RENの益田INAKA行き・輪行鉄道旅<中>山陰の小京都・津和野で途中下車 伝統息づく美しい町と、豪雨災害が残した爪跡

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早朝の岩国駅。前日に降りたのと同じ7番ホーム早朝の岩国駅。前日に降りたのと同じ7番ホーム

 輪行の旅2日目の朝は午前7:00起床。部屋の冷蔵庫の音に混じって、雨粒が窓や建物を叩く音が聞こえてくる。

 一瞬、憂うつな気分になったが、窓からかすかに山が見えると、そんな気持ちは吹き飛んだ。やっぱり新しい景色を眺めるのは楽しい。

 過ぎ行く車窓から街を眺めれば、そこには様々な人生の一瞬が垣間見える。車を運転する人、犬を散歩させる人、自転車に乗っている人…。それが鉄道旅の醍醐味であると僕は思っている。おっと、少し脱線。

2013/08/31 岩国~新山口 07:58~10:07

 さあ、目的地に向かいましょう。この日は各駅停車「下関駅行き 625M」、115系からスタートです。部活に向かう学生に交ざって電車に揺られれば、僕も学生時代にタイムスリップ。眼をつむれば、懐かしい光景が蘇ります。

新山口駅まで乗った115系電車新山口駅まで乗った115系電車
車両端のシートを確保車両端のシートを確保

 台風15号の影響で大雨になってしまったが、列車は定刻通りにダイヤを刻みます。藤生駅~柳井港駅の間は海沿いギリギリを走行。窓一杯に広がる瀬戸内海。大小様々な島が雨に濡れています。

山陽本線は海のすぐそばを走っていく山陽本線は海のすぐそばを走っていく

 路線は右へ左へカーブを繰り返しながら進みます。車窓は小島を縫って進む高速船のようです。

 10:07。新山口駅に到着しました。ここで、太平洋ベルトを貫く幹線「東海道本線」「山陽本線」とはお別れ。そして、新山口駅と益田駅を結ぶ「山口線」へと乗り換えます。

新山口~地福 10:15~11:33

 次に乗車する車両は、気動車キハ40系片運転台仕様『キハ47』。

キハ40系47形気動車。国鉄時代と変わらない朱色のカラーは、少し色褪せていたキハ40系47形気動車。国鉄時代と変わらない朱色のカラーは、少し色褪せていた

 ホームは少し寂しい雰囲気。そして“鉄”(鉄道マニア)には、ここに停車しているはずだった蒸気機関車C57、通称“貴婦人”の姿がぼんやりと見える…(笑)

 当初の予定では、この山口線を走る「SLやまぐち号」に乗るはずだったのですが、7月に山口県と島根県を襲った豪雨災害の影響で運休となっています。残念無念。

 ですが、山口線は魅力がいっぱい。のどかな景観の中を、旧型の車両しか走っていないという大変風情のある路線なのです。気動車は2両編成。アイドリングし、出発の時間を待ちます。

窓を開けて外の空気を楽しむ窓を開けて外の空気を楽しむ

 10:15発の「655D」列車は、重たい鋼鉄製。アクセル全開で巨体を揺らしながら新山口駅を出発です。山口駅までは比較的乗降客数が多いので、駅の間隔も短く、生活の足となっています。

 10:38 山口駅到着。しばらく停車し、列車番号を変えて「8561D」となります。この列車の終点は、益田駅ではなく途中の地福駅。その理由は後ほど。

 10:45 列車は山口駅を出発。本格的な山岳地帯に入ります。大雨と急勾配の連続で、エンジンは先ほどから唸りっぱなし。木々の間からのぞく川は茶色く、ひどく濁っています。

2両編成のもう一方の車両は、JRになってからの新塗装2両編成のもう一方の車両は、JRになってからの新塗装

 コイルスプリングとダンパーを使った収まりの悪い台車は、お世辞にも乗り心地がよいとは言えません。非力なエンジンで、急勾配を喘ぎながら登って行きます。

 雨の影響で20分ほど遅れて、この列車の終着駅となる地福駅へ到着。ここで降りて、代行バスに乗ります。7月の豪雨災害によって、ここから先は線路が寸断され、現在も地福~益田間が不通となっているからです。

