ツール・ド・フランス2013 コースサイドレポート<上>ツールと共にゆくキャラバン隊 自転車レースを“お祭り”に変える

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 世界最大の自転車レースであり、世界最大級のスポーツイベントに数えられる「ツール・ド・フランス」。その沿道に集まる観客数は今や1200万人以上に及び、しかも毎年増え続けている。なぜそれほど多くの観衆を引き寄せるのか? 人々はそこで何を楽しんでいるのか? 様々な人が、思い思いにツールを楽しんでいる現地の様子を、2回に渡ってレポートします。

 現在、ツール・ド・フランスは世界中でテレビ放映されている。しかし、テレビで見られるほとんどの部分は『レース』に焦点が当てられているが、実際のところ、現地でのツールはレースというより巨大な『お祭り』だ。それも大人から子供まで、地元住民から外国人まで、そして自転車ファンから自転車など全く興味のない人まで…ありとあらゆる人々が集まる、華やかで楽しいお祭りなのだ。

自転車レースを“お祭り”に変える

 じつは観客の47%を占めているのが、『キャラバン隊がお目当て』という、開催地近辺の住民達である。キャラバン隊がばらまく様々な広告商品やサンプルを、沿道でキャッチするためにコースへやってくる。

 逆に言えば、観客の半数近くは、レースそのものにさほど興味のない人々なのかもしれない。それゆえ、「もしキャラバン隊がなければ、ツールの観客は自転車ファンのみになり、その数は半減するに違いない」とも言われている。

 このキャラバン隊こそがツールを支える大きな財源。『世界一豊かな自転車レース』の原動力になっている。

キャラバン隊の誕生

 キャラバン隊は、テレビでは放映されない。レースを走る選手たちがやってくる約1時間前に、沿道で待つ人達に向かって「もうすぐ選手たちが皆さんの前を通過しますよ~」と伝える前触れ。いわゆる宣伝カー・パレードだ。

 この仕組みは、ツールの生みの親で、アイデアマンとして知られたアンリ・デグランジュ(Henri Degrange 1865~1940)が生み出した。

 1903年のツール開始以来、自転車メーカー達は年々力をつけ、何かと大会運営にも口出しをしてくるようになっていた。それを苦々しく感じていたデグランジュは、それらメーカーの力を弱め、あくまでも「選手が主役のレース」にツールを仕切り直したいと思案した。

 それはやはり彼自身が元・自転車選手だったからに違いない。

 そしてついに1930年、デグランジュはツール・ド・フランスを国別のナショナルチーム制にし、「自転車はノーブランドの黄色に全て統一し支給する」という強行策に踏み切った。

 当然、自転車メーカー達は憤慨。協賛金を出さなくなり、大会は資金不足に陥った。しかしそんなことでメーカーに屈してはならぬ!

 その時、デグランジュの頭にふと浮かんだのが、チョコレート会社のムニエー(Menier)だった。

 ムニエーは数年前から、走者達が通った後を自社のロゴが大きく描かれた車両でたどり、それが観客の注目を浴びていた。「アレが使えるかもしれない…」と、アイデアマンの目が光った。

 そして、「どうせなら走者の後をたどるのではない。レース前に選手達を待ち受ける観戦客の目前をロゴ入り車両が走る。それを『広告効果抜群!』と謳い、多くのスポンサーを集めようではないか!」と思いついた。

 早速、ムニエー社に声をかけたところ、即座に返答があった。

 「ならば、ただ走るのではない。走りながらロゴつき紙帽子50万個。チョコレート数トン配り、更には峠でのココアのサービスもしましょう!」

 実に気前のいい対応が示されたのだ。

 他にも、靴のクリーナー会社リオン・ノワールが、車の上に製品の模型を搭載することを提案してきた。

 そうして、1930年の初年度はわずか8台のみながら、それでも観戦客の目と興味を十分にひき、新たな広告手法としてキャラバン隊は強い脚光を浴びた。

 華やかな上に商品の配布まで行う楽しい車のパレードは、それまで自転車レースなどに興味を示さなかった市民までをも、観客として沿道に集めるようになっていった。

キャラバン隊はツールと共に

 観客が集まれば広告会社も集まる。広告の車が増えれば、観客もさらに増える。完全なる相乗効果が生まれ、ナショナルチーム制が廃止された1968年以降もキャラバン隊は継続された。1977年にはその数107台、1979年には155台。2013年の今年は200台以上で、隊列は全長20kmに及び、配布物数は1600万個に至っている。

 なにより注目すべきは、その投資額だ。1社につき2000万円から5000万円。今年もまた2社増えた。企業数が増えれば、その分賑やかさも増し、観客数もまた増える。相乗効果は今なお加速し、それがツール繁栄の最大の秘訣にもなっている。

 キャラバン隊はまさに『金の卵を産む鶏』。今後もお金と観客を産み続けるに違いない。

(文 祐天寺りえ・写真 戸井田夏子)

 

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