アルプスの山岳レースに挑む「チーム・トーゲ」現地ルポ<1>元全日本チャンピオンの田代恭崇、スタート地点のジュネーブに降り立つ 「一番速いグループへ入ります」

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ヨーロッパのアルプス山脈を舞台に開かれる過酷なアマチュア・山岳ステージレース「Haute Route Alps」(オートルート・アルプス)が8月18日開幕する。日本からは、俳優の筒井道隆さん、自転車ロードレースの元全日本チャンピオンでアテネ五輪代表の田代恭崇さん、八戸学院大学学長の大谷真樹さん、ホイールビルダーのティム・スミスさんの4選手による「チーム・トーゲ・ジャパン」が出場する。「Cyclist」ではチーム・トーゲの挑戦を、選手たちに帯同するマネージャーの山本祥子さんによる現地レポートで連日お伝えします。

◇           ◇

 「世界で最も登り、最も過酷な自転車レース」として名高いオートルート・アルプス。元F1王者のアラン・プロストやロンドン五輪イギリス代表のエマ・プーリーなど世界中の名立たるサイクリストが7日間かけて、ジュネーブからニースまで860km、獲得標高2万1000mを駆け抜ける。日本から参戦するチーム・トーゲのエースライダー、田代恭崇も出発の地・ジュネーブへ到着した。

レースを控えた16日に行われた「ライドツアー」のスタート前に記念撮影。チーム・トーゲ・ジャパンの(左から)筒井道隆、田代恭崇。大谷真樹の3選手も参加したレースを控えた16日に行われた「ライドツアー」のスタート前に記念撮影。チーム・トーゲ・ジャパンの(左から)筒井道隆、田代恭崇。大谷真樹の3選手も参加した ©Team TAUGE Japan

到着直後からピンチ 飛行機輸送でリアエンドに歪みが…

 アマチュアライダーが海外レースに参戦することのタフさは、コースやライドの強度ではないところにもある。それは、慣れない外国で起こるトラブルに自分で対処しなくてはならないことだ。プロのツアーと違って、メカニックが帯同しているわけではない。馴染みの自転車店が近くにあるわけでもない。言葉の問題もある。

 飛行機輪行してきた自転車を組み上げたあと、田代の表情は曇っていた。

 「自転車の、リアエンドが歪んでしまっていて、このままでは乗れない状態ですね。直さなくては」

ジュネーブ到着後、最初に訪れたのは、中心部にある「Hot Point」という自転車ショップ。ここでリアエンドの歪みを修正。料金は20スイスフランジュネーブ到着後、最初に訪れたのは、中心部にある「Hot Point」という自転車ショップ。ここでリアエンドの歪みを修正。料金は20スイスフラン ©Team TAUGE Japan

 だが田代は落ち着いていた。かつてフランスのチームで6年間走った経験のあるベテランだ。まずは歪みを直す工具がある自転車店を探し、アポイントを入れ、状況を説明。自転車を預けてジュネーブの街の散策に出た。

 広場に出ているマルシェをのぞ覗き、流暢なフランス語でいちじくを買う。写真を撮る。とてもリラックスしている。早朝にはレマン湖の散歩にも行ってきたそうだ。

 「あの自転車店の中を見たとき、『あ、ちゃんとしている』と分かったから。大丈夫です」

 これがベテランの余裕なのだろうか。

 1時間ほどで修理は終了し、午後に開催される30kmほどのジュネーブ・シェイクダウンライドへ参加できるメドもついた。田代は軽い足取りでホテルへ戻っていった。

 

海外ライダーも注目する「Anchor RL8」

ホテルの宴会場が自転車サポートのためにキープされており、到着した自転車はツアーオペレーターのウィルがチェックしていく。丈夫なバイク輸送用バッグに入れていても、機材のゆがみはよくあること。レース前に万全な状態に仕上げるホテルの宴会場が自転車サポートのためにキープされており、到着した自転車はツアーオペレーターのウィルがチェックしていく。丈夫なバイク輸送用バッグに入れていても、機材のゆがみはよくあること。レース前に万全な状態に仕上げる ©Team TAUGE Japan

 レースのスタートを18日早朝に控え、16日には、組み上げた自転車を慣らし、時差ボケを解消するために30kmのライドツアーが組まれていた。

 ジャージに着替えて参加者が集合すると、やはり皆、鍛え抜かれた体躯。自転車乗り同士なら、どのくらい走れるか、国籍が違っても互いにすぐ分かるのが面白い。田代のキャリアを知らないサイクリストにもすぐ「走れるヤツ」と見ぬかれたようで、彼の乗っている日本ブランドの自転車「Anchor RL8」に注目が集まった。

 「これはどこの国のブランド?」「重量は何キロ?」「どんな乗り味?」

 矢継ぎ早に質問が浴びせられる。彼らはいつでも“より走れる”自転車を探しているのだ。

組み上げた自転車でシェイクダウン・ライドに出かける田代恭崇選手。海外ライダーに交じるとひときわ小柄な印象組み上げた自転車でシェイクダウン・ライドに出かける田代恭崇選手。海外ライダーに交じるとひときわ小柄な印象 ©Team TAUGE Japan
海外ライダーたちはチーム・トーゲの自転車「ANCHOR RL8」に興味津々。走れそうなバイク、というのが彼らの第一印象海外ライダーたちはチーム・トーゲの自転車「ANCHOR RL8」に興味津々。走れそうなバイク、というのが彼らの第一印象 ©Team TAUGE Japan

 

本番に向けて決意 「行けるところは、行きます」

 シェイクダウンを終えて笑顔で戻ってきた田代に、改めてレースをどう走るか、聞いてみた。

乾杯! ライド後の懇親会で。自転車乗り同士、一緒に走れば「仲間」になり、話題はつきない。今回一緒に走ったのはカナダ、ロシア、オーストラリアからのアマチュアライダーたち。多くは40代以上で、世界一タフなレースに参加を決めただけあって、さすがに鍛えぬかれている人が多い乾杯! ライド後の懇親会で。自転車乗り同士、一緒に走れば「仲間」になり、話題はつきない。今回一緒に走ったのはカナダ、ロシア、オーストラリアからのアマチュアライダーたち。多くは40代以上で、世界一タフなレースに参加を決めただけあって、さすがに鍛えぬかれている人が多い ©Team TAUGE Japan

 現役引退後5年間、自転車競技から遠ざかっていたが、オートルート・アルプス参戦を決めて、今年の1月からトレーニングを再開した田代。ブリヂストンサイクル株式会社のマーケティング部で日々仕事をしながら、朝夕のジテツウや休日しか練習する時間がないという、プロ時代とはまったく違う状況に焦りを感じていたようだが、ジュネーブに入ってからは終始リラックスし、笑顔ですべてを楽しんでいるように見えたからだ。

 「めちゃめちゃ楽しいです(笑)。フランスでのアマチュア時代は、もっと自分のことは自分でやらなくてはならないキツイ状況だったから、それに比べると天国です」

 「レースでは、たぶん、チームはバラバラに走ることになると思うんです。自分は、一番速いグループに入ってついていくつもりです。そこから、『行けるところ』は行くつもりです」

 今回のレース後半からは、田代の父もはるばるフランスまで飛んで、応援に駆けつけるという。

 勝負をかけるステージ。それは第何ステージなのだろうか。田代は笑って答えなかったが、「行けるところは、行く」という言葉、すごくカッコいいではないだろうか。

=敬称略

(レポート・Team TAUGE Japanマネージャー 山本祥子)


(Haute Route YouTube Channel より)

 

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