篠目駅には、蒸気機関車時代に使われた、レンガ造りの給水塔が残されている篠目駅には、蒸気機関車時代に使われた、レンガ造りの給水塔が残されている
地福からの代行バスに乗り込む地福からの代行バスに乗り込む

 

山陰の小京都 津和野でお昼御飯

 大気はますます不安定になり、バケツの水をひっくり返したような雨が降ります。そんな中で、この日1つ目の目的地である島根県津和野町に到着しました。

津和野駅に到着津和野駅に到着
駅前にはD51蒸気機関車が駅前にはD51蒸気機関車が

 出迎えてくれたのは、ここ津和野出身の前参院議員、亀井亜紀子さん。「ぜひ津和野をご案内したい」と。嬉しい!

 まずは、きれいな駅舎近くの食事処で「うずめ飯」をいただく。

 お椀をあけると、ご飯と海苔、わさびしか無い…? しかしこれ、様々な食材が中に沈めてあります。だから、“うずめ”飯。質素にみせる為にこのようなお椀になったそうです。

『うずめ飯』はパッと見質素なお茶漬け『うずめ飯』はパッと見質素なお茶漬け
下まで混ぜると沢山の具が出てくる下まで混ぜると沢山の具が出てくる

 そして、おやつは源氏巻。餡(あん)をカステラのような生地で包んだ、長方形の和菓子です。江戸時代には、餡の代わりに「小判」を入れて上納されていたのだとか! 郷土料理の歴史って面白いですね。興味深い生い立ちの食事をペロッとたいらげて、さぁ街に出かけましょう。

美しい津和野町の街並み美しい津和野町の街並み

 山陰の小京都と呼ばれる街並みは洗練された佇まいです。メーンストリートは、古い門構えとなまこ塀が連続し、とっても上品な雰囲気。掘割にはニシキゴイが泳いでいる…のですが、水が茶色く濁っているので、背中しか見えません(焦)

 「この水の量でコイは大丈夫かしら? この辺りは水が大変きれいなんですよ」と亀井さん。今回は徒歩での移動だったこともあり、時間の都合で郷土資料館にゆっくり立ち寄れなかったことは、ちょっと残念。

レトロな庁舎が今も使われている津和野町役場レトロな庁舎が今も使われている津和野町役場
荘厳な雰囲気の津和野カトリック教会荘厳な雰囲気の津和野カトリック教会
創業から三百有余年。津和野藩の御用商として栄えた分銅屋七右衛門の本店創業から三百有余年。津和野藩の御用商として栄えた分銅屋七右衛門の本店

 

奥が深い酒蔵

 津和野で次に酔った場所、ん? 寄った場所は、古橋酒造株式会社。「初陣」というブランドで知られる地元の酒造メーカーです。純米から大吟醸、さらに微炭酸までラインアップしています。

 こちらの90歳になろうかというお姉さんに、たくさん試飲させていただきました。水が綺麗な土地のお酒は美味しい(泣)。ちょっと(だいぶ)気持ちよくなったところで、酒蔵を見せていただけることに!

 お店の奥が蔵になっているとのことですが…

 「この後ろに蔵があるの?」と半信半疑のまま、真っ暗な中で恐る恐る歩みを進め、照明を点灯してもらうと…おっと広い! というか、どこまで続くのか見えないくらいです。お店はごく一般的な商店の幅なのですが、奥行きが尋常じゃない。

 「な、長い」。陸上競技の短距離種目を実施できるのでは? と思えるくらい、100m近くも続いているのです。

圧巻の酒蔵圧巻の酒蔵

 このような作りになっているのも、“あの理由”だそうです。

 津和野の気風である「慎ましく」。「うずめ飯」でもみられた、この土地に住む方々の精神が、建築物の構造にまで表れているのですね。とっても感心してしまいました。

 

