アルプスの山岳レースに挑む「チーム・トーゲ」現地ルポ<9>「一緒に走れて本当によかった」 田代、筒井、大谷がそろって完走を果たす オートルート最終・第7ステージ

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「Haute Route Alps」(オートルート・アルプス)は8月24日、最終・第7ステージが行われ、「チーム・トーゲ・ジャパン」の日本人3選手は全員、ステージレース完走を果たした。大会公式リザルトによると、個人総合成績(男子、完走449選手)は、ロードレース元全日本チャンピオンでアテネ五輪代表の田代恭崇さんが18位、俳優の筒井道隆さんが368位、八戸学院大学学長の大谷真樹さんは396位。チーム総合成績は93チーム中75位だった。以下、チーム・トーゲからのレポートをお届けします。

第7ステージ・コースマップ ©Haute Route Alps第7ステージ・コースマップ ©Haute Route Alps
第7ステージ・高低図 ©Haute Route Alps第7ステージ・高低図 ©Haute Route Alps

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知り合いも、そうでない人も、7日間のタフなステージレースを終えてきたライダーたちに拍手と声援を惜しまない。自転車が愛されている国なのだ ©Minoru OMAE知り合いも、そうでない人も、7日間のタフなステージレースを終えてきたライダーたちに拍手と声援を惜しまない。自転車が愛されている国なのだ ©Minoru OMAE

 世界で最も過酷なアマチュア・ロードレース、いよいよ最終の7日目に突入。オーロンからニースまで、一部パレード走行も含む距離169km、獲得標高は3700mに及ぶ。

ニースの目抜き通りプロムナード・デ・ザングレに設けられたフィニッシュラインで、家族や仲間のゴールを待つ人々。「アングリー・ボーイ」というロシアのチームの旗を掲げている ©Minoru OMAEニースの目抜き通りプロムナード・デ・ザングレに設けられたフィニッシュラインで、家族や仲間のゴールを待つ人々。「アングリー・ボーイ」というロシアのチームの旗を掲げている ©Minoru OMAE

 「7日目にこの距離と獲得標高が来るのはキツイー」。そんな話が前夜、ライダーたちの話題にのぼった。しかし、ニースへ台風並みの嵐が来るという天気予報が伝えられ、レースオーガナイザーたちがニース警察と協議の結果、コースは大幅に短縮されることとなった。

 タイムが計測される区間は、最後のコル・ド・ヴェンス峠と、その手前のフラット区間の42kmのみ。まるでタイムトライアル(TT)並みのショートレースである。

 これは、TTで好成績を収め順位を上げたチーム・トーゲの面々には、間違いなく有利なコース変更だ。第6ステージまで個人総合・年代別(39歳以下)12位につけている田代恭崇には入賞の可能性が出てきた。田代も集中した表情で、黙々と自転車を準備する。

 しかしレースでは何がおこるかわからない。

チーム・トーゲ、ゴール! 3人揃って仲良くフィニッシュゲートをくぐる ©Minoru OMAEチーム・トーゲ、ゴール! 3人揃って仲良くフィニッシュゲートをくぐる ©Minoru OMAE

 第2グループで逃げに入った田代たち3人のライダーを、コースの係員が誤った道へと誘導。第2グループ全員が余計に峠を登る羽目になり、田代の最終ステージは、登りが得意な彼にはありえないほど低い順位でフィニッシュした。

 公式リザルトによると、ステージ順位は男子196位。最終的に、個人総合成績は前日と変わらず18位でレースを終えた。

 プロのレースではありえないような誘導ミス。しかし田代はゴール後、ニコニコと笑いながらこう言った。

 「いやあ、やっぱり狙っていたのでショックはショックで、がっくりきましたよ(笑)。でも、そのおかげで、チーム・トーゲの大谷さんや筒井さんと合流できて、最後は一緒に走れたから、それは本当によかった」

 チームメイトがいるから頑張れた。その思いは、チーム・トーゲのライダー3人の共通の思いに違いない。そして仲間は、チームメイトだけではない。「世界で最も登る、最も過酷なアマチュア自転車レース」を共に走りぬいてきた“戦友”ライダーたちもそうだ。

ライダーがごった返す中、カメラに気づいて振り返る筒井道隆。挑戦を見守りつづけたカメラマンに感謝の視線を向けた ©Minoru OMAEライダーがごった返す中、カメラに気づいて振り返る筒井道隆。挑戦を見守りつづけたカメラマンに感謝の視線を向けた ©Minoru OMAE
赤いウェアは「ランタン・ルージュ」というオートルート公式ライダーが着用。足切りタイムギリギリのあたりを上がったり下がったりしながら、完走目標のライダーたちを力づけた ©Minoru OMAE赤いウェアは「ランタン・ルージュ」というオートルート公式ライダーが着用。足切りタイムギリギリのあたりを上がったり下がったりしながら、完走目標のライダーたちを力づけた ©Minoru OMAE
互いの健闘を称え合う(左から)筒井道隆、大谷真樹、田代恭崇。総距離866km、獲得標高2万1000m、ジュネーブからニースまでのアルプス越えという世界で最も過酷なアマチュアレースを走り終えて、初めて出る笑顔だ ©Minoru OMAE互いの健闘を称え合う(左から)筒井道隆、大谷真樹、田代恭崇。総距離866km、獲得標高2万1000m、ジュネーブからニースまでのアルプス越えという世界で最も過酷なアマチュアレースを走り終えて、初めて出る笑顔だ ©Minoru OMAE
八戸学院大学学長の大谷真樹にとって、心の支えとなったのは、教え子たちのメッセージがびっしり書かれたボトル。彼は必ずこのボトルを携帯して、タフなレースを走りきった。手前でサムズアップしているのは田代恭崇 ©Minoru OMAE八戸学院大学学長の大谷真樹にとって、心の支えとなったのは、教え子たちのメッセージがびっしり書かれたボトル。彼は必ずこのボトルを携帯して、タフなレースを走りきった。手前でサムズアップしているのは田代恭崇 ©Minoru OMAE

 ニースの目抜き通りプロムナード・デ・ザングレまでのパレード走行を3人が一緒に走り、オートルートの最終フィニッシュゲートを並んでくぐる。大谷真樹が「うおー!」と叫ぶと周囲のライダーも呼応して「Wooooow!」と叫ぶ。レース中は脚やペースが合うライダーと何度も一緒に峠を走り、引き合い、励まし合ってきた。パレード走行が終わったニースの海岸で、筒井道隆のもとにそんなライダーがよってきて「Weldone!」と健闘を称える。田代や大谷と笑い合う。

 オートルート・アルプスは、確かに並外れて過酷でタフで登りまくるレースだ。そして、走りきったものにしかわからない世界が、そこには確実にある。チーム・トーゲの3人は今回、日本人初完走を目指し、3人とも見事に成しえた。さて、来年次に続くのは誰だろうか?

=敬称略


(レポート・Team TAUGE Japanマネージャー 山本祥子)



(Haute Route YouTube Channel より)

 

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