title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<30>希望と絶望のはざまに揺れるチームと選手たち 世界選手権は後半戦へと突入

  • 一覧

 22日に開幕したUCI世界選手権ロードレースは、プログラム前半のタイムトライアル種目を実施中。男子U23、男女ジュニアでは、「プロ予備軍」でもある金の卵たちが躍動。プログラム後半にはロードレース種目が始まります。その展望を前に、まずはストーブリーグにおける衝撃的なニュースを押さえておくこととします。

2つのプロチームが解散へ エウスカルテルとアロンソ氏はまさかの交渉決裂

 9月2日、全世界の希望をもって伝えられた、F1ドライバーのフェルナンド・アロンソ氏によるエウスカルテル・エウスカディのチームライセンス買収のニュース。一度は今シーズン限りでの解散を発表したバスクチームを救うべく、アロンソ氏は現所属選手やスタッフの雇用を保証しながら、2014年シーズンからの新体制を作る動きを見せた。

チーム総合首位など、明るい材料の多かったエウスカルテル・エウスカディだが…(ブエルタ・ア・エスパーニャ2013)チーム総合首位など、明るい材料の多かったエウスカルテル・エウスカディだが…(ブエルタ・ア・エスパーニャ2013)

 このニュース以降、彼の地元であるアストゥリアス州の企業や、所属チーム・フェラーリの親会社であるフィアット社がスポンサーに就くのではないか、といった話題も持ち上がった。

 しかし、状況は一変。23日、エウスカルテル・エウスカディはアロンソ氏との交渉決裂を発表。機密性を重視するため、決裂理由は明らかにされていないものの、「経済的な問題以外の点で話がまとまらなかった」としている。実際、アロンソ氏はチームライセンスを買収するための資金そのものは用意できていたとされ、その他の部分で問題が発生したと見られる。これにより、チームは改めて今シーズン限りでの解散を発表した。

ツール、ブエルタではフレチャが果敢な走りを見せるも、個人、チームともに目立った結果は残せず(ツール・ド・フランス2013)ツール、ブエルタではフレチャが果敢な走りを見せるも、個人、チームともに目立った結果は残せず(ツール・ド・フランス2013)

 プロチームでは、ヴァカンソレイユ・DCMもスポンサー撤退がすでに決定。こちらは、チームのスポーツディレクター、ヒレール・ヴァンデルシューレンが新スポンサー獲得を目指し奔走中。プロコンチネンタルチームとして再出発の見通しが立ったと言われている。同じく今年限りでの活動終了が決まったプロコンチネンタルチーム、アクセントジョブス・ワンティのセカンドスポンサー、ワンティ社が新スポンサーになるとの見方が強いが、正式発表はされておらず、未だ不透明な情勢だ。

 ちなみに、両チーム合わせて所属57選手中、移籍が決まったのは9選手のみ。未来ある選手たちに「冬の時代」が訪れないことを切に願いたい。

ロード世界選手権前半戦の結果と後半戦の展望

 22日にイタリア・フィレンツェで開幕したロード世界選手権は、タイムトライアル種目が進行中。

オメガファルマ・クイックステップは僅差ながら連覇を達成(世界選手権ロードレース2013 男子エリートTTT)オメガファルマ・クイックステップは僅差ながら連覇を達成(世界選手権ロードレース2013 男子エリートTTT)

 初日に実施された男子エリート・チームタイムトライアルの優勝争いは、オリカ・グリーンエッジと、オメガファルマ・クイックステップが中間計測からデッドヒート。結果、オメガファルマ・クイックステップがタイムを更新しタイトル防衛に成功。その差、0.81秒。昨年の3秒差に続く僅差となった。優勝タイムは1時間4分16秒。53.391km/hで走破した。

 同日開催の女子エリート・チームタイムトライアル(42.79km)は、スペシャライズド・ルルレモンが2位に1分11秒差をつけ、こちらもタイトル防衛。ゴールタイムは51分10秒69。50.165km/hで走破する圧倒的な走り。

 大会2日目(23日)に行われた女子ジュニア個人タイムトライアル(16.27km)は、セヴリーヌ・エロー(フランス)が22分42秒63で優勝。日本勢でただ1人のエントリーとなった坂口聖香(パナソニックレディース)は、1分23秒遅れの36位。

街中を駆けるハウソン。2位に57秒差をつけ圧勝(世界選手権ロードレース2013 男子U23個人TT)街中を駆けるハウソン。2位に57秒差をつけ圧勝(世界選手権ロードレース2013 男子U23個人TT)

