"オフ会"だけどガチで走りました「究極超人あ~る」の舞台を駆け抜けた1時間 信州・伊那路を包んだサイクリストたちの熱気

  • 一覧

 今から20年以上も前に人気を誇ったコミック・アニメ作品「究極超人あ~る」の舞台として描かれた長野・伊那地方で7月28日、“聖地巡礼”のサイクリング大会「轟天号を追いかけて ふたたび」が開催された。ゆかりの地をただ訪れるだけでなく、作品のクライマックスシーンにならって、JR飯田線に沿う約18kmの道のりを自転車で疾走するライドイベント。集まったのは作品の愛好者にとどまらず、地元の町長や商工関係者、JR飯田線のファンや生粋のサイクリストまで、多彩なメンバーで盛り上がった。

(レポート 本山大人) 

「バンザイ!」に見送られてスタート「バンザイ!」に見送られてスタート

作品のクライマックスシーンを再現

 天気予報は曇り時々雨だったが、当日は見事なまでに晴れ渡り、空は青く高かった。日差しは強いが、高原の風はひんやりとして気持ちいい。

 とはいえ、訪れた目的は避暑ではない。この地で開催されるアニメ系のイベントを取材しにきたのだ。筆者は「Cyclist」のシステム担当のエンジニアなのに、である。

 編集長から「『究極超人あ~る』の事、好きだろ?」と問われ、「…はい」と言ってしまったのが運の尽き。そのやりとりから、東京から約250kmを車で駆けつけることになってしまった。

WEBサイト「小学館コミック・サンデー名作ミュージアム」より (C) Shogakukan All rights reserved.WEBサイト「小学館コミック・サンデー名作ミュージアム」より (C) Shogakukan All rights reserved.

 「究極超人あ~る」は、高校の光画部、つまり写真部を舞台に描かれた青春コメディー。1985年に少年サンデーで連載が始まると、全国で高校の写真部員たちが「光画部」と名乗るなど、幅広い人気を博した作品だ。原作者は「機動警察パトレイバー」や「鉄腕バーディー」で有名なゆうきまさみ氏。

 アニメ版は1991年に制作された。そのクライマックスシーンで、主人公たちがJR飯田線の田切駅から伊那市駅まで約18kmを自転車に10人乗りして、1時間で疾走するというシーンがあるのだ。

 今回のイベント「田切駅→伊那市駅・1hour BicycleTourReturns “轟天号を追いかけて、ふたたび。”」には、作品のクライマックスシーンを再現しようではないか!と全国から約80人の究極超人あ~るファン、JR飯田線ファン、そして自転車ファンが集ったのである。

 もちろん、作中と同じように10人乗りで、というのは不可能なので、1人乗りで交通法規を守って再現、という事になった。

開会式中の様子開会式中の様子

 イベントの開始は作中と同じく17:00。場所は田切駅近くの聖徳寺の駐車場。

 筆者がイベントのスタート地点に着いた時には、既に本格的なジャージを身にまとったサイクリストや、作中キャラクターに扮したコスプレイヤー、さらにはワケの分からないコスプレをした人、そして学ランに下駄のバンカラ高校生姿の人などでごった返していた。そんな盛り上がりを目にしただけで、心が踊るようなウキウキ感でいっぱいになった。

 

アニメファンの「聖地巡礼」はココから始まった!

イベントを主催した「Cycle倶楽部R」代表の牧田豊さんイベントを主催した「Cycle倶楽部R」代表の牧田豊さん

 まもなく開会式が始まった。軽トラックの荷台に立って「聖地巡礼発祥の地 宣言」文を読み上げた人物は、今回のイベントの主催者「Cycle倶楽部R」代表の牧田豊氏。

 宣言によると、アニメファンが作品の舞台となったゆかりの地を訪ねる「聖地巡礼」は、この「究極超人あ~る」から始まったのだという。作品のファンである筆者も知らなかった意外な、そして趣深いトリビアである。

 この聖地巡礼発祥の地宣言は参加者にプリントで配られ、参加者全員で内容を噛み締めた。


■聖地巡礼発祥の地 宣言(一部抜粋)

聖地巡礼発祥の地宣言文。聖地巡礼発祥の地宣言文。

かれこれ20年以上も昔、ここ田切駅に「あ~るファン」が集まるという、不思議な不思議な“現象”が始まりました。

この何の変哲もない田舎の駅に、全国から多くの人が集い、誰が置いたのか備え付けのノートに自分の思いを書き込みし、思い思いに写真を撮り、果ては自主的に周辺の掃除までして帰る。そんな不思議な“現象”がここ田切駅で始まったのです。

その不思議な”現象”をあらわす言葉は20年前にはありませんでした。しかし時はめぐり、今その“現象”は「聖地巡礼」という言葉となって多くの日本人を、さらには海外のジャパンアニメファンをも楽しませています。

私たちは、20年以上昔にここ田切駅ではじまった不思議な”現象”それこそが「聖地巡礼」のはじまりだと確信しています。

そう、まさしくここ田切駅は、究極超人あ~るとそのファンによって図らずも誕生した「聖地巡礼発祥の地」なのです。

 

 続いて田切駅がある飯島町の高坂宗昭町長が、紋付袴姿で登場。家来衆ともどもトラックに上がり、祝辞を皆の衆に申し渡し候。このノリに参加者一同から笑いと温かい拍手が上がった。

飯島町の高坂宗昭町長とご家来衆飯島町の高坂宗昭町長とご家来衆
渾身のコスプレで会場を沸かせた高坂町長渾身のコスプレで会場を沸かせた高坂町長

 町長の祝辞に続いて、原作者のゆうきまさみ氏からTwitterで「おお、事故や怪我がないように気をつけてやってください(^_^)」、そしてアニメの劇中で鳥坂先輩役を務めた声優の神谷明氏からも「いいね〜。諸君にま〜〜〜〜〜かせた!!」とのサプライズ祝辞が届いたと発表された。

 開会式を終えた、参加者がグループ分けされて順次スタートしていく。コスプレをした春風高校光画部OBがバンザイをして見送っていた。筆者も最後の方に出発し、先にスタートした参加者を追った。

 

夕暮れの伊那路をひた走った

 ここで今回のイベントのコースを説明したい。コースは…なんと無し! 参加者各々が好きなルートで好きな道を進み、好きな角を曲がって1時間以内に伊那市駅までたどり着く、たったそれだけである。

筆者が使用した自転車は、カインズの「SAUVEUR」(ソヴェール)。4万9800円のロードバイクだ筆者が使用した自転車は、カインズの「SAUVEUR」(ソヴェール)。4万9800円のロードバイクだ

 筆者は土地勘がないので一番簡単な国道153号をひたすら直進し伊那市駅にたどり着くルートを選択したが、中には作品中の登場人物と同じように、わざわざ迂回して標高854mの火山峠を超える猛者もいた。

 国道153号を走っていると、左手側が西になる。天気も良かった為、駒ケ岳の稜線と夕日の境目がくっきりとしていて美しかった。作品と同じように辺りがオレンジ色に染まっていく中を実際に走ると、新鮮な体験なのに懐かしい感覚に包まれるようで、とても感動的だった。

ゴールでもらったイーナちゃんピンバッチゴールでもらったイーナちゃんピンバッチ

 ゴール地点の伊那市駅前に到着すると、すでに完走した参加者たちが揃っていた。ゴールで、作品中と同様にスタンプを押してもらうと、記念品としてイーナちゃんのピンバッチがもらえた。

 筆者は残り1分というところでスタンプを押したのだが、筆者の後に滑りこむかのように、Cycle倶楽部Rの捧(ささげ)氏がゴール。なんと、アニメ作品を再現するかのように残り1秒で到着したのだった。

ゴール地点でのスタンプ所ゴール地点でのスタンプ所
ゴールに先に到着していた参加者たちゴールに先に到着していた参加者たち

 

笑顔の絶えない閉会式でバンザイ三唱

 全員無事に完走し、イベントは大成功。「今年は遭難者を出さなかった」と運営側も安堵した。

 閉会式の会場は、ゴールから少し離れたところに用意されていた。筆者が着いた時には、ひと足先にゴールした参加者の方々が美味しそうにビールを楽しむ姿が…。泊まりで来ていた方や電車、バスなどで参加していた方々が、ほろ酔い気分で語らいあう姿は何とも羨ましい光景だ。筆者はクルマで来ていたため、泣く泣くジュースで乾杯!(帰りに地ビールの缶ビールを買って帰りました)

 閉会式では参加者へのインタビューも行われた。自己紹介を聞くと、中にはこの日が誕生日の方がいたり、豊橋から160kmの距離を自転車で来たつわものがいたり、とそれぞれのストーリーがまた興味深かった。

閉会式でのインタビュー。イベント当日が誕生日だったそうです閉会式でのインタビュー。イベント当日が誕生日でした!
ビールを片手に爽やかな笑顔でしたビールを片手に爽やかな笑顔でした
豊橋から来られた方豊橋から来られた方

 イベントは開始から終わりまで終始和やかで楽しく、そして笑いも尽きず、素晴らしい雰囲気の中、最後は参加者全員でバンザイ三唱をして終わった。

バンザイ三唱で閉会式が終了しましたバンザイ三唱で閉会式が終了しました

 残念ながら、このイベントは今年を持って終了するとアナウンスされている。元々は昨年、伊那市100周年とCycle倶楽部Rの結成20周年を記念して開催した1回限りのイベントだった。しかし、今年は究極超人あ~るの連載開始から28周年。主人公R・田中一郎(という名前のアンドロイド)の本名がR28号なのに掛けて、作品のファンや飯田線ファンなどの熱い要望に応える形で今年だけ復活されたのだ。

 筆者は来年もこのイベントに参加して、次こそは作品と同じように火山峠越えのコースを制覇してみたい! という野望を抱いていただけに、誠に残念である。

 いや、しかし…「究極超人あ~る」に登場する春風高校の光画部のノリならば、来年も勢いで開催してしまうかも知れない。きっと開催してくれると信じている。

 あぁ、田切駅よ、永遠なれ!


 

フォトギャラリー

 

地元のB級グルメ「ローメン」を満喫

伊那市名物のB級グルメ「ローメン」。美味しかったです伊那市名物のB級グルメ「ローメン」。美味しかったです

 イベントに参加した方々の中には、閉会式後に伊那市名物のB級グルメ「ローメン」を食べる方が多かったようだ。かくいう筆者も、閉会式会場近くの「ローメンうしお」で頂きました。美味しかったです!

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
CyclistポケットTシャツ

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載