえばし赤城山ヒルクライム」に、カインズの社運を賭けて(?)挑む社員代表のトモ子さんとイッシー。ロードバイクに本格的に乗り始めて以来、熊谷でのレース体験、そして前回の長沼隆行選手による贅沢なレッスンと、順調にトレーニングを積んできた。しかし、赤城山レベルの本格的な峠はいまだ未経験。そこで、本番まで1週間を切ったこのタイミングで、Cyclist編集部による最後の“特訓”が行われることになった。


編集長の秘密指令

 前回は、日本の“ヒルクライム王”が稽古をつけてくれた。とはいえ、まえばし赤城山ヒルクライムは距離20.8km、標高差1313mと、全国的にみても屈指の難易度を誇る大会だ。ビギナーの2人がこのまま挑戦するのは、不安が大きい。

Cyclist編集部が入る東京・大手町の東京サンケイビル。ここで特訓の秘密指令が出されたCyclist編集部が入る東京サンケイビル。ここで特訓の秘密指令が出された

 そこで、対策を考えていたCyclist編集長が、かたわらの米山一輝記者に向かってこう指示した。

 「2人を峠でかわいがってやってください」

 米山記者はかつて、実業団レースやステージレースを戦う国内トップクラスのレーサーだった。そんな体育会系アスリートに、“しごき”を意味する隠語で特訓を指示する編集長。眼光をギラリと輝かせる米山記者。Cyclistが鬼になった瞬間だ。

 米山記者が立案した最後のトレーニングの舞台は、自身が現役選手時代に何度も走って知り尽くしている埼玉県西部の「白石峠」。距離は6km強と短いが、ビギナーの2人には強烈なインパクトがあることだろう。

 

カインズのオリジナルバイク「SAUVEUR」にアルテグラを装着

 練習当日、トモ子さん、イッシー、米山記者の3人が峠に近い駐車場に集合した。イッシーの愛車はもちろん、カインズのオリジナル・ロードバイク「SAUVEUR」(ソヴェール)。が、見た目が少々勇ましくなっている。

 「コンポーネントをアルテグラに替えてみました。本番も近いですし」

愛車「ソヴェール」を手に満面の笑み。それもそのはず…愛車「ソヴェール」を手に満面の笑み。それもそのはず…
イッシーの「ソヴェール」は、コンポーネントがシマノ・アルテグラに換装されていたイッシーの「ソヴェール」は、コンポーネントがシマノ・アルテグラに換装されていた
さらに心拍計付きのサイクルコンピューターを装備! ヒルクライム大会出場へ準備万端ですさらに心拍計付きのサイクルコンピューターを装備! ヒルクライム大会出場へ準備万端です
練習開始前。なぜか米山記者の表情が一番真剣練習開始前。なぜか米山記者の表情が一番真剣

 アルテグラといえば、レース仕様の本格コンポーネントだ。いつの間に? そのうえ心拍計まで装備している。本番に向けたイッシーの意気込みは、相当に高まっているようだ。

 3人で赤城山ヒルクライムに向けて気合を入れたあと、米山記者を先頭に白石峠へと出発。空は曇りがちだが、暑くも寒くもないヒルクライム日和。3人とも笑顔で走り始めた。

 

こっそりコースを変更、激坂へ

 前方の山を指差して「気持ちいいですね! あそこまで上るんですか?」とトモ子さん。

 そのとき、米山記者はなぜか関係ない返答でお茶を濁した。「…そうそう、大会当日の朝は、みそ汁はやめたほうがいい。気持ち悪くなっちゃうので…」

米山記者を先頭にスタート。目指すは白石峠!のはずだったが…米山記者を先頭にスタート。目指すは白石峠!のはずだったが…
工事のため通行止めだった白石峠の上り口をこっそり通過する米山記者。トモ子さんとイッシーは気付いていない工事のため通行止めだった白石峠の上り口をこっそり通過する米山記者。トモ子さんとイッシーは気付いていない

 実はこの時点で、すでに白石峠の上り口は通り過ぎていた。なんと、峠へと続く道は舗装工事のため通行止めだったのだ。米山記者は急遽予定を変更し、コースを林道「奥武蔵支線」に切り替えた。

 (でも、奥武蔵は激坂が続くし、距離も長くてきついんだよなあ…)

 そう考えた米山記者は、この辺りの地理に疎いトモ子さんとイッシーにコース変更の事実を伝えなかった。2人の頭の中では“6km上れば終わり”という事前情報のみが生きている。

 山深くなるにつれて、だんだん勾配が厳しくなり、2人の表情から笑顔が消えた。特に、標高に比例して変わるイッシーの表情は、まるで高度計だ。

山深くなるにつれて傾斜も急に。イッシーの表情が歪んだ山深くなるにつれて傾斜も急に。イッシーの表情が歪んだ
イッシーから遅れつつ、必死で登るトモ子さんイッシーから遅れつつ、必死で登るトモ子さん

