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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<29>41歳ホーナーはなぜブエルタで強かったのか? 世界選個人TTはマルティン、カンチェ、ウィギンスが競演へ

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 今年も大激戦となったブエルタ・ア・エスパーニャが閉幕。大ベテランの華麗な優勝劇に沸いた3週間でしたね。そこで、グランツール閉幕直後恒例(?)の“勝手に総括シリーズ”を展開させたいと思います。そして、22日に開幕するUCI世界選手権ロードレースのプログラム前半の展望もお届けします。

“怪我の功名” 勝負を分けたのは今シーズンの「出場レース数」にあり?

 今年のブエルタは、結果的に総合優勝のクリストファー・ホーナー(アメリカ、レイディオシャック・レオパード)以下、上位4選手の力が抜きん出ていた印象だ。ホーナーと2位のヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)との差が37秒、3位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)とは1分36秒、4位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)とは3分22秒。5位以降は7分以上の開きがある。タイム差だけで選手の実力を測れるものではないが、3週間を通しての安定感や、最終週での走りなどからみても、4選手の強さは際立っていた。

よりフレッシュな状態のホーナーがニバリを突き離したよりフレッシュな状態のホーナーがニバリを突き離した

 大会前に総合優勝候補にすら名前が挙がっていなかったホーナーの戦いぶりは、驚きの連続だった。41歳という年齢もさることながら、今シーズンは膝を故障し春に戦線離脱。手術を行った影響で5カ月間レースから遠ざかっていた。

 一方で、今回の結果については、春から夏にかけてレースに出場できなかったことが奏功したとの見方が強い。ライバルたちがビッグレースでしのぎを削っている中、故障・手術を行っていたホーナーは、休養状態にあった。つまり、8月にようやく復帰した段階では、脚がフレッシュな状態だった、というのだ。これは自他ともに認めている点だ。

ツールからの連戦となったバルベルデとロドリゲス(ツール・ド・フランス2013)ツールからの連戦となったバルベルデとロドリゲス(ツール・ド・フランス2013)

 そういった意味では、ニバリやバルベルデ、ロドリゲスらが“フレッシュさ”に欠けていたのは事実だろう。

 ニバリはジロ・デ・イタリアで見せた圧倒的な走りから、このブエルタでも総合優勝候補筆頭と見られた。しかし、実際はジロ後に多忙を極め、ブエルタへの調整開始が大幅に遅れた。開幕後は2週目までは順調だったが、3週目に失速。2週目終盤のピレネー3連戦で脚を使い過ぎたとの見方もあるが、併せて突貫工事的な調整のツケが最終盤に出てしまったように思われる。

 バルベルデやロドリゲスは、ツール・ド・フランスからの連戦。「ツールを回避しブエルタに専念していれば…」と見てしまうのはナンセンスではあるが、短期間でグランツールを2つこなす難しさはあったはずだ。特に、山岳頂上ゴールが多く、「おあつらえ向き」とさえ言われたロドリゲスが第19ステージの1勝にとどまったあたりに、その難しさがうかがえる。とはいえ、2人ともに総合表彰台を狙う位置で終始走り続けたところはさすがである。

第2ステージでグランツール初優勝を挙げたロッシュ。粘り強く走り抜き総合5位に第2ステージでグランツール初優勝を挙げたロッシュ。粘り強く走り抜き総合5位に

 4人から遅れをとったとはいえ、総合5位に入ったニコラ・ロッシュ(アイルランド、チーム サクソ・ティンコフ)は最後まで見せ場を作り、今大会を盛り上げた1人。これまでは思うようなアシストを受けられず苦しんだこともあったが、新たな環境でレースを行う中で、殻を破ったと言えそうだ。総合系ライダーが多く揃うチームにあって、さらなるオプションが生まれたのは大きい。

 また、若い力の台頭も魅力的な大会だった。下りの恐怖を克服し総合7位に食い込んだティボー・ピノ(フランス、FDJ.FR)、初のグランツールで総合9位のレオポルド・ケニッグ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)、ステージ2勝のワレン・バルギル(フランス、チーム アルゴス・シマノ)、アングリルを制したケニー・エリッソンド(フランス、FDJ.FR)、スプリントでステージ2勝のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。今後どこまで力を伸ばしていくか、大いに期待したい。