美しい景色、そして大災害の爪跡

千本鳥居を通り石段を上がっていく千本鳥居を通り石段を上がっていく

 さて、次は津和野の街を見渡せる場所に移動。津和野城の麓にある、日本五大稲荷の一つ「太皷谷稲成神社」です。

 京都の伏見稲荷大社に似た千本鳥居を抜けると本殿にたどり着きます。そこから緑に囲まれた城下町「津和野」を望むと、なぜか微笑ましく感じて、ニッコリしてしまいました。

 「さらに登っていくと、津和野城跡があります。今は石垣だけになってしまっているけれど、そこからは津和野全体を一望できるの」と亀井さん。

 天気が良かったら最高の景色だろうな、と感じました。

 ただ、ちょっと寂しいのは、遠くに見える線路に汽車が走っていないこと…。道の駅「津和野温泉なごみの里」の先で、大規模な土砂災害に見舞われてしまったのです。鉄道ファンとして、やはりこの場所にSLの汽笛が鳴り響かないのはとっても残念。その現場へ行ってみることになりました。

太皷谷稲成神社の境内で、今回案内していただいた亀井さんと太皷谷稲成神社の境内で、今回案内していただいた亀井さんと
山と緑に囲まれた美しい津和野の景色。この日も台風による増水の影響で川が濁っている山と緑に囲まれた美しい津和野の景色。この日も台風による増水の影響で川が濁っている
仮の状態で復旧された国道仮の状態で復旧された国道
橋のところに流木が折り重なる橋のところに流木が折り重なる
橋桁が流されてしまった橋桁が流されてしまった
線路下の路盤が削り取られ、レールが浮いている線路下の路盤が削り取られ、レールが浮いている

 川の規模からは考えられないほど大きな石が河川敷に転がり、橋は橋脚だけ残して跡形もなくなっています。ケタ違いのエネルギーだったことが伺えます。線路の下の盛り土も無残に流されていて、線路が宙に浮いています。9月も雨が多く、地盤がまだ緩いので、きっと重機を入れられる状態じゃないのでしょう…。

 「復旧には1年以上かかるかも知れないのです」と亀井さん。

 観光地である津和野に大打撃を与えた豪雨災害の現実を目の当たりにし、早く復旧できるようにと祈るばかりでした。

 

津和野観光には自転車がオススメ

 さて、見所がぎゅっと詰まった感じがする津和野の街。歩いて散策するのに程よい広さですが、自転車で散策するのも良いのではないでしょうか? 交通量が少ないので、快適に走れそうです。

駅前にはレンタサイクルも駅前にはレンタサイクルも

 駅前に貸し自転車屋さんがあるので、たくさん観光したい欲張りな人や、風を切って走りたい人は、利用することをオススメします。僕のようなサイクリストなら、少し足を伸ばせば、手付かずの渓谷が続くシチュエーションにすぐ出会えます。

 次に来る時は、必ず「SLやまぐち号」と「津和野を拠点にしたライディング」を楽しみたいと思っています! そして森鴎外の資料館や、他にも美術館や津和野弥栄神社の鷺舞とかも見てみたい。

 さてさて、日差しが赤みを帯びてきました。寂しいけれど、最終目的地へ向かわなければなりません。亀井さんと再会の約束をし、代行バスに乗り込み、津和野を後にしたのでした。

 これで益田までの鉄道&レポートは終わり。東京から西へ向かう青春18切符の旅は終了したのでした。こんどの鉄道旅は、もしかして北を目指しちゃう?

 そして次回は連載最終回、島根県益田市でのイベントの模様をレポートします。

小林廉小林 廉(こばやし・れん)/REN
数々のCM・雑誌・ファッションショーで活躍するトップモデル。08年より本格的にスポーツサイクルに乗り始める。雑誌の連載でMTBの乗り方・楽しみ方を教わり、MTBに魅了される。12年より日本マウンテンバイク協会公認インストラクターとしての活動を開始。身長188cm、体重74kg。東京都在住。オフィシャルブログ「RENのすすめ

 

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REN 島根県益田市 鉄道

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