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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<27>快進撃のプロコンチネンタルチーム ケニッグの勝利に見るチームの可能性

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 8月24日に開幕したブエルタ・ア・エスパーニャは、第10ステージまでが終了。大会はようやく1回目の休息日を終え、第2週目の戦いへ。そんな今回は、グランツールで飛躍する“最強のチャレンジャー”たちにスポットを当ててみます。

躍進のプロコン勢 チームコンセプトを体現する選手たちの走り

山岳ジャージ姿でサインに応じるケニッグ山岳ジャージ姿でサインに応じるケニッグ

 グランツールの見どころのひとつとして、「どのプロコンチネンタルチームがワイルドカード(招待出場権)を獲得するか」が挙げられる。現在開催中のブエルタに限らず、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスにも出場枠が設けられており、現行のルールなどとの兼ね合いから各大会3から4チームの選出となる。

 プロコンチネンタルチーム(略:プロコン)は、所属選手とプロ契約を結ぶことが条件とされる。それ以外はドーピング対策がしっかり行われているか、チーム運営に問題がないかなどがUCIへの登録条件。大雑把に言ってしまえば、チーム力よりも資金力とクリーンさが備わっていればOKとされる面がある。ファーストカテゴリーにあたるプロチームほどの資金力・戦力ではないが、ビッグレースに出たいという野望を持つチームにとっては、セカンドカテゴリーにあたるプロコンチネンタル登録が最低限必要となる。

第4ステージで敢闘賞を獲得したニコラ・エデ第4ステージで敢闘賞を獲得したニコラ・エデ

 ただ、ひとえにプロコンと言っても、チームによってスタンスが大きく異なる。これらをカテゴライズするならば、①グランツールその他ビッグレース出場は当たり前。限りなくプロチームに近い戦力を持つチーム、②地元グランツール出場を最大目標とする、地域密着型チーム、③将来的にプロチーム昇格を目標に、ビッグレース参戦を行うチーム、④地元開催のビッグレースを最大目標とする、地域密着型チーム、⑤若手選手育成を重要視するチーム、という具合。

 グランツールへの招待を獲得するチームは、概ね①から③といったところ。狙うレースを絞ることができるメリットがある一方、ビッグレースへの出場が確約されていないデメリットもある。トップライダーがプロコンチームへ移籍するケースも増えているが、彼らが必ず不安視する点がここにある。

アメツ・チュルカは、積極的なアタックで印象を残しているアメツ・チュルカは、積極的なアタックで印象を残している

 それだけに、グランツールへの招待を勝ち取ったチームのモチベーションは並大抵ではない。

 このブエルタにも3チームが招待されているが、それぞれにチームコンセプトを体現する走りを見せている。大会スポンサーでもあるコフィディス ソリューションズクレジッツ、スペイン唯一のプロコンとして今大会に狙いを定めてきたカハ ルラルの2チームは、ほぼ毎ステージ逃げに選手を送り込み、スポンサーアピールも兼ねた目立つ走り。あわよくば勝利も狙う。

ステージ優勝を挙げ、表彰台に上がったケニッグステージ優勝を挙げ、表彰台に上がったケニッグ

 もう1チーム、ネットアップ・エンデューラは初出場ながら大きな成果を挙げた。第8ステージでレオポルド・ケニッグ(チェコ)が勝利。チームにグランツール初勝利をもたらした。

 このチームは、所属全21選手中プロチーム経験者が6選手(うち3選手がブエルタ出場)。合併前のチーム ネットアップ、エンデューラレーシングそれぞれがコンチネンタルチームの頃から所属する生え抜き選手が多いのが特徴だ。一歩一歩階段を上ってきた選手たちとチームなのである。

 今年はジロ、ツールともにワイルドカードを目指したものの落選。すぐにブエルタへ望みを託したところでの招待だった。スペイン人選手が所属しているとはいえ、ほとんどゆかりの無い土地でのグランツール選出。主催者がチームの可能性を買ったとはいえ、疑問視される向きも強かった。そんなチームが、ビッグチームを差し置いてレースをコントロール。そしてエースが山頂ゴールを制してしまったのだ。

