クローズアップ夫婦で楽しむ輪行の旅、マシンはこだわりの電動メカ 岩田直樹・りそな銀行社長インタビュー

by 上野嘉之 / Yoshiyuki KOZUKE
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 日本有数の大手銀行「りそな銀行」の社長を務める岩田直樹さん(56)は、週末や休暇に自転車で日本中を駆け回っている本格派のサイクリストだ。スポーツサイクルに乗り始めたのは8年ほど前。きっかけは、子育てがひと段落し、妻の麗子さんと2人で共通の趣味を探したことだった。今では、自らの手でロードバイクを組み上げるほどの“自転車通”で、麗子さんのバイクの整備もお手の物。最愛の妻と、お気に入りのサーヴェロR5と一緒に、北海道周遊旅の走破にチャレンジしている。

りそな銀行の岩田直樹社長りそな銀行の岩田直樹社長

風を切る爽快感…すぐ夢中に

 「社交ダンスはケンカになる。書道は、もっと歳をとってからでもできる…」

 夫婦で共通の趣味を探すといっても、当時、2人の話し合いは難航を極めた。それまで仕事一筋で生きてきた岩田さんにとって、なかなか答えがみつからなかったという。

 そんな頃、前任の社長だった水田廣行さんから「マウンテンバイクで田尻湖を一周した」と聞き、サイクリングを勧められた。「それならできるかも…」と、近所の自転車店で1台22,000円のクロスバイクを夫婦で購入。「ダメなら、いつでもやめられる」という考えもあった。

 乗り始めると、すぐ夢中になった。風を切る爽快感、厳しい向かい風や坂道を乗り越える高揚感、走りきった達成感…。学生時代に登山に打ち込んでいた麗子さんも、サイクリングへのチャレンジを共に楽しんでくれた。

 ほどなく、イタリアン・ブランド「ジオス」のロードバイクを手に入れ、さらにイタリアの「ビアンキ」、フランスの「ルック」などへと愛車をグレードアップしていった。「女房にも同じものに乗せたい」と、麗子さんの乗り方に合わせつつ、ほぼ同じようなグレードのロードバイクを用意してきた。

最愛の妻、麗子さんと一緒に自転車を楽しむ岩田直樹さん最愛の妻、麗子さんと一緒に自転車を楽しむ岩田直樹さん

北海道から沖縄まで 全国を快走

 「輪行の旅が好き。サイクリングにあわせて温泉や食事を楽しむのが、最高のストレス解消法」という岩田さん。これまでに走った場所も、驚くほど多彩だ。

 数年前にスバルラインから富士山の5合目まで登った際は、ゴール地点でイタリア人のグループと出会い、夫婦で乗っていたジオスとビアンキの話題で大いに盛り上がったという。

 ほかにベストコースに挙げたのは、沖縄・宮古島と、瀬戸内海のしまなみ海道。いずれも走りやすさや景観などで日本有数のサイクリングエリアだ。

 「女房は、サイクリングの計画を立てるのが得意。『私はいろいろ立ち寄りたいの』と、観光プランを決めてくれます」。岩田さんは目を細めて嬉しそうに話す。

 今年5月には、2泊3日で琵琶湖1周210kmを走破する旅を夫婦で楽しんだ。そして今、取り組んでいるのが、北海道を複数回に分けてグルリと巡るコース。昨年は苫小牧、登別、室蘭など道央地域を巡った。この夏も、北海道へと旅立つ予定だ。

「長崎西海トライアスロン」のレース前日に海辺で撮影 =2012年7月7日「長崎西海トライアスロン」のレース前日に海辺で撮影 =2012年7月7日

 もちろん、旅の途中で夫婦喧嘩が勃発することも。そんな時、男たるものガマンが肝心。一緒に走っている時は聞こえないふりをし、それでも間が悪い時には、時速30kmほどで先行し、ずいぶん先で麗子さんを待っているのだという。かなり強引な手段ではあるが、合流する頃には2人の気持ちも収まっているとか。

 一方で、自転車の取り扱いを積極的に買って出ることで、麗子さんの信頼を勝ち得てきた。輪行バッグからの出し入れや、空気圧の調整、パンクの修理まで「すべて僕の仕事」。雨が降る中で麗子さんがパンクに見舞われた時には、麗子さんがさす傘の下で岩田さんが修理に励んだこともあった。

自分で組み上げたサーヴェロR5

 自転車にのめり込む中で、マシンやパーツへの興味やこだわりもムクムクと膨らんでいった。現在の愛車は、ヨーロッパのプロ・ロードレースでも使用されている「サーヴェロ」社の最上級グレード「R5」。黒いペイントや細身のシートステーが美しいフルカーボン製フレームだ。しかも、フレームやパーツをバラバラに購入し、専門工具も揃えて自分で組み立てたという。

 装着したパーツにも妥協はない。コンポーネントはシマノの電動デュラエース、ホイールはフルクラム・レーシングゼロ、タイヤはコンチネンタル・グランプリ4000。そのままプロのレースにも出場できそうな仕様だが、岩田さんの狙いは高速域の限界性能ではなく「軽さと乗りやすさ」だという。「上りも速いが下りも速い。それに乗り心地がいい」と大満足だ。

愛車サーヴェロR5を駆って「長崎西海トライアスロン」リレーの部・バイクパートを疾走する岩田直樹さん(奥) =2012年7月8日愛車サーヴェロR5を駆って「長崎西海トライアスロン」リレーの部・バイクパートを疾走する岩田直樹さん(奥) =2012年7月8日

 そればかりか、電動シフトのストレスフリーな操作性に感動し、妻の麗子さんのバイクにも同じ電動デュラエースを装着。これが大好評で、「お父さん、ヒット!」と褒めてもらったという。

 「通常の変速レバーは、女性にとって操作が重く、特にフロント側を変速しなくなる。しかし電動に変えて、女房がフロントの変速を多用するようになった」。岩田さんはいたずらっ子のように、してやったりの笑顔を見せた。

 自転車を“大人の趣味”として取り組んでいる岩田さん。「お金をかけられるなら、かけて楽しむ」のが大人の流儀だという。現在のサーヴェロR5は、すでに極めつくした感があるが、ただサドルだけはしっくりきていない。これまでに8つくらい購入してきたが、いまだ「サドル探しの旅」は続いている。

クラブでは「代表世話人」

 自転車を楽しみつくす中、ついに職場の仲間を中心にクラブチームを結成した。チーム名は「ヴェント・アッズーロ」。イタリア語で「青い風」という意味だ。白地に青い水玉模様が鮮やかな、お揃いのチームウェアも作成した。

「ヴェント・アッズーロ」の仲間と共に。後列中央が岩田直樹さん「ヴェント・アッズーロ」の仲間と共に。後列中央が岩田直樹さん

 とはいえ、「クラブ内で銀行の話は一切しない」と岩田さん。社長ではなく、代表世話人の立場を貫いている。仕事の関係を持ち込まないのは、自分やメンバーがどんな立場になっても活動を長続きさせられるように、との配慮だ。

 クラブの全体会合は、暑気払いと忘年会。走行会は、埼玉や神奈川といった地域別、あるいはブルベやヒルクライムといった目的別で、臨機応変に開催している。先日は、週末に岩田さんがフェイスブックで仲間に呼びかけ、急きょ集まった5人ほどのメンバーで湘南のサイクリングを楽しんだという。

 サーキットを周回する耐久レース(エンデューロ)に、岩田さんを含むチームで参加したことも。また今年7月8日には、仲間が「長崎西海トライアスロン」が出場するのに合わせて、岩田さんもチームの部のバイクパートで出場し、完走の喜びを分かち合った。

「リーダーは明るくないと」と語るりそな銀行の岩田直樹社長「リーダーは明るくないと」と語るりそな銀行の岩田直樹社長

 「クラブ活動が仕事に直接役立つことはない」と岩田さんは言うが、一方で「リーダーが暗いと、部下が辛い」とも指摘。自転車が楽しくて、日ごろから明るく振る舞えることが、いろいろなメリットをもたらしているという。

 「今は週に1度くらいしか乗れないが、リタイアしたら毎日乗りたい」と、自転車への熱中度は増すばかり。長く続けたいからこそ、マナーの悪い自転車をみかけると注意することもあるという。夫婦そろって軽やかにペダルをこぐ岩田さんの自転車旅は、いつしか人生の旅にピッタリと重なりつつある。

岩田直樹岩田直樹(いわた・なおき)
りそな銀行代表取締役社長、りそなホールディングス執行役。1956年生まれ。1979年、協和銀行(現・りそな銀行)に入行。あさひ銀行(現・同)蒲田支店長、難波支店長、りそな銀行東京営業統括部法人部長などを歴任。以後、コンシューマーバンキング部など個人部門を担当。2009年6月、53歳の若さで社長に就任。

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