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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<26>スペイン一周の戦いが開幕 大会序盤の難関山岳ステージがもたらしたものとは?

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 今年最後の3大ツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが24日に開幕しました。早速「寝不足だ…」という声もちらほらと聞こえつつあるのですが、レースは序の口。これからもっともっとドラマが待っています。そこで今回は、序盤ステージを振り返りつつ、今後の戦いを見据えていきたいと思います。

ビッグネームが集結 序盤ステージで見えてきた各チームの狙い

 ブエルタの良いところは、「ビッグネームが集まりやすい」点にあると感じている。シーズン当初からブエルタ狙いの選手、ジロ・デ・イタリアまたはツール・ド・フランスとのグランツール2本立ての選手(中には3本立ての鉄人もいるが)、ジロやツールで不本意な形に終わりリベンジを期す選手、直後に控える世界選手権の最終調整に充てる選手、シーズン後半の顔見せ興行的な選手…、とにかく各選手の参戦意思がさまざまなのである。

アルベルト・コンタドール(左)、クリストファー・フルーム(右)など、前回も豪華だった(2012年 ブエルタ・ア・エスパーニャ)アルベルト・コンタドール(左)、クリストファー・フルーム(右)など、前回も豪華だった(2012年 ブエルタ・ア・エスパーニャ)

 どの選手にも共通して言えることは、概ねリラックスして臨んでいることだ。シーズンが深まり、レース勘が養われていることや、休養明けで大会入りしていることなど、ナーバスになる要素が少ないことも挙げられる。もっとも、スペインという国の優雅さや気質も大いに後押ししていることだろう。

 オーガナイズの面でも、ウニプブリク社主催にA.S.O.が関与するようになって、よりこの大会の格が高まった。ここ数年の“本気度”は観る側にも伝わってくる。

 その“本気度”は、ステージ構成からもうかがえる。平均勾配10%超、最大勾配20%前後の山岳は当たり前。今年などは頂上ゴールを11も設けてしまった。本気の出し方が何だか他とは違う。

第3ステージでボーナスポイント獲得に成功したバルベルデ第3ステージでボーナスポイント獲得に成功したバルベルデ

 そんなわけで序盤ステージから難関山岳が設定されたわけだが、第1ステージのチームタイムトライアルと併せて、このステージ構成が各チームの戦い方をある程度明確にした。

 チームタイムトライアルで勝利したアスタナ プロチームは、エースのヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)にアドバンテージをもたらすことに成功。これにより、最大のライバルと目されるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)らは、積極的な走りでタイム差を埋める必要性が出てきた。

 第2ステージ以降は、モビスター チームがアシストを送り込んで山岳での集団牽引。自らレースのコントロールを請け負っている。第2ステージのアルト・ド・モンテ・ダ・グロバでは、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)、セルジオルイス・エナオ(コロンビア、スカイ プロサイクリング)といった有力選手を戦線からふるい落とすことに成功した。

チームの解散に花を添えたいはずのサムエル・サンチェスは、山頂ゴールでまさかの失速チームの解散に花を添えたいはずのサムエル・サンチェスは、山頂ゴールでまさかの失速

 まず、外堀から埋めていき、ゴール前でエースを解き放つ。モビスター チームの戦い方は今のところ上手くいっていると言えそうだ。スプリント力のあるバルベルデにとっては、現時点でライバルとの真っ向勝負を仕掛けるよりは、3位以内でゴールしボーナスタイムでトップとの差を少しずつ縮めていった方が得策だろう。2009年に総合優勝した時と同様の戦法だ。

余裕のある走りを見せるニバリ余裕のある走りを見せるニバリ

 有力選手が多く、今の展開がそのまま最後まで続くことはないだろう。第3ステージを制しマイヨロホを着るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レイディオシャック・レオパード)はどこまでジャージを守るのか。イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール プロサイクリング)や、充実のサクソ・ティンコフ勢、ベルキン勢の動きも押さえておきたいところだ。

 これはあくまでも私感だが、ニバリの状態がすこぶる良いと見ている。調子を上手く合わせてきた印象。第2、第3ステージでの上りの走りを見る限り、かなり余裕をもって走っている感じがある。第1ステージTTTで得たタイム差も背中を押していることだろう。“メッシーナのサメ”が目を覚ました時、驚くべき走りが見られる気がする。

ブエルタ第5~10ステージの展望

第6ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC第6ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC

 第5ステージ(174.3km)は、山岳ステージにカテゴライズされるが、3級山岳が2つのほかは、上り基調とはいえ難易度はさほど高くはない。上りに強いスプリンターや、逃げた選手にチャンスが巡ってきそうだ。

 ピュアスプリンターにとって、待ちに待った平坦ステージが第6ステージ(175km)、第7ステージ(205.9km)に登場。この2日間はともにカテゴリー山岳がない。総合系ライダーにとっても恵みの移動ステージだ。

第8ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC第8ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC

 休息日を前にした3日間は、再び山岳へ。第8ステージ(166.6km)はアルト・デ・ペニャスブランカスの頂上ゴール。登坂距離14.5km、平均勾配6.6%、上りの前半に最大勾配12.5%を迎える。

 第9ステージ(163.7km)は、2年ぶりにバルデペーニャス・デ・ハエンへ。ゴール前1kmから始まる上りは徐々に傾斜を増し、なんとゴール手前が最大勾配27%。いよいよ“激坂ハンター”の出番だ。

第10ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC第10ステージ コースプロフィール ©UNIPUBLIC

 前半戦最大の山場は、第10ステージ(186.8km)。残り36kmから上るアルト・デ・モナチル(登坂距離8.5km、平均勾配7.7%、最大勾配15%)をクリアし、最後に迎えるはブエルタ初登場の超級山岳アルト・デ・アサリャナス。登坂距離15.8kmで、平均勾配5.5%。しかし、これは山岳の中間部に下りがあるためで、この下りからゴールにかけては15%前後の勾配が続く。残り約7kmと約2kmで最大勾配18%。いよいよ本命たちがマイヨロホを視野に入れた走りに集中するだろう。

今週の爆走ライダー-ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、アルゴス・シマノ)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ブエルタが盛り上がる一方で、秋のクラシックが幕開け。その先陣となったヴァッテンフォール・サイクラシックスで初優勝。地元レースを制した。

昨年はブエルタで5勝 今年はヴァッテンフォール・サイクラシックスを制した(2012年 ブエルタ・ア・エスパーニャ)昨年はブエルタで5勝 今年はヴァッテンフォール・サイクラシックスを制した(2012年 ブエルタ・ア・エスパーニャ)

 1歳年上のマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)とは、ジュニア、アンダー23カテゴリーの時代から同じチームで走る。トラックで大活躍したジュニア時代を経て、アンダー23では世界選手権で2度のメダル獲得。プロデビューの2011年からコンスタントに勝利を重ね、昨年のブエルタではステージ5勝の快挙。

キッテルの勝利を喜ぶデゲンコルブ(右)キッテルの勝利を喜ぶデゲンコルブ(右)

 今年のツール・ド・フランスでは、キッテルとのダブルスプリンターと目されていたが、最終盤にトレインを集団前方へと押し上げるペースアップを担った。キッテルの勝利に大きく貢献し、スプリント以外でもインパクトある仕事ができることを証明した。

 このほど結婚式を挙げ、私生活も充実。直後に臨んだビッグレースで勝利。秋のレースは“新婚パワー”で勝ち星量産といきたいところだ。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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