 「心拍計が、ハァ、ハァ、キツイです…脈拍は180拍くらいで、ハァ、でもアルテグラが…」

 息も絶え絶えだが、何かを伝えようとするイッシー。そのしばらく後を、苦しみつつもマイペースで上るトモ子さん。

 「ハァ、ハァ…これで半分くらいですか?」と期待を込めて米山記者に聞く。

 「そうですね、そうかもしれませんね」

 

ついに足をついた2人 「長くないですか?」

 上りは続き、道幅はどんどん狭くなる。ときおり20%近い激坂が現れる奥武蔵支線は、ヒルクライム初挑戦の2人にはあまりに厳しい。イッシーの顔は歪み、謎のボヤキも消えた。予定の6kmはとっくに過ぎていることに、気付く余裕もない。

 と、トモ子さんの脚が止まった。この日、ボトルを忘れてきたトモ子さんは、走りながらの水分補給ができず、ペットボトルの水を飲むために停車しなければいけないのだ。

 「先に行ってください…なんか長くないですか?」

座り込んで水を飲むトモ子さん。表情は疲れきっている座り込んで水を飲むトモ子さん。表情は疲れきっている
足が攣って止まってしまったイッシーは、この表情足が攣って止まってしまったイッシーは、この表情

 続いて、イッシーも止まる。「脚が攣りました!」。もう限界に近いのか。

 「もう少し、もう少しですから!」。米山記者の懸命な励ましに、2人は再び走り始めた。

濃霧の林道をフラフラになりながら上るトモ子さん濃霧の林道をフラフラになりながら上るトモ子さん

 霧が深くなってきた。山頂はまったく見えず、ひたすら折り返しと先の見えない上りが続く。心理的にも非常に苦しい状況だ。

 米山記者「次のコーナーを過ぎれば、あともうちょっとですから! がんばってください」

 トモ子さん「本当ですかぁ? さっきも聞きましたよ、そのセリフ」

 だんだん事態を把握してきたトモ子さん。怒りにまかせてペダルを踏む。

 

霧の中で落車 近づく山頂、迫る限界

落車して倒れ込んだイッシー。すぐには起き上がれない…落車して倒れ込んだイッシー。すぐには起き上がれない…

 ガシャンッ! 大きな音とともにイッシーが落車した。身動きがとれなくなっている。

 「また脚が攣って…ペダルが外れませんでした。もうダメです」

 うずくまって痛みが治まるのを待つイッシーを、トモ子さんがパスしていく。

米山記者の「最後です」を聞いて「本当ですか?」と笑うトモ子さん。いよいよラストスパートへ米山記者の「最後です」を聞いて「本当ですか?」と笑うトモ子さん。いよいよラストスパートへ

 周囲はむせ返るような濃霧。前も後ろも、ゴールも見えない。まるでアルベルト・コンタドールとアンディ・シュレックが死闘を繰り広げた2010年のツール・ド・フランス第17ステージ、ツールマレー峠のようだ。

 山頂は近づいている。しかし、そろそろ本当の限界も迫ってきた。

 米山記者「今度こそ、最後のコーナーです!」

 トモ子さん「本当ですね? ウソだったら…」

 最後の力を振り絞るトモ子さん。ここまですでに12kmほど。実に予定の倍近い距離だ。もうとっくに限界を超えていることだろう。気合だけでペダルを踏み、霧の中へと消えていった。

 やがてイッシーも再スタート! あとは根性あるのみ。少し傷ついた「SAUVEUR」と共に頂上を目指す。

 

標高800m超! 感動のゴール

頂上に先着したトモ子さん、喜びのガッツポーズ!頂上に先着したトモ子さん、喜びのガッツポーズ!

 標高800mを超えるゴール地点。9月だというのに肌寒ささえ感じる。そんなゴール地点へ、先に姿を見せたのはトモ子さんだ。

 蛇行し、手を上げる余裕すらないトモ子さん。ゴール後は倒れ込んでしまった。

 「死ぬかと思った…」

米山記者に励まされながら最後の力を振り絞るイッシー米山記者に励まされながら最後の力を振り絞るイッシー

 遅れてイッシーも到着。

 「やりました! もうダメかと思った…」

 ゴール後、完全に漢(おとこ)の顔になったイッシー。はじめて見せた、たくましい表情だ。

伸びちゃいましたが…シ・ア・ワ・セ伸びちゃいましたが…シ・ア・ワ・セ
男をあげたイッシーのたくましい笑顔男をあげたイッシーのたくましい笑顔

 距離にして12km超、獲得標高は800m近い。予定外の荒修行を乗り越えた2人の顔は、爽やかだった。あとはゆっくり休養し、9月29日のヒルクライム大会本番に臨むだけ。3人が霧の中で雄叫びを上げた。

 「待ってろ赤城山!」

「待ってろ赤城山!」「待ってろ赤城山!」

(文・写真 佐藤喬 協力:カインズサイクルパーク)


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