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山田美緒の「旅する満点バイク」<15>分断されたシリアの村、「叫びの丘」からスピーカーで会話をする人たち 「いつか一緒に暮らそう」

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シリアの3日間、充実の滞在

 平和を願って中東を走る「フォロー・ザ・ウーマン」のスタート、レバノンのつぎはシリアへ向かいました。

 ライドを終えてバスが国境に到着したのは夜の7時。そこから入国審査などを経てホテルに入ったのは深夜でした。待ち時間が長くアレンジどおりにいかないのも“アラブ時間”なのだな、というのを体験したレバノンでした…。

ゴール地点のアーチ。背景は銃弾の跡が残る建物ゴール地点のアーチ。背景は銃弾の跡が残る建物

 シリアでの3日間は、MTNというメディアが一大スポンサーとなっていました。ラジオとテレビの中継車が同行し、スタート・ピットストップ・ゴールと立派なアーチが用意され、補給食もオレンジやデーツ(なつめやし)、水など充実していました。

 また、フォロー・ザ・ウーマンの女性たちが来るということは地元の人たちにもよく周知されていたようで、ピットストップでは地元の人がお菓子やジュースを用意してくれていたり、ダンスを披露してくれたり、バラの花を1輪手渡してもらったり…とてもありがたいおもてなしをしてもらいました。見学に集まったたくさんの人で、沿道はもちろん家の屋根までうめつくされていたこともありましたよ。

100人のっても大丈夫? 屋根の上まで見物人100人のっても大丈夫? 屋根の上まで見物人
シリアでの歓迎の数々シリアでの歓迎の数々

 首都のダマスカスを走り抜けたり、モスクや市場を横目に走行したりしながら3日間はそれぞれ日に50km程度を走行し、それ以外にもスケジュールが盛りだくさん。難民キャンプを訪問し、ショーを見ながら夕食を食べ、ついにはファーストレディーに会いに大統領官邸訪問まで!

 ファーストレディーは、フォロー・ザ・ウーマンの活動を第1回から応援してくれていて、一緒にサイクリングをしたこともあるそうです。この時はその機会はありませんでしたが、いつか一緒に走ってみたいものです。

平和を想い、頭をシェイクされた経験

クネイトラ、銃弾の跡クネイトラ、銃弾の跡

 シリア滞在中で一番印象に残っているのは、自転車で走行中に立ち寄ったゴラン高原です。高原にあるクネイトラという町は、1974年、イスラエルに攻撃され破壊された時の姿が国連によって保存されています。崩れた家の壁には、無数の銃弾の跡が残っていました。

 今は誰も暮らしていないとても静かな町。街路樹だけが青々と生気を放つ舗装された綺麗な道路を走るのは、なんとも奇妙な感覚でした。町全体が、無言で私たちに何か訴えかけているようでした。

 さらに向かったShouthing hill(叫びの丘)。ここからはイスラエルに占領された元シリア領の村が見えます。こちら側と向こう側――境界とされる場所にはフェンスが張り巡らされて、向こう側に住むシリア人は移動を許されていません。シリアの国籍を持ち、シリアに暮らしていたにもかかわらず。もともとはひとつの村だったので、家族や友人と離れ離れになってしまった人たちもいます。

 ここが「叫びの丘」と呼ばれるのは、スピーカーを使ってコミュニケーションをしているからだと言います。

 「おーい!元気かー!」
「私たちはいつもあなたたちのことを思っている」
「いつか一緒に暮らそう」

ゴラン高原「叫びの丘」に立ち、シリアだった向こう側を望むゴラン高原「叫びの丘」に立ち、シリアだった向こう側を望む
「No War」とかかげる沿道の子供たち「No War」とかかげる沿道の子供たち

 大好きな人と一緒にいられず、家族と一緒に暮らすことが許されない。信じられないことですが、これがここでの現実。対する私は、平和な日本で生まれ育ち自由も権利も当たり前で、そのことにさえも知らなかった。同じ地球に生まれ、同じ時間を生きているにも関わらず、こんなにも違うなんて。

 「いつかこのフェンスがなくなり、自転車で行き来ができるようになりますように」――涙が止まりませんでした。言葉が見つからず、ただ向こう側を見つめ続け、シリアの国旗を高くかかげました。

 この夜はオペラハウスへ観劇、旧市街の観光と続きました。昼間の景色と衝撃が頭から離れないものの、オペラは楽しいし町を歩けばわくわくする。これが私の現実なのだ、と頭をシェイクされているような気分でした。

 さぁ次はヨルダンへ入ります!

文・イラスト・写真 山田美緒

山田美緒山田美緒(やまだ・みお)
大阪府生まれ。サイクリストとして世界中を旅してきたほか、一般社団法人コグウェイを設立し、「四国ディスカバリーライド」などを主催。著書に、アフリカ大陸縦断記をまとめた『マンゴーと丸坊主』、女性サイクリストたちとの旅や交流の体験記『満点バイク』がある。ブログURL(http://mantem.exblog.jp/)

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