新製品情報ジャイアント「PROPEL」デビュー 最高の風洞実験から生まれた“世界最速”のエアロロード
世界最大の自転車メーカーGIANT(ジャイアント)が、新型エアロロード「PROPEL」(プロペル)を日本国内向けに発表した。最高の性能を発揮する最上級モデルの「PROPEL ADVANCED SL」と、ベクターポスト仕様にするなどして価格を抑えた「PROPEL ADVANCED」、そして女性専用設計の「ENVIE ADVANCED」の3シリーズ構成で、8月後半より順次発売となる。
空力性能を徹底的に追求
PROPELでは、これまでのジャイアントの象徴ともいえるスローピングフレームではなく、空力的理由から水平トップチューブを採用した。形状は後ろになるほど細くなる翼断面形状が基本となっている。下半分が広がった特徴的な形状のダウンチューブは、ボトルを取り付けた状態で最高の空力性能を発揮できるよう設計されたものだ。ジオメトリーについては、すでに完成の域に達しているTCRと同様のものとなっている。



空気抵抗を抑えるため、ブレーキ本体にはTRPと共同開発の専用Vブレーキを採用。フロントブレーキはフォークの後ろにセットされる。正面から見てブレーキが完全に隠れるだけでなく、アーム形状を後ろに絞ることで、ブレーキ本体も空力パーツの一部となっている。グレードに応じて、カーボン製(SLR)もしくはアルミ製(SL)のセットが付属する。
ハンドルバーも専用設計のエアロタイプ。最高級モデルの「PROPEL ADVANCED SL 0」では、ステムまでが一体となり、コラムスペーサーもエアロ形状となっている。
最高の開発環境で磨き上げられた空力性能
2年の歳月をかけて開発されたPROPELは、当初「TCR ADV SL AERO」という名称で開発がスタートした。フランスのACE(Aero Concept Engineering)と2010年より業務提携することで、非常に高度な空力開発が可能になった。ACEはかつてのF1チーム「プロスト」の空力部門のエンジニア2人が、チーム解散後に独立して立ち上げた空力コンサルタント会社だ。
ACEとの提携の結果、CFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)やDynamic Dummy Production(動的模型制作)などの先進的空力技術の恩恵を受けて、PROPELは開発された。
開発においては、実走状態に近い条件が設定された。すなわち、ライダーが乗車し、ホイールやパーツ、そしてボトルまでが取り付けられた状態である。ライダーのモデルには、契約チームであるラボバンク(開発当時。現ベルキン)の現役プロライダーの体を実測し、忠実に再現したものが使用された。
形状のテストは製品化までに、実に88のバージョンが作成され、初期はTCRに近いスローピングフレーム形状だったが、ここからトップチューブが水平になり、ブレーキがVブレーキ化されるなど、徐々に現在の形に近付いていった。バージョン79ですでに他社製品を上回る空力性能を達成したが、さらにハンドルバーのエアロ化を行うなどの改良を進めたという。

風洞実験では、ダイナミックダミー(動的マネキン)が用いられた。ペダリング動作を行える等身大のマネキンにサイクリングウエアを着せてバイクに跨らせ、バイクにはパーツやボトルなどを全て取り付け、ホイールを40km/h相当で回転させるという、限りなく実走状態に近い空力評価が行われた。
こうして完成したPROPEL ADVANCED SLは、主要ライバルブランドの最高級エアロロードバイクとの比較風洞テストにおいて、あらゆる風向きでライバルを凌駕する空力性能を発揮するバイクとなった。これは40km/hの速度で40km(1時間)走行した場合、他ブランドのバイクよりも12秒から36秒のタイム短縮を実現するものだという。
エアロロードながら軽量性も確保するラインアップ
トップモデルとなるのが「PROPEL ADVANCED SL」で、使用コンポに応じて「0」~「3」の4モデルと、フレームセットが用意される。シマノ・デュラエースDi2、デュラエース、スラム・レッドを使用する上位3モデルは、エアロロードながら完成車重量6kg台の超軽量マシンで、ホイールにはジャイアント製ではなく、開発テストで好結果を残したジップ404ホイールが組み合わされる。
フレームと一体化したインテグラルシートポスト(ISP)ではなく、ベクターポストを採用して全体に価格を抑えたモデルが「PROPEL ADVANCED」だ。「1」~「3」の3モデルとフレームセットが用意された。11速化された新型アルテグラを使用する「PROPEL ADVANCED 2」は45万円を切る魅力的な価格となっている。
「PROPEL ADVANCED」をベースに、女性専用のジオメトリーで作られたのが「ENVIE ADVANCED」だ。アルテグラ仕様の「1」、105仕様の「2」の2モデルとなる。
PROPEL ADVANCED SL
フレーム: Advanced SL-Grade Composite
フォーク: Advanced SL-Grade Composite, Full Composite Overdrive 2 Column
サイズ: 680(465/XS), 710(500/S), 740(520/M), 770(545/ML)mm
ブレーキ: GIANT SPEED CONTROL SLR(SL 3のみSL)
PROPEL ADVANCED SL 0(完成車価格:1,260,000円)
コンポ: SHIMANO DURA-ACE Di2 重量: 6.9kg(710mm)
PROPEL ADVANCED SL 1(完成車価格:997,500円)
コンポ: SHIMANO DURA-ACE 重量: 6.9kg(740mm)
PROPEL ADVANCED SL 2(完成車価格:1,050,000円)
コンポ: SRAM RED 22 重量: 6.7kg(710mm)
PROPEL ADVANCED SL 3(完成車価格:504,000円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA 重量: 7.5kg(710mm)
FS PROPEL ADVANCED SL ISP(フレーム価格:367,500円)
重量: フレーム1090g(710mm), フォーク380g
PROPEL ADVANCED
フレーム: Advanced-Grade Composite
フォーク: Advanced-Grade Composite, Full Composite OverDrive 2
サイズ: 465(XS), 500(S), 520(M), 545(ML)mm
ブレーキ: GIANT SPEED CONTROL SL
PROPEL ADVANCED 1(完成車価格:556,500円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA Di2 重量: 7.5kg(470mm)
PROPEL ADVANCED 2(完成車価格:441,000円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA 重量: 7.6kg(470mm)
PROPEL ADVANCED 3(完成車価格:294,000円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA 重量: 7.9kg(520mm)
FS PROPEL ADVANCED(フレーム価格:262,500円)
ENVIE ADVANCED
フレーム: Advanced-Grade Composite
フォーク: Advanced-Grade Composite, Full Composite OverDrive 2
サイズ: 430(XXS), 465(XS), 500(S)mm
ブレーキ: GIANT SPEED CONTROL SL
ENVIE ADVANCED 1(完成車価格:451,500円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA 重量: 7.4kg(430mm)
ENVIE ADVANCED 2(完成車価格:294,000円)
コンポ: SHIMANO ULTEGRA 重量: 7.8kg(430mm)
- 最上級モデルの「PROPEL ADVANCED SL 0」。フラッグシップらしい最高の性能と気品を兼ね備えたモデル
- ダウンチューブの上半分は翼断面、下半分は平らな面取りがされた形状
- 専用Vブレーキがフロントはフォークの後ろ側に付く。上位モデルはカーボン製
- フレームから完全に隠れる形になるブレーキ本体。写真はアルミ製のもの
- ハンドルバーも空気抵抗の少ない専用品。最上級モデル「SL 0」ではステムまで一体型となる
- 「SL 0」では、フォークコラムスペーサーも、翼断面形状のものを使用する
- フレーム一体シートポスト(ISP)も新しい形になった
- ブレーキはTRPと共同開発。写真はカーボン製のSLRタイプ
- フォークの裏側に差し色が入る
- 真横から見るとシンプルなグラフィックだが、斜めアングルではまた異なる表情を見せる
- 専用エアロハンドル
- 今回登場したモデルは全車「ADVANCED」のため、ANT+対応スピード/ケイデンスセンサーの「RIDE SENSE」が付属する
- スラムRED22仕様の「PROPEL ADVANCED SL 2」
- 「PROPEL ADVANCED SL 3」上級グレードの完成車の中では飛び抜けて魅力的な価格設定のアルテグラ仕様
- アルテグラDi2仕様の「PROPEL ADVANCED 1」
- ベクターポスト仕様で身近な価格帯となる「PROPEL ADVANCED 2」
- 105仕様で完成車30万円を切る「PROPEL ADVANCED 3」
- 女性専用モデルとなる「ENVIE ADVANCED 1」アルテグラ仕様
- 女性専用モデルとなる「ENVIE ADVANCED 2」105仕様
- GIANTが公表した、他ブランドのエアロロードとの風洞実験比較データ。PROPEL ADVANCED SL(青いグラフ)が最も低い必要ワット数を示している