「アイアンマン・ジャパン北海道」に挑戦<後編>宮古島ストロングマン&アイアンマンNYを完走、次は北海道だ! 再び腰痛を乗り越えるために

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 ショート・トライアスロンを完走し、国内外の自転車旅も経験してきた神奈川県茅ヶ崎市の歯科医、塩田厚さん(56)は、いよいよロングディスタンスのトライアスロンへ出場。そして次の目標は「アイアンマン・ジャパン北海道」(洞爺湖)だ。ところが、8月31日の大会へ秒読みという段階で、順調だった腰痛が再発してしまった。果たして大会へは出られるのか、腰痛熟年男の夢と戦いを追った。(柄沢亜希)

 

やり遂げたロングディスタンス

 2011年春、満を持してロングディスタンスの「全日本トライアスロン宮古島大会」へ出場した。距離はスイム3km、バイク155km、ラン42.195km。アイアンマン・ディスタンス(スイム3.8km:バイク180.2km:ラン42.2km)よりもスイムとバイクが少し短いが、完走者には“ストロングマン”の称号が与えられる。

「全日本トライアスロン宮古島大会」を完走! ゴールした時にはすっかり夜が更けていました(2011年5月)「全日本トライアスロン宮古島大会」を完走! ゴールした時にはすっかり夜が更けていました(2011年5月)

 結果は13時間6分41秒で完走。レース途中からは、激しい運動時に発症するぜん息に苦しめられ、「その後1カ月は体調が回復しなかった」というほど追い込んだ末の栄光だった。

 宮古島で「やり遂げた」という余韻にひたったまま、ニューヨークで2012年に初開催となる「アイアンマン全米選手権」にエントリーした。

 初めてのアイアンマン、そして初めての海外でのトライアスロンは、刺激的だった。受付に向かう道は、両サイドにオフィシャルグッズやトライアスロン向け商品が並び、日本では見たことがないような“お祭り騒ぎ”。15時間25分11秒で飛び込んだゴールでは、以前参加したニューヨークシティマラソンの時と同じように、熱烈な「おかえりなさい」ムードに迎えられた。やり遂げたヒーローへの賞賛を惜しまない、アメリカ文化の真髄を体感したという。

ニューヨークで開催されたアイアンマン全米選手権を完走! フィニッシャーメダルを首にかけて記念撮影(2012年8月)ニューヨークで開催されたアイアンマン全米選手権を完走! フィニッシャーメダルを首にかけて記念撮影(2012年8月)
「アイアンマン70.3 セントレア」を完走(2012年6月)「アイアンマン70.3 セントレア」を完走(2012年6月)

 実は、ニューヨークでのアイアンマン全米選手権は、この年のレースが最初で最後の開催となった。大都市の機能を停止させて実施するため運営費がかさみ、2013年にはエントリー費が10万円を超えるなどの困難に直面。募集開始後に主催者が開催をキャンセルし、“幻のアイアンマンレース”となってしまったのだ。

 

大会でもらうパワーと勇気 トライアスリートである理由

愛犬モーちゃんを抱く塩田さん愛犬モーちゃんを抱く塩田さん

 トライアスロンの魅力は、「そこへ行くと勇気づけられ、さらに高みを目指すパワーを得られること」と塩田さんは語る。

 加えて、スピードや心拍をモニターしながら走る楽しさも、嬉しい発見だった。数字が大好きだという塩田さんは、走りながらもさまざまなデータを読んで、計算しているのだという。「例えば、道路に傾斜何%という標識があると、距離、高度と計算していって、ビル何階建て分を上ったんだなぁ、と考える。これがけっこう楽しいんですよ」

 順風満帆のように見えるトライアスロン生活だが、大会出場を重ねるにつれ、悔しい出来事も経験してきた。

 今年4月に開催された宮古島大会では、落車リタイア。バイクの補給ポイントで前に割り込んできたライダーと接触し、左腕と手を負傷してしまったのだ。曲がったハンドルを蹴って直し、流血しながら走り続けたが、時間制限にあと5分というところで間に合わなかった。

 それでも、残念だった大会を塩田さんは笑って振り返る。

 「前に割り込んできたヤツとは、今ではフェイスブック友だちです。落車して再スタートした後に、彼は並走しながら謝ってきました。名前を名乗り、『(けがをさせた)あなたを抜くことはできない』と言う彼の真摯な態度に感心し、『いや、君は走りきってくれ』と見送りました。翌朝、ホテルの朝食会場で彼に偶然出会ったら、新婚旅行なのだと言う。夫婦そろって謝ろうとされ、すっかり打ち解けてしまいました」

 

ぶり返した腰痛…前向きに進め!

 腰痛と戦いながらアスリートとしてステップアップを続けてきた塩田さん。現在の目標は、8月31日に初開催される「アイアンマン・ジャパン北海道」の完走だ。

 しかしインタビューした時には、“最大の敵”である腰痛が再発していた。ピーク時の痛みを「10」とすると、今回の症状は「5~6」というから穏やかでない。これまでの戦歴を誇らしく語りつつ、内心では「結局、元通りになってしまった」という焦りとの格闘が続く。

インタビュー時、ポラールの腕時計には大会まで「あと13日」のカウントダウンが表示されていたインタビュー時、ポラールの腕時計には大会まで「あと13日」のカウントダウンが表示されていた

 塩田さんは、ゼロからの再スタートを意識する時、生命誕生の神秘に思いを馳せるという。「地球の始まりから人類出現まで数十億年かかった営みを、10カ月の期間に“短縮”して命を育むのが妊娠」と考える塩田さん。「それなら、10カ月かかる準備を1週間でやらなければならない今の状況も、挑戦としてちょうどいいじゃないか」。自分自身に言い聞かせるように語った。

 もしアイアンマン・ジャパン北海道を完走できなかったら…次に目指すレースの有力候補として、2014年の「アイアンマン・南アフリカ」を挙げている。世界各地で行なわれるアイアンマン・シリーズに参加することは、「旅としての付加価値も大きい」と、今後の挑戦にもあくまで前向きだ。

◇           ◇

 「さぁ次は…」と眼差しを輝かせる塩田さん。これまでの活躍ぶりを聞いていると、壮絶な腰痛に屈せず闘いぬいてきた事実を忘れそうになる。そう感じさせるのは、目標を定め、常に闘い続けているからだろう。「けがをしないで完走を目指します」と話す塩田さんはきょう8月29日、アイアンマン・ジャパン北海道へと旅立った。ゴールに立つ塩田さんの笑顔が見たい。

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