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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<21>ツール・ド・フランスを総括 本命の揺るぎない強さと新勢力の台頭

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 自転車ロードレースファンであれば、1年で最も熱狂するツール・ド・フランスが閉幕。今年のツールは、将来を見据えても楽しみが多く残るものとなりました。いま一度、ジロ・デ・イタリアに続く“勝手に総括”シリーズとして、今回のツールを振り返ってみたいと思います。


ツール・ド・フランス最終ステージ、プロトンがシャンゼリゼへ入ってきたツール・ド・フランス最終ステージ、プロトンがシャンゼリゼへ入ってきた

ポイントは異常気象? フルームのレース選択と上位陣の安定感

第20ステージで総合優勝がほぼ確定し、笑顔をみせるフルーム第20ステージで総合優勝がほぼ確定し、笑顔をみせるフルーム

 今年のツール総合成績は、クリストファー・フルーム(イギリス、スカイ プロサイクリング)が、総合2位のナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)に4分20秒差をつけ圧勝。終盤のアルプスでの第18ステージでハンガーノックに陥るピンチがあったこと、ツール全体のステージ構成などさまざまな要素はあるが、単純に見てもタイム差以上に現状での実力差はあるように思われる。

 近年のグランツールは、3週間の戦いに特化した調整が最重要視される。そこで、フルームの走りについて、圧倒的なレース運びはもとより、そのコンディション面に着目してみた。

(左から)総合2位のキンタナ、1位のフルーム、3位のロドリゲス(左から)総合2位のキンタナ、1位のフルーム、3位のロドリゲス

 今年のフルームは、ツールを含むステージレースで6戦5勝。そのほとんどが、気温の高い場所でのレースなのである。ツアー・オブ・オマーン、ティレーノ~アドリアティコ、クリテリウム・アンテルナシオナル、ツール・ド・ロマンディ、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ、そしてツール。アフリカ・ケニア出身で、寒さには強くないというのがもっぱらの評判。唯一敗れたティレーノも、冷雨のステージで調子を落としたのが要因だった。これまでのキャリアを見ても、天候に左右されるような場所でのレースにはあまり臨んでいないという実態もある。そういう意味では、シーズン序盤からのレース選択の妙が本番でのパフォーマンスの一因と考えて良いかもしれない。

 天候と言えば、今年のヨーロッパは稀に見る異常気象だったことも忘れてはならない。5月頃まで寒さが続き、雨の日が多かったのは、レースを追っている方なら印象に残っているだろう。たとえばジロの山岳ステージでは雪の影響が大きかった。

 その点から推察すると、ツールで年間の調子のピークに持っていきたい選手より、天候にかかわらず常にハイアベレージで走る選手の方が、今回は強さが発揮できたのかもしれない。総合2位のキンタナ、総合3位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ チーム)、総合6位のバウケ・モレマ(オランダ、ベルキン プロサイクリングチーム)、不本意な形で総合順位を落としたものの終盤奮起したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)などは“ハイアベレージライダー”と言えるだろう。

母国のファンに応援されながら上るロドリゲス(第20ステージ)母国のファンに応援されながら上るロドリゲス(第20ステージ)
第20ステージをゴールしたコンタドール第20ステージをゴールしたコンタドール

 一方で、アルベルト・コンタドール(スペイン、チーム サクソ・ティンコフ)は、いつもなら春先で収まるはずのアレルギーがツール直前まで長引き、ベストにはほど遠い形に。彼こそ、今年の気象条件に大きく影響された1人ではないだろうか。

 と、ここまで勝手に書いてきたが、これはあくまでも筆者の想像に過ぎない。実際とのギャップも大いにあるだろうが、レースの結果云々だけではなく、ちょっと違った側面からアプローチしてみた次第である。

新時代到来か 新しい力が大活躍したツール

 毎年新たなヒーローが生まれるツールだが、今年は特に若い選手の活躍が目立った。

最終ステージを制し、ステージ4勝目を挙げたキッテル最終ステージを制し、ステージ4勝目を挙げたキッテル
第20ステージを制したキンタナ第20ステージを制したキンタナ

 マルセル・キッテル(ドイツ、チーム アルゴス・シマノ)はスプリントでステージ4勝。文句なしのナンバー1スプリンターだ。25歳にして豊富な実績を持つが、これまではグランツール1勝で、3週間の完走経験はなし。しかし、このツールでは初完走だけでなくシャンゼリゼゴールまでも制した。

 ポイント賞のマイヨヴェールを獲得したペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリング)は、23歳にしてまるでベテランのような走り。ステージ勝利は1つにとどまったが、中間・ゴールと“ポイント貯金”を繰り返し、結果的に賞レース圧勝。第1ステージの激しい落車で狙いをポイント賞一本に切り替えたあたり、自分自身を客観的に見られるクレバーさもモノにできているようだ。

 総合系ライダーでも多数。フルームは今後数年にわたり頂点に君臨する選手となるだろうが、その彼が将来的なライバルとして名を挙げたのは、キンタナ、アンドルー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)、ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、オメガファルマ・クイックステップ)。タランスキーは総合10位、クフィアトコフスキーは総合11位。クフィアトコフスキーとは途中まで新人賞のマイヨブランを争い合い、スプリントに絡んだステージも。キンタナ、クフィアトコフスキーは23歳、タランスキーは11月に25歳になる。
 
総合上位陣では、ローマン・クロイツィゲル(チェコ、チーム サクソ・ティンコフ)とモレマが今年27歳。ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)が28歳。

 ステージ優勝者も、全21ステージ中17ステージで20歳代の選手が勝利。もちろん、リザルトだけですべてを計ることはできないが、それでもやはり豊作の年だったことは間違いないだろう。

今週の爆走ライダー-クリストファー・フルーム(イギリス、スカイ プロサイクリング)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

最終ステージでシャンパンを手にするフルーム最終ステージでシャンパンを手にするフルーム

 ケニアで生まれ、南アフリカでプロキャリアをスタートさせた“白いケニア人”。祖先のルーツであるイギリスに国籍を変更したのは2008年。

 チームの戦力外となる一歩手前で臨んだ2011年のブエルタ・ア・エスパーニャで潜在能力を発揮。総合2位になると、以降グランツールの主役となった。2012年のツールは、“総合優勝に限りなく近い”総合2位だったことは、誰もが感じたところだ。

 芽が出ない時期が長く、現チーム立ち上げ時にも期待値はそれほど高くなかったそう。それでも、スカイ プロサイクリング首脳の1人、ロッド・エリングワースはフルームの強さを見抜き、可能性を信じ続けていたという。

 山岳とタイムトライアルでの強さは説明するまでもないだろう。実のところ、本人は無名の頃から「山岳とタイムトライアルには絶対の自信がある」と述べていた。独特のライドフォームや、本能に任せているかのようなレース運びにはまだ粗さがあるが、それをも超越する爆発力が彼には備わっている。

 次なる目標は、9月の世界選手権。マイヨ・アルカンシエルを狙うと高らかに宣言した。この秋、ツールとは違ったフルームの強さに、我々は圧倒されるかもしれない。

第100回ツール・ド・フランスで総合優勝に輝いたフルーム第100回ツール・ド・フランスで総合優勝に輝いたフルーム

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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