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御神火ライド2018

池田祐樹のレースレポート米コロラド州のMTBステージレース「ブレックエピック」で完全優勝! チームメートと高め合った6日間

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 アメリカ・コロラド州で8月11日~16日に開催された「ブレックエピック」に、MTB競技で国内外の耐久や長距離レース(マラソン)に挑んでいる池田祐樹さんが出場し、全ステージで1位を収めての完全勝利を果たした。チームメートとともに戦いぬいた様子を、「Cyclist」へレポートしてくれた。

連続出走7日間の挑戦

チームメートのJeffとデュオに出走。レース後のクレープも仲良く頬張ったチームメートのJeffとデュオに出走。レース後のクレープも仲良く頬張った

 「ブレックエピック」は、コロラド州ブリッケンリッジに位置するロッキー山脈の険しいオフロードを舞台に6日間のステージで構成され、総距離386km、獲得標高1万2200mを超える世界でもトップレベルのタフなステージレース。前回レポートした「レッドヴィル・トレイル100」から立て続けに出走した私にとっては、まるで“7日間の”ステージのように感じられる、今回のアメリカ遠征で最大の挑戦となった。

 しかし、このクレイジーな連戦スケジュールも、そのためにトレーニングを積み、結果を残すプランがあるからこそ。今回はTOPEAK-ERGONのチームメート、Jeff Kerkoveとともに、初めて「デュオ」のカテゴリーで出場した。

ブレックエピックではレッドヴィル100とダブルヘッダーの参加者を讃えるTシャツが用意されていたブレックエピックではレッドヴィル100とダブルヘッダーの参加者を讃えるTシャツが用意されていた

 デュオのルールは、2人が1分以内で一緒に走行し、フィニッシュタイムは2人目のライダーがフィニッシュライン通過した時点で計測される。チーム内でペースの違いからズレが生じるとデメリットになるが、息のあったチームメメート同士がお互いの得意なパートで引き合って相乗効果を高められるメリットも大きい。

 そして大会のルールはたった3つしかない。

 1.Don’t be a dick チ○コ野郎になるな(常識を持てという意味)
 2. Wear a helmet ヘルメットをかぶれ
 3. Don’t litter ごみを捨てるな

 ルール1は、ブレックエピックの最も重要なスタンスだ。例えば、レース中にケガをしている人を見たらタイムに関係なく立ち止まり、介抱して助けを呼ぶ。レース運営側はその行為に対してはボーナスタイムを与える寛容さがある。

 

ステージ1~3: 疲労との戦い

 正直に言えば、前日に160kmのレースを全力で走破した身体のダメージは予想以上に大きく、初日のステージすらこなせるかどうか不安があった。しかし、チームメートのJeffには迷惑をかけたくないし、出ると決めた以上、疲労を言い訳にはしたくなかった。

辛かったものの1位でフィニッシュ。表彰台は気持ちいい辛かったものの1位でフィニッシュ。表彰台は気持ちいい

 とにかく気持ちを前に向け、積極的にJeffの前を引くことを意識した。コースは非常にタフで、中盤からはエネルギー切れ。Jeffのうしろにつき、置いて行かれないように必死に乗り切った。

 終わってみれば、足は意外に動くようで、男性デュオ1位でフィニッシュ。今年初の優勝だ。

 翌日の第2ステージは、リーダーズジャージでのスタート。気持ちもピリッと気合いが入る。

 容赦なく繰り返される急勾配の激坂にくじけそうになるが、Jeffと高めあいながらレースを進めた。人工物が一切視界に入らないシングルトラックには、テンションが上がる。レース中にもかかわらず、純粋に「楽しい」と感じさせてくれるのがブレックエピックのトレイルだ。

 Jeffとはお互いの得意な部分が次第に明確になり、相互の特性を生かしたチームプレーができるようになった。テクニカルなシングルトラックでは私がリードし、こぎがメインの林道セクションではJeffがリードする。しかし、疲労がかなり蓄積していることも事実だ。Jeffから「このペースで大丈夫か?」と聞かれても、必死に強がった。例え限界だとしても、「いや、もっと上げられる!」と応えるくらいの意気込みだ。

上りが続くシングルトラック。Jeffをリードしながら限界に挑戦しつづけた上りが続くシングルトラック。Jeffをリードしながら限界に挑戦しつづけた
ブレックエピックはコースや競技の厳しさに加えて自然の過酷さも大きなファクター。雪渓の横を通過する道もあったブレックエピックはコースや競技の厳しさに加えて自然の過酷さも大きなファクター。雪渓の横を通過する道もあった

 精神が身体を超え始め、久々に味わう倒れる寸前のギリギリな世界。この世界を楽しめるか楽しめないかが、レーサーにとって非常に重要だと思っている。第2ステージは、2位に大差を付けてリーダーズジャージを守った。

 そして迎えた第3ステージは、最長かつ獲得標高も最大のクイーンステージ。3つの峠のうち、2つはなんと大陸分水嶺を超える。1つ目のフレンチ峠は森林限界を優に超え、雪渓と360度のパノラマ絶景を臨みながら登り詰め、反対側へ抜ける際には想像を絶するスケール感が待ち受けていた。大自然の力を感じ、エネルギーをめいっぱい充電した。

 2つ目のジョージア峠の林道登板では、Jeffの驚異的な強さに千切られる寸前になり、意識が途切れかけたほどだった。ここは意地のぶつかり合い。弱さは決して見せずに一緒に登頂し、下りでは私が先頭に出て「付いてこい!」とばかりに高速ペースを作った。残りはほぼイーブンペースで相乗効果を生み、優勝。残りあと3ステージ!

前半ステージはチームワークで疲労を乗り越えた前半ステージはチームワークで疲労を乗り越えた

【ステージ1】ペンシルベニア・クリーク
 距離: 56.3km
 獲得標高: 1830m
 タイム: 3時間10分55秒
 
【ステージ2】コロラドトレイル
 距離: 70km
 獲得標高: 2200m
 タイム: 3時間19分55秒
 
【ステージ3】ギヨ
 距離: 74km
 獲得標高: 2470m
 タイム: 3時間41分14秒

 

ステージ4~5: 調子が上がりチームメートと立場逆転

各カテゴリーのリーダーたちとスタートライン先頭に並んだ各カテゴリーのリーダーたちとスタートライン先頭に並んだ

 朝の疲労感が前日までと比べ少しだけマシになっている。第4ステージも急勾配のアップダウンが多く、高いフィットネス能力が問われるコースだが、テンションは右上がり。身体のコンディションも上がってきていることを感じた。

 スタートからトップ選手達で作られた集団でポジションをキープ。トレイルを楽しむ余裕まであり、とても良い流れだ。

 ブレックエピックのエイドステーションでは、選手たちが事前に用意したグッズや補給食が入ったドロップバッグが大会ボランティアスタッフにより差し出される。素晴らしいレースサポートだ。

 終始リードをしてリーダーズジャージを死守。翌日のステージへつないだ。

ドロップバッグには補給やスペアパーツ以外にレインウェアを必ず用意していたドロップバッグには補給やスペアパーツ以外にレインウェアを必ず用意していた
6日間のステージを、最高のチームメートJeffとともに走り続けた6日間のステージを、最高のチームメートJeffとともに走り続けた

 第5ステージに設定されたウィーラ―ステージは、ブレックエピックのハイライトともいえる。ブリッケンリッジの町の前に雄大にそびえる山を越え、反対側のカッパ―マウンテンに一気に降り、ピークストレイルで再びブリッケンリッジに戻ってくるというダイナミックなコースだ。

バイクを担いでシングルトラックをひたすら進むバイクを担いでシングルトラックをひたすら進む

 私にとっての難関は、シングルトラックをひたすら上って森林限界を超えると出現するバイクを担ぐハイキングセクションだ。歩くと息が上がり、どうしてもスピードダウンしてしまう。ふくらはぎが攣りそうになり、Jeffに付いていくのが精いっぱいだ。必死に乗車を試みて、ペースを一定に保つ努力をした。

 峠の頂上ではなんと、ベーコンをグリルで焼いて渡してくれるサービスが! シリアスな中に遊び心を取り入れた、とてもアメリカらしい趣向だ。

 ベーコンエリアを越えると、一瞬のミスが大クラッシュにつながるテクニカルな下り道。疲労と薄い空気で集中力が途切れそうになりながら、ラインを外さないように下った。

 フィニッシュへ続くピークストレイルでJeffの疲労が溜まり、少し遅れ始める。心配だが、しかし、2人でペースを落として総合的に遅れをとることがないようにしつつ、確固たる態度である程度引っ張ってペースをキープした。

 自分でもまさか5日目にしてコンディションがここまで上がってくることは予想できなかった。体力を温存する形で最後のシングルトラックを快調に飛ばし、1位でフィニッシュラインへ到達。2位との差は5分に縮められていたので、決して油断はできない。

【ステージ4】アクアダクト
 距離: 71km
 獲得標高: 1920m
 タイム: 3時間53分41秒
 
【ステージ5】ウィーラー
 距離: 52km
 獲得標高: 1500m
 タイム: 3時間5分9秒

チームメートと困難を乗り越え完全勝利!

さぁ最終ステージへ!さぁ最終ステージへ!

 遂に最終日がやってきた。不思議なほど身体は軽く、ブレックエピック期間中最高のコンディションといっても過言ではない。

 しかし、Jeffとの距離が離れていく。ペースが合わなくてもどかしいが、デュオを選択したのは自分の決定。途中でお互いの不満をぶつけ合い、ヒートアップした場面もあった。最初の2日間はきつかった中で助けてもらったことも事実。この日は風よけとなり、下りでのライン取りを率先して行い、少しでも2人のペースアップを試みた。

 ボリアス峠を上る途中で互いに和解し、再び協力体制でゴールを目指し始めた。峠の頂上では、ブレックエピック最終ステージ恒例のビールステーションがあり、Jeffと二人で仲直りの乾杯。全ては自己責任と常識の範囲。そのルールの中であればこういう楽しみ方もOKだ。

 気持ちよく最後の下りセクションへ突入していった。フィニッシュへ続く、リバートレイルは6日間のラストに相応しい極上のトレイル。すばらしすぎて今までの激しいバトルと苦しいドラマがすでに過去に思えるほどだ。

フィードでビールを受け取りJeffとともに景気付けフィードでビールを受け取りJeffとともに景気付け
ゴールへ向けてシングルトラックを気持ちよく下ったゴールへ向けてシングルトラックを気持ちよく下った

 最高のチームメートJeffと、固い握手を交わしながらフィニッシュゲートをくぐった。最終ステージも優勝し、6日間完全優勝を飾った。
 
 久しく味わっていなかった優勝の歓喜。言葉では表せない、心の底から込み上げる感動につつまれた。この瞬間はアスリートにとって最高だ。同時に優勝を勝ち取ることの厳しさと大切さを、改めて胸に刻むことができた。

総合優勝の表彰台。1位に立つ喜びをかみしめた総合優勝の表彰台。1位に立つ喜びをかみしめた

【ステージ6】ゴールドダスト
 距離: 45km
 獲得標高: 1463m
 タイム: 2時間17分14秒

最高の仲間と最高のレースができて本当に幸せだ最高の仲間と最高のレースができて本当に幸せだ

◇      ◇

 レーサーの表彰後にはボランティアと大会運営スタッフの表彰も行われた。ものすごく素敵な雰囲気だ。

 充実していただけに短くも感じたこの1週間。終ってしまうと少しさみしい気分にもなる。これだけ心身共に全神経を集中した日々はあっただろうか?

 今回は、最後の2日間で自分でも驚くほどコンディションが上がることを発見できたことも大きな収穫だった。まだまだ挑戦したい。この世界にできるだけ身を置きたい。そして、上を目指すと誓った。

池田祐樹池田 祐樹(いけだ・ゆうき)
MTB競技で国内外の耐久や長距離レース(マラソン)に挑戦しているライダー、かつコーチ。2012年は、国内では希少なMTBマラソン「セルフディスカバリーアドベンチャー・大滝」を春・秋と制し、「キング・オブ・王滝」の称号を獲得。また、日本人初の米国自転車連盟認定コーチとして、小野寺健(TEAM SPECIALIZED)のパーソナルコーチとなっている。トピーク・エルゴンレーシングチーム所属。東京都在住。ブログ「Yuki’s Mountainbike Life

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