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山田美緒の「旅する満点バイク」<17>自転車を楽む余裕は一切なし… 「フォロー・ザ・ウーマン」で経験したパレスチナ自治区への地雷に囲まれた道

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 平和を願って中東を走る「フォロー・ザ・ウーマン」では、レバノンシリアヨルダンと走ってきました。いよいよ最後はパレスチナへ。

緊迫のイスラエル入国審査

 2008年当時のパレスチナは、フォロー・ザ・ウーマンで訪れたほかの3カ国に比べると情勢が悪く、入国前に全員が行くか行かないかの選択をしました。レバノン、シリア、ヨルダン、イランのメンバーは全員ここでお別れ。その結果、300人近くいた参加者は半分以下になりました。

銃弾の跡が残る壁。ポスターは戦闘で亡くなった人をしのぶもの=パレスチナ自治区(2008年)銃弾の跡が残る壁。ポスターは戦闘で亡くなった人をしのぶもの=パレスチナ自治区(2008年)

 パレスチナは自治区という扱いなので、まずはイスラエルに入国。ここでのポイントは「No Stamp」(スタンプを押さないで)ということ。万が一パスポートにスタンプを押された場合、これまで巡ってきた3カ国には今後入国ができなくなる可能性があるということでした。

 フォロー・ザ・ウーマン代表のデッタ・レーガンさんが、厳しいイスラエルの入国審査を通過するための心構えを説明。イスラエルの人たちはパレスチナへ行くことをよく思っていないため、決して言わないこと、また審査をスムーズにするために、荷物は全員背負えるバックパック1つにまとめること。

 入国審査所の室内は無機質で、ピンとした空気が張りつめていました。私はそれまで自転車で国境を越えたことは何度もありましたが、こんなに緊迫した入国審査所は初めてでした。トルコのメンバーは全員個室へ呼び出されて尋問を受けたため、3時間待ってやっと入国できました。

機関銃の兵に地雷の土地を走行

チェックポイントの建物の上には監視カメラとともに銃を持ったイスラエル兵がいたチェックポイントの建物の上には監視カメラとともに銃を持ったイスラエル兵がいた

 入国後は自転車で、パレスチナ自治区へ入るためのIDやパスポートの提示が必要な検問所“チェックポイント”までの5kmを走りました。

 走行前には、「脇道には地雷が埋まっている可能性があるので2列を崩さないように」と言い渡されました。さらに、機関銃を持ったイスラエル兵があちこちで見張っているため私語厳禁、写真も禁止…。夕方だというのに45℃を超える暑さの中を黙々と走行。この時の5kmはとても長く感じ、パレスチナの国旗が見えたときにはほっとしました。

 パレスチナ自治区は、イスラエルの中に点在しています。それぞれの自治区間はバスで移動をしました。その際自転車はトラックで運んだのですが、ごちゃごちゃに重ねて積むだけなので破損しないかヒヤヒヤ。パレスチナに入ったら自転車で走ることができるため一度に長い距離を走ることはできず、滞在中は1日5~20kmのサイクリングとなりました。

平和について考える

 パレスチナでの出来事、目にしたこと体験したことは、教科書やニュースでは見聞きしたことがあるはずなのに、実際に自分の目で見るとどれも知らないことばかりでした。現実は知識とまったく違うんだ…衝撃でした。

 難民キャンプ、アラファト議長の墓を訪問し、旧市街を歩いて散策。夜は牢屋を改装したユースホステルや、パレスチナ人の家庭にホームステイをして宿泊をしました。

店先に並んだパレスチナの名産品、オリーブ店先に並んだパレスチナの名産品、オリーブ
パレスチナのオリーブ石けんは有名ですパレスチナのオリーブ石けんは有名です

 チェックポイントを通過するとき以外のパレスチナ自治区では、これまで訪れた3カ国と似たような様子で町の人も声をかけて応援してくれ和やかでした。でも時々、弾丸の跡が残る壁、破壊された建物が見られました。

パレスチナ自治区の難民キャンプでパレスチナ自治区の難民キャンプで

 1964年からもう50年近くも占領状態が続いていること、毎日チェックポイントを通過しなくてはならないため自由に学校や職場に行けないこと、兵士として息子やご主人が戦場で亡くなってしまったこと…生まれ育った場所、環境が違うだけでどうしてこんなにも悲しい現実を生きなければいけないのだろう。

 今も中東の情勢は不安定で、いつ戦争が起こってもおかしくない状況です。でも戦争に行くのは人間、愛する家族や仲間がいる私たちと同じ人間だということは忘れてはいけないと思いました。

◇      ◇

 フォロー・ザ・ウーマンは基本的には1年半毎に開催されています。今年は5月にドバイで開催されたので、次回は2014年か2015年! 私はフォロー・ザ・ウーマンの日本支部代表を務めていますので、興味のある人がいたらサイトを確認の上、連絡をお待ちしています。

文・イラスト・写真 山田美緒

山田美緒山田美緒(やまだ・みお)
大阪府生まれ。サイクリストとして世界中を旅してきたほか、一般社団法人コグウェイを設立し、「四国ディスカバリーライド」などを主催。著書に、アフリカ大陸縦断記をまとめた『マンゴーと丸坊主』、女性サイクリストたちとの旅や交流の体験記『満点バイク』がある。ブログURL(http://mantem.exblog.jp/)

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