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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<28>ブエルタは勝負の最終週へ 立て直しを図るニバリ、そしてホーナーらの大逆転はあるか

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 ピレネー3連戦で大きな盛り上がりを見せたブエルタ・ア・エスパーニャは、2度目の休息日を経て、いよいよ最終週へ。今年の3大ツールは残すところ5ステージとなりました。一抹の寂しさを感じつつも、混沌とする勝負の行方に大きな期待を抱かずにはいられません。今回は上位3人を中心に、総合優勝争いを展望します。

勝負のカギは“ピーキング” 求められる山岳3連戦でのベストな走り

 総合争いは、第18~20ステージの難関山岳3連戦に委ねられることとなった。第2週の山場となったピレネー3連戦を経て見えてきた形勢は、最後の戦いの舞台であるカンタブリア山脈で果たして覆されるのか、はたまた王者に最も近い男がさらに力を見せつけるのか。いずれにせよ、足並みを揃えて終わらせてしまうことだけは、まずないだろう。

第15ステージでは、総合上位5人がしのぎを削った第15ステージでは、総合上位5人がしのぎを削った

 よほどのことがない限り、総合優勝はヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レイディオシャック・レオパード)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)の3人に絞られたと見て良さそうだ。第2週を終えた時点でのタイム差は、ニバリとホーナーが28秒、ニバリとバルベルデは1分14秒。後述するコースレイアウトや、総合上位陣の登坂力を考えると、この辺りのタイム差までがトップに立つための最低条件だろう。

ほころびを見せたニバリは最終週に立て直せるかほころびを見せたニバリは最終週に立て直せるか

 この1年、抜群の安定感を見せてきたニバリだが、休息日前の第16ステージで不安を露呈した。コンディションに左右されないところが彼の強さだが、さすがにピレネーでの山岳ハイスピードバトルや激変する天候に、疲労が出たのかもしれない。長期的な計画で完勝したジロ・デ・イタリアと違い、このブエルタへの調整が若干遅れたことは本人も認めるところ。この後の戦いも、調子の波をどのようにコントロールするか、修正能力が問われる。総合10位につけるタネル・カンゲルト(エストニア)を筆頭に、アシスト陣が計算できるのは心強い。

強烈なアタックで、ステージ2勝を挙げたホーナー強烈なアタックで、ステージ2勝を挙げたホーナー

 タイム差以上に、ここまで最も安定しているのがホーナー。41歳のベテランは、経験に裏打ちされた走りはもちろんだが、1回のアタックでライバルを蹴散らしてしまうほどの攻めの走りでステージ2勝を挙げてきた。山頂ゴールが多い今大会だが、コースレイアウトや勾配を見ながら、攻撃する日と無難に終える日とを上手く分けている印象だ。山岳アシストが手薄なチームにあって、ロベルト・キセルロウスキー(クロアチア)の調子が上ってきたのが朗報。最後の山岳3連戦では、早くから勝負に出てニバリにプレッシャーをかけたい。

悪天候に苦戦したバルベルデ悪天候に苦戦したバルベルデ

 ピレネーの悪天候に苦しんだバルベルデだが、第16ステージでニバリが遅れたこともあり、チャンスが出てきた。ツール・ド・フランスからの連戦によるダメージをほとんど感じさせないあたり、ハイアベレージで走り続けられる彼らしさが出ていると言える。この後のポイントは、ライバルを振り切るだけの登坂を見せられるかどうかにかかっている。他選手の動きに合わせているだけでは、逆転は厳しい。また、チームは山岳アシストを逃げに送り込むのか、それとも複数名で集団コントロールを担うのか。バルベルデを支えるモビスターの戦略も注目のポイントだ。

 総合表彰台を目指す選手たちの奮起にも期待したい。総合4位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)にとっては、激坂が待つ最後の山岳3連戦は“本番”だ。総合3位のバルベルデとの差は1分15秒。「魔の山」アングリルで奇跡を起こそうとしている。

 どのライダーにとっても、成功のカギは、最終週に調子のピークを持っていけるかどうか。史上稀に見るクライマー頂上決戦を最後まで見守っていきたい。

ブエルタ第17~21ステージの展望

 いよいよ最後の5日間。ピレネーを何とか乗り切ったスプリンターは、第17ステージ(189km)でエネルギーを爆発させたい。ゴール地ブルゴスを目指す道は風が強いため、予期せぬ集団分断には要注意だ。

第18ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第18ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 その後3日間は、カンタブリアの険しい山々へと進路をとる。第18ステージ(186.5km)は、これまで死闘が繰り広げられたペーニャ・カバルガの頂上ゴール。登坂距離5.9km、平均勾配9.2%。ゴール前1kmで最大勾配20%に。激坂ハンターの力の見せどころだ。

第19ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第19ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 第19ステージ(181km)は、3日間の中では比較的イージー。ゴールの2級山岳アルト・デル・ナランコは登坂距離5.7km、平均勾配4.2%。逃げ切りにピッタリのステージだが、エウスカルテル・エウスカディだけはそれを許さないかもしれない。なぜなら、ゴール地のあるオビエドは、サムエル・サンチェス(スペイン)の故郷なのだ。

第20ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第20ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 そして、クライマックスは「魔の山」アングリルを上る第20ステージ(142.2km)。ゴール前27kmから始まる1級山岳アルト・デル・コルダルでメンバーが精選され、残り12.2kmからのアングリルへと突入する。残り7kmから15%前後の勾配となり、ゴール前3kmで最大の23.5%に。モーターバイクでさえ転倒やオーバーヒートするほどの激坂が、真の勝者を決定する。ラスト1kmの下りも気は抜けない。

 3週間のスペイン一周を終える一行は、マドリードへの凱旋パレードを行う。レガネスをスタートする第21ステージ(109.6km)は、マドリード市内に入ると1周5.7kmを8周する。山岳で耐えに耐えたスプリンターに待つ、最後のご褒美をゲットするのは誰になるか。そして、史上68人目の総合優勝者が正式に決定する。

今週の爆走ライダー-ワレン・バルギル(フランス、チーム アルゴス・シマノ)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ブエルタ第13ステージ。9名に絞られたステージ優勝争いは、自身とチームの勝利はもとより、一緒に逃げてきた唯一のオランダ人バウケ・モレマ(ベルキン プロサイクリングチーム)を孤立させるために、チームの垣根を越えた同国選手間での協力が生まれていた。2名で立ち向かった“フランス連合”の次鋒として繰り出したアタックが、すべてを決めた。

鮮烈な初勝利を上げたバルギル鮮烈な初勝利を上げたバルギル

 その3日後には、リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイ プロサイクリング)を1級山岳頂上で撃破。プロ1年目の21歳は、夢のグランツールで2勝を挙げた。

表彰台では、初々しさを感じさせる表彰台では、初々しさを感じさせる

 自転車熱の高いブルターニュ地方出身。地元のプロコンチネンタルチーム、ブルターニュ・シュレールとは2011年末に契約目前までいきながら翻意。現チームを選んだ。その理由は、提示された長期的な育成計画にあった。今年はその2年目。これだけの強さなら、チームはあと1年ある計画の見直しを迫られそうだ。

 一気にフランス期待の星となったが、もしかするとフランスの関係者は彼の可能性を見抜いていたのかもしれない。その理由は、9月下旬に控えるロード世界選手権のプレ代表に選んでいたことだ。今大会の2勝で、9名のロースター入りは濃厚となった。

 若手の登竜門であるツール・ド・ラブニールを2012年に制覇。総合力はもちろんだが、パリ~ツール・エスポワールで2位に入ったように、平坦やワンデーレースにも強い。予習を怠り、ことごとく彼の先行を許したビッグネームたちは、その存在をしっかり覚えておく必要があるだろう。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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