 同じく大会2日目に実施された、男子U23個人タイムトライアル(43.49km)は、ダミアン・ハウソン(オーストラリア)が49分49秒97で優勝。追い風に乗り、52.326km/hで走破。ただ1人50分を切る圧勝劇だった。2位にはヨアン・パイヨ(フランス)、3位には昨年のロンドン五輪トラック・オムニアムで金メダルを獲得したラッセノーマン・ハンセン(デンマーク)が入った。

 ハウソンは、すでにオリカ・グリーンエッジのスタジエール(研修生)として走っており、来シーズン以降の正式契約も済ませている。ハンセンもガーミン・シャープ入りが決定。また、アルゴス・シマノ入りが決まっているローソン・クラドック(アメリカ)も5位に食い込むなど、将来有望な選手たちが今年も大活躍したレースとなった。

 岡篤志(キャノンデール・チャンピオンシステム)が出場の男子ジュニア個人タイムトライアル(22.05km)、與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が出場の女子エリート個人タイムトライアル(22.05km)が行われる大会3日目(24日)、そして前半戦の山場である大会4日目(25日)の男子エリート個人タイムトライアル(57.9km)については、次回お届けすることにしよう。

地元・イタリアで、エースとして勝利を狙うニバリ(世界選手権ロードレース2012 男子エリート)地元・イタリアで、エースとして勝利を狙うニバリ(世界選手権ロードレース2012 男子エリート)

 プログラム後半には、いよいよロードレース種目が実施される。

 大会6日目(27日)は、女子ジュニアロードレース(82.85km)と男子U23ロードレース(173.19km)。大会7日目(28日)には、男子ジュニアロードレースと女子エリートロードレース(ともに140.05km)が行われる。女子ジュニアには坂口、男子ジュニアには岡、黒枝咲哉(大分・日出暘谷高校)、横山航太(長野・篠ノ井高校)、女子エリートには與那嶺と上野みなみ(鹿屋体育大学)がエントリー。また、女子エリートでは“女王”マリアンヌ・フォス(オランダ)の連覇なるかにも注目が集まる。

 そして大会最終日(29日)には、男子エリートロードレースが272.26kmで争われる。地元イタリアは、ヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ プロチーム)をエースに立てる。対抗馬は、過去4度のメダルを獲得しているアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)あたり。また、イギリスはクリストファー・フルーム(スカイ プロサイクリング)が絶対的エース。シーズン後半にきて絶好調のファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)は、個人TTとの2冠を目指す。レース展開においては、アシストの人数にも注目したい。イタリア、スペイン、スイスは9選手で臨むのに対し、イギリスが8選手、ベルギーが7選手、スロバキアが6選手だ。その点では、9選手で臨むコロンビア、オーストラリア、オランダ、フランス、ポーランドの選手たちも侮れない。

昨年のロードレースを制したジルベール。果たして連覇なるか(世界選手権ロードレース2012 男子エリート)昨年のロードレースを制したジルベール。果たして連覇なるか(世界選手権ロードレース2012 男子エリート)

 カテゴリーによってスタート地点が異なるが、勝負はフィレンツェの周回コースで決まるだろう。周回の前半に出てくるフィエゾーレ(登坂距離4.37km、平均勾配5.2%、最大勾配9%)、周回後半のヴィア・サルヴィアーティ(登坂距離600m、平均勾配10.2%、最大勾配16%)が勝負ポイント。最終周回は、この上りで生き残った選手たちがゴールまでのダウンヒルでハイスピードバトルを繰り広げることになりそうだ。ラスト3kmを切ってからも10%の短い上りがあり、ここでの動きも考えられる。いずれにせよ、クライマー向けのレイアウトで、スプリンターには厳しいコースといえる。

今週の爆走ライダー-ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、スカイ プロサイクリング)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 失意のジロ・デ・イタリア途中リタイアを乗り越え、息を吹き返した。新たな目標に設定したツアー・オブ・ブリテンでは、個人TTでトップに立つ得意のパターンで総合優勝。上りも安定した走りで、完全復調を示した。

 トラックでは、五輪・世界選手権合わせて16個のメダルを獲得。2009年以降はロードをメインとし、2012年のツール・ド・フランス総合優勝、ロンドン五輪個人TT金メダルと、欲しいものは次々と手にしてきた。残すは、ロード世界選手権でのマイヨ・アルカンシエルだ。

ツールを制し、ロンドン五輪個人TTでも勝利したウィギンス。マイヨアルカンシエル獲得なるか(ツール・ド・フランス2012)ツールを制し、ロンドン五輪個人TTでも勝利したウィギンス。マイヨアルカンシエル獲得なるか(ツール・ド・フランス2012)

 2016年のリオデジャネイロ五輪では再びトラックに挑戦するため、ロードは2014年シーズンをもって引退する意向。残された“宝物”を彼は手に入れられるか、ロードとの決別のカウントダウンがいよいよ始まる。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載