チャリガールMOCOのガールズトーク<14>悔し涙は、本気で挑むからこそ 小さくったって立派な選手なんだもん!
皆さんが、本気で競って、初めて勝負の世界の厳しさを知ったのは何歳の時でしたか? 私が初めて悔し泣きを経験したのは、小学5年生のバレーボールの試合だったかな。周りの人と競い合い、勝ち負けが決まる。これは年齢、経験に関係なく、勝負の場に置かれた者には容赦なくついて回る事ですよね。
1対1の試合の場合、勝利できる確率は2つに1つ。しかし自転車レースの場合、勝利はたった1人しか手に入らない。500人のレースに参加したら、優勝できる確率は500分の1。
先日まで、連日ドラマティックな展開を見せてくれたツール・ド・フランスもしかり。その過酷さたるや、厳しさを通り越して、残酷さを覚えたほどでした。一斉にスタートを切っても、勝利はたったひとつ。そのレースへ至るまでに、選手は計り知れない努力をし、心を強く持ち、万全の準備をして勝負に挑む。だからこそ、勝利の価値は大きいのでしょう。

そんな、容赦ない勝負の世界に、子どもながらに挑戦している選手達に会ってきました。見てください、この選手達の真剣な表情を!
いま子ども達の間で大人気の「ランニングバイク」。これまでランニングバイクといえば、補助輪がない自転車練習用の2輪車というイメージだったのですが、ここでは本格的な競技として使用されているのです。
地面を脚で蹴って進む自転車なので、自然とバランス感覚が養われるそうです。ヘアピンカーブだってなんのその。アウト・イン・アウトのライン取り、体重移動、バイクの倒し方、コーナー立ち上がりからの加速…これが2歳から6歳の子供たちとは思えないほどの、美しいコーナリングを繰り広げていました。
神経系が急速に発達する幼児期は、このような地面を蹴るリズム感、体重移動のバランス、足を速く動かそうとする敏捷性を養うにはもってこいですね。
それに、周りで声援を送るお父さん、お母さんのアツイ事といったら! 途中で泣き出しちゃう女の子にも、「最後まで頑張れっ!」と声を掛けます。たとえ落車しても、レース中に保護者はコース内に入れません。最後の1人がゴールするまで、周りは声援を送ることしかできないのです。

近所のお友達とチームを結成し、お揃いのユニフォームを作り、ホイールやタイヤもグレードアップしたものを使用して勝負に挑む。驚くべきことに、朝練を日課にしている子ども達もいるとの事。これって、ストイックに勝利を目指す大人と変わりませんよね。メカニックやトレーニングはお父さん、ウェア等のコーディネートはお母さん、と上手に担当が分かれているのかもしれません。
なぜ、こんなにもアツくなってしまうのか? その秘密は、この大会の仕掛け人の思いにありました。
きっかけは、沢山の子ども達にレースの場所を作ってあげたいという、親心。「メーカー主催の大会はあるけれど、垣根なく、どんな子も参加できる大会があったらいいな。それならば、自分たちで大会を作っちゃおう!」
そう考えて動き出した仲良しお父さん2人。息子たちを思う気持ちは強いのです。仕事の合間を縫って、ランバイク・チャレンジシリーズ「R.C.S」を立ち上げました。
・チャレンジシリーズ戦とし、総合獲得ポイントで年間ランキングを決定する
・チームランキングはシリーズ戦毎に経過を発表
・優勝者へのトロフィー、勝利者インタビューを欠かさない
・ヘルメット、グローブ等の安全装備が無い選手は失格
・大会レポートの名前には「〇〇くん」や「〇〇ちゃん」では無く「〇〇選手」で統一
・参戦クラスはその大会の月齢で行い、年間を通しての有利不利をなくす
…などなど、まるで公式戦のような演出! 2歳でも立派な選手なのです。第7戦を終えた現在は三重県のチームがトップの座を守っています。

運動会の徒競走などで、着順を決めない小学校も沢山あるご時世。しかし、子供の頃に感じたあの悔しさは、自分を成長させてくれたように思います。そして、大きく包んでくれる親が一緒にいてくれる事が、何より大事な事ですよね。
12月のシリーズ戦終了までに、あと5戦。小さな選手達の白熱した戦いにご注目ください。この中から、未来のツール・ド・フランス出場選手が出るかもしれません。

泣くな~っ、君たち選手はみんなかっこいいぞ~っ! アレ、アレ~ッ!!
チャリガールMOCO
本名:笹本智子。レーサーとして竹芝サイクルレーシングチームに在籍。実業団から市民レースまで様々なレースに参戦している。チャリガールイベントを企画・開催し、自転車を取り巻くすべての人達の「楽しい」「嬉しい」「面白い」を作っている。1980年生まれ。静岡県出身。公式ブログ:http://moco-sasamoto.jugem.jp
- 表彰台の真ん中で、優勝トロフィーを天にかざそう 写真:(有)ハイハーバー
- 真夏の空の下で繰り広げられたアツい戦い
- 真剣な表情で勝負に挑む小さな選手達
- それぞれこだわりのマシンでスタートを待つ
- 見事なバランス感覚で安定したコーナリング
- コーナーの立ち上がり、思い切りダッシュ!!
- お揃いのユニフォームを作って気合十分
- 月齢ごとのクラス分けで、年間を通して平等なシリーズ戦へ
- 泣くな~っ! 最後までゴールを目指す姿は誇らしいぞ!