高橋祥哲の「オーストラリアにハートを描け!」<2>こんどは盗難被害…それでもオーストラリアの温かい人々に支えられ、ちょんまげは走りだした!

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ハート GPSログによる自転車の走行ルートの軌跡で、オーストラリア大陸に大きなハートを描こう―。こんな壮大な自転車旅「バイシクル・ハート・チャレンジ2013」に今夏、サイクリストの高橋祥哲さん(33)が挑戦しました。このチャレンジのために髪型を“丁髷(ちょんまげ)”に結った高橋さん。スタートの街、メルボルンではいきなり寝袋をなくしてしまいました…。第2回は、寝袋を買い換えて出発! の前に、またトラブルが待っていました。


予定よりも長くメルボルンに滞在することになった予定よりも長くメルボルンに滞在することになった

 

メルボルンに延泊してショップ巡り

カーボンホイールや工具、ウエアやガーミンなどなど、かなり品揃えがいい「CECIL WALKER」。珍しい木のホイールや、プロ選手のサイン入りグッズも多数あったカーボンホイールや工具、ウエアやガーミンなどなど、かなり品揃えがいい「CECIL WALKER」。珍しい木のホイールや、プロ選手のサイン入りグッズも多数あった

 翌朝は7時に起床。歯磨きをして、丁髷をメンテナンスする。本当はこの日に出発予定だったが、なくしてしまった寝袋の替えと地図を買うため、1日だけ延泊することにした。

 さっそく徒歩で買い出しへと出掛け、まずは「RIDE CYCLE」と「CECIL WALKER」という品揃えの良い自転車店に向かった。チェーンオイルなどを調達して、雨が降る中、お店の屋根を伝い歩いて、寝袋が売っていそうなお店を探してまわった。

寝袋選びに付き合ってくれたアウトドアショップのマックスさん。親切でイケメン!寝袋選びに付き合ってくれたアウトドアショップのマックスさん。親切でイケメン!

 ようやくアウトドアショップを発見し、さっそく店内に入る。なんと、ここの店員のマックスさんは日本語を少し話すことができたのだ。僕は寝袋のことを教えてもらいつつ、