 十分な戦力を有しているとはいえ、まだ新興チームの域。彼らの活躍はスペインの主催者はもとより、世界中の関係者へのアピールとなったに違いない。そして、大きなレースへの参戦を常に意識しているチームにとって、道しるべともなる3週間を送ることだろう。

ブエルタ第11~16ステージの展望

第11ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第11ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 大会は中盤戦へと突入。休息日明けの第11ステージは、唯一の個人タイムトライアル(38.8km)。標高差約600mの3級山岳アルト・デル・モンカヨを上って、そのままゴールへと下るコースは、TTスペシャリストよりクライマー有利か。

 イベリア半島東部を巡る2ステージ。第12ステージは、久々の平坦。中盤に3級山岳こそあるものの、164.2kmとレース距離がさほど長くはないだけに、スピードレースが予想される。第13ステージ(169km)は、ゴール前50km地点に1級山岳が登場。登坂距離4.3km、最大勾配16%、平均勾配10.6%の上りで集団は分裂するだろう。集団に残った選手でのスプリント、または逃げ集団がそのままゴールへと到達することもありそうだ。2日間ともに、風を利用した動きがあるかにも注目したい。

第14ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第14ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 そしていよいよ舞台はピレネーへ。超級を含む4つの山岳をこなす第14ステージ(155.7km)は、アンドラ公国へ入国。頂上ゴールとなる1級山岳コリャーダ・デラ・ガリーニャは7.2kmで標高差600mを一気に上る。昨年の第8ステージのゴールにもなっており、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)、アルベルト・コンタドール(スペイン、チーム サクソ・ティンコフ)が死闘を繰り広げた地でもある。

第15ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC第15ステージ コースマップ ©UNIPUBLIC

 アンドラをスタートし、フランスへ入国する第15ステージ。224.9kmの今大会最長ステージは、序盤から1級山岳が登場。奇襲作戦を行うにはもってこいの場所だ。最後の1級山岳ペイラギュードは、ゴール前5kmがほぼ平坦。ゴールボーナスをかけたクライマーたちの小集団スプリントにも注目だ。

 スペインに戻っての第16ステージ(146.8km)は、これまた1級山頂ゴール。とはいえ、登坂距離15.8km、平均勾配4%と、前日までと比べると難易度が低めの設定。2回目の休息日を前に、有力選手にとっては仕掛けるよりは脱落しないことが重要視されることとなる。

今週の爆走ライダー-レオポルド・ケニッグ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ブエルタ第8ステージ、アルト・デ・ペニャス・ブランカスの山頂ゴールを制し、驚きの勝利を挙げたが、自身はここまでにコツコツと伏線を敷き続けていた。

ケニッグ、カハ ルラルにとって初のグランツールステージ優勝ケニッグ、カハ ルラルにとって初のグランツールステージ優勝

 5月のツアー・オブ・カリフォルニアでは、クイーンステージのマウント・ディアブロを制覇。昨年9月のツアー・オブ・ブリテンでも難コースだった第6ステージで勝利。2011年のツアー・オブ・オーストリアでも総合2位と、中堅クラスのレースで結果を残してきた。

第10ステージ終了時点で総合11位。トップ10は射程圏内だ第10ステージ終了時点で総合11位。トップ10は射程圏内だ

 大きなレースでのアピールには乏しかったが、本人そしてチームは自信を持ってスペインに乗り込んだ。目標は総合トップ10。第9ステージ以降、体調が下降し総合順位を下げているが、立て直す時間はある。山岳ステージが続く後半戦でもうひと波乱といきたいところだ。

 次々と逸材が現れる東欧勢にまた一人、大物が誕生しそうな予感。グランツール総合上位の常連に名を連ねる日もそう遠くはないだろう。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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