22日開幕! ロード世界選手権前半戦の展望

 ロード世界選手権が22日に開幕。マイヨ・アルカンシエルをかけた戦いの舞台は、イタリア・フィレンツェ。

連覇を狙うオメガファルマ・クイックステップ(ロード世界選手権男子エリートチームタイムトライアル2012)連覇を狙うオメガファルマ・クイックステップ(ロード世界選手権男子エリートチームタイムトライアル2012)

 大会初日は男女のチームタイムトライアルが行われる。男子は57.2km、女子は42.79km。ほぼオールフラットな、ハイスピードコースだ。男子はUCIプロチームに出場義務があり、2連覇を狙うオメガファルマ・クイックステップや、BMCレーシングチーム、スカイ プロサイクリングなどを中心に展開するだろう。女子は、2連覇を狙うチーム スペシャライズド・ルルレモンや、オリカ・AIS、ウィグル・ホンダなどが優勝候補。

日本チャンピオン與那嶺が世界に挑む(全日本ロード女子個人タイムトライアル2013)日本チャンピオン與那嶺が世界に挑む(全日本ロード女子個人タイムトライアル2013)

 大会2日目(23日)は、女子ジュニア個人タイムトライアル(16.27km)、男子アンダー23個人タイムトライアル(43.49km)を実施。大会3日目(24日)には、男子ジュニア個人タイムトライアル(22.05km)、女子エリート個人タイムトライアル(22.05km)が行われる。女子エリートには、與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)がエントリー。日本チャンピオンとして世界の強豪に挑む。

ともに表彰台に上ったウィギンス、マルティン、カンチェッラーラ(ロード世界選手権男子エリート個人タイムトライアル2011)ともに表彰台に上ったウィギンス、マルティン、カンチェッラーラ(ロード世界選手権男子エリート個人タイムトライアル2011)

 そして、大会4日目(25日)に男子エリート個人タイムトライアルが行われる。57.9kmのコースは、TTスペシャリスト向けのフラットなレイアウト。優勝候補筆頭は、3連覇を目指すトニー・マルティン(ドイツ、オメガファルマ・クイックステップ)。マイヨ・アルカンシエル奪還を目指すファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)や、初優勝を目指し調整を進めるブラッドリー・ウィギンス(イギリス、スカイ プロサイクリング)が続く。前回銀メダルのテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)にもチャンスがある。

 大会後半戦の展望は、次回お届けしよう。

今週の爆走ライダー-クリストファー・ホーナー(アメリカ、レイディオシャック・レオパード)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ブエルタでは総合優勝に加えて、山岳ステージ2勝。ゴールでのガッツポーズは神々しさを覚えるほど、貫録に満ちたものがあった。

印象的な、ホーナー独特のガッツポーズ印象的な、ホーナー独特のガッツポーズ

 1995年に開始したプロキャリアは、まもなく20年目を迎えようとしている。驚異的な息の長さだが、本人いわく「ヨーロッパプロではない時期が長かったので、体の消耗度は低いと思う」。1997年から3年間フランセーズ・デ・ジュー(当時)で走ったあと、2000年から5年間はアメリカの国内シリーズを拠点として走っている。圧倒的な強さでシリーズを制していたそうだが、ヨーロッパで通年走るよりはスケジュール的に緩いのだという。

 長い競技生活で得た経験や知識がフルに活かされたスペインでの3週間だったはずだ。インタビューにはスペイン語で答え、ライバルを称えることも忘れない。爆発的なアタックがあるわけではないが、大きなギアで淡々とハイペースを刻み、最後にはライバルを振り切る、いぶし銀の走りで勝利を手繰り寄せた。

 「ショーをお見せする」と宣言し、最高の形で幕を閉じた“ホーナーオンステージ”。参戦予定の10月のジャパンカップサイクルロードレースでは、レッドカーペットを敷いて彼の凱旋を待ち受けようではないか。沖縄生まれで、日本とも縁があるホーナー。生まれ故郷でのショーを華やかに演出すれば、きっとその気になってくれるだろう。

マイヨロホを獲得したホーナーは、10月のジャパンカップに参戦予定マイヨロホを獲得したホーナーは、10月のジャパンカップに参戦予定

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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