田中苑子の「愛しのツール 今年も追っかけてます」<7>雨のアルプスでの熱狂 観客たちの変わらない情熱

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水着で応援する女性。寒くはないのだろうか? 残雪が残る山が寒々しい水着で応援する女性。寒くはないのだろうか? 残雪が残る山が寒々しい

 アルプスでの3週目を迎え、もう少しでパリのゴールとなるが、あと数日後にはすべてが終わっていると思っても、連日のレースがあまりにも厳しく、現実的にまだゴールが見えてこないのが素直な印象だ。

 アルプス3連戦の2日目となる第19ステージは、朝から灰色の雲が広がり、気温は15℃程度と肌寒かった。数日前まで、38℃といった酷暑の中にいただけに、その気温差や溜まった疲労から体調を崩す人も増えている。

雨のなか、ワインやビールを飲みながら盛り上がるファン雨のなか、ワインやビールを飲みながら盛り上がるファン


アルプスの山をいくつも乗り越える。雨が降らなくとも、標高が高く寒いアルプスの山をいくつも乗り越える。雨が降らなくとも、標高が高く寒い
メーン集団が、最初の峠の山頂に差し掛かるメーン集団が、最初の峠の山頂に差し掛かる
下りに向けて、防寒具や補給食を受け取る下りに向けて、防寒具や補給食を受け取る

 その寒さに拍車をかけるようにして、第19ステージ、最後の峠であるラ・クロワ・フリ峠では、激しい雨に見舞われた。車の温度計は13℃と表示したが、滝のようにして打ち付ける雨は、一気に体温を奪い、体感気温はまるで冬のようだった。

 そんな雨のなか、大勢の観客が峠には集まっていたが、麓から自転車で登って来た観客たちは、十分な雨具や防寒具もなく、ただ震えながら、選手たちの到着を待っていた。しかし、選手たちがやってくると、その雰囲気は一転。寒さを忘れて、大声で選手たちを応援し始めた。

 この悪条件下で、厳しい山岳ステージをこなす選手たちを、もちろん心から尊敬するが、どんな状況でも声援を送り続ける観客たちの情熱も素晴らしいものだと感じる。彼らに愛されているからこそ、ツール・ド・フランスは100回も続いてきた。ドーピングスキャンダルに揺れたとしても、そんなことが些細に思えてしまうような、歴史とともに培われた深い魅力がある。

激しい雨に見舞われたラ・クロワ・フリ峠。応援するファンも必死だ激しい雨に見舞われたラ・クロワ・フリ峠。応援するファンも必死だ
今年のツールで初めての本格的な雨。3週間のあいだにさまざまな天候を経験する今年のツールで初めての本格的な雨。3週間のあいだにさまざまな天候を経験する
激しい雨のなか、懸命にゴールをめざす激しい雨のなか、懸命にゴールをめざす
雨が降っても、観客たちの熱狂は変わらない雨が降っても、観客たちの熱狂は変わらない

 晴れたり、雨が降ったり、山があって、谷もある。そんなツール・ド・フランスは、よく「人生のようだ」と言われる。長い3週間のレースの中には、いろんな要素が詰まっていて、そのなかにいる選手たちは、喜んだり、泣いたりと、さまざまな感情とともに、ペダルを踏み続けて、ひたむきにパリを目指す。たくさんの見所を詰め込んだ100回目のツール・ド・フランスは、残酷なまでに厳しいが、あとアルプスでの1ステージを乗り越えれば、パリのシャンゼリゼ大通りが待っている。

(写真・文 田中苑子)

濡れた身体で下りに向かう。人間の限界を超えて走る選手たち濡れた身体で下りに向かう。人間の限界を超えて走る選手たち
雨のなかで声援を送る。観客たちはいつでもハッピーだ雨のなかで声援を送る。観客たちはいつでもハッピーだ
あと1ステージ、アルプスでの山岳ステージを終えれば、パリに向かうあと1ステージ、アルプスでの山岳ステージを終えれば、パリに向かう

田中苑子田中苑子(たなか そのこ)
1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。2008年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかなサイクルスポーツを追っかけ中。

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