ツール・ド・フランス2013 コースサイドレポート<下>地方の活性化を担うツール・ド・フランス 世界最高峰でありながら身近なレース

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 2013年ツール・ド・フランスの総観客数が発表された。その数なんと1500万人。前年の1200万人を大きく上回った。フランス国内放送でのテレビ観戦者も2230万人から2400万人に増加した。

 不況知らずのツール・ド・フランス。その人気は猛暑にも負けることなく邁進を続けている。

 今回は数字を交えながら、人気の秘訣とその内情、観客のバラエティの広さなどをリポートします。

 

山岳のカーブは1週間前から場所取り合戦

 まず観客の68%、約7割は男性。そしてフランス人は8割で、残る2割が外国人。およそ38か国から集まっている。観客が沿道で過ごす時間の平均は6時間50分だという。

 そして第17ステージのアルプ・デュエズでは、キャンピングカーの数だけでも1300台以上。3日前からキャンピングカーは通行禁止になるため、282台のみがそれに間に合うようにと山を登り、残りは麓の平地に留まったので、麓の国道脇は巨大なキャンプ場状態だ。

 山への沿道も、良いポジションを取りたい場合は1週間前から来なくては、ほとんどのカーブポジションは場所がなくなってしまう。

 「第4カーブを陣取るつもりで来たけれど、もう取られていて、仕方ないから第11カーブをとった。でもココも悪くないね」

 そんな風に微笑むベルギー人夫婦も、1週間前からここにいるという。

 車のナンバープレートを見てもベルギー、オランダ、チェコ、ノルウェー、イギリス、デンマーク、スペイン、ドイツ…と実に様々。それぞれ国旗を掲げ、食卓も広げて、のんびりと、そしてワクワクとツールのアルプ到来を待ちわびている。

 それでも、このように車でやって来て待機し、沿道で選手達が通過するその一瞬だけ観戦する人達は、自転車ファン…というよりは、この待機期間のまったりした時間やムードを楽しむ『バカンス(バケーション)派』だろう。

 

選手と同じルートを走り、その町や山の虜になる

 普段から自転車が大好きで、だからプロの走りも目の前で観たい!という自転車ファンや競技ファン達は、自らも自転車で来て、大会前日や当日の早朝に選手たちと同じルートを自分の脚で上る。

 その数の多いこと。これには本当に驚かされる。

 また、自力で登る人達には子供からお年寄りまでもいて、マウンテンバイクもいればタウン用の自転車までいる。もちろん、元は明らかに競技者だったな…という健脚も多く、つまり実に様々な自転車ファンを一同に、同じ路上で観られるわけで、これもある意味、圧巻だ。

 日本のTV観戦ファンにもおなじみの悪魔おじさんもいれば、コーナーごとに止まってはスプレーで路上にハートマークを描いている人もいる。

 このバラエティの広さこそがツール人気の強さ…なのかもしれない。

 エキスパートや自転車通にしか楽しめない大会ではない。誰が観ても楽しめる。誰もが“体感”までできてしまう。

 超過酷で困難な国際大会でありながら、自分でそのルートを走れば身近に感じられる。

 そうして1度、目の前で観たら、また次も来よう!と皆に思わせる。

 どの村でも町でも山でも、人々を魅了するために、ギリギリのラインまで道を開放。単なる観光客から本当の自転車競技ファンまで受け入れ、集め、そして結果的には、その村や町、山の虜にする。

 事故のリスクやオーガナイズの難しさから、なかなかしたくてもできない運営方法でありながら、それをやってのけているのが、ツール・ド・フランス。まことにあっぱれな大会だ。

 

観光客増加を“約束する”一大興行

 最後に、経済波及効果の具体的な数字を少々。ツールを通してフランス経済の一コマも覗いてみよう。

 フランスの経済誌「Economie Matin」によると、ASOの今年度の収益は約200億円。うちTV放映権による収益が最も大きく約32億円。また各地のスタートとゴールの市町村も拠出金をASOに支払っている。

 けれど、その支払いを上回るメリットが市町村にはある。例えば第16ステージのゴール地点となった町、ギャップは、ASOへの支払額が2000万円強であったのに対し、チームや関係者、観客らの来訪などで町全体が得た収益は当日だけでも4億円以上とされる。

 日刊紙「Le Figaro」は、ラルプ・デュエズの峠を2度上った第18ステージについて、観戦者を150万人と算出。経済効果は1日で26億円以上に達するとしている。

 「ツール・ド・フランスでスタートになった村や町は、その後、確実に10%は観光客が増える」と言われていて、つまりツールは今や単なる自転車競技大会にとどまらず、フランスの地域活性化、そして夏枯れを防いで“夏場の経済力アップ”を担う一大興行になっているのだ。

(文 祐天寺りえ・写真 戸井田夏子)

【お詫び】
記事を掲載した当初、経済波及効果の金額を大幅に少なく記載するなど誤りがあったため、修正しました。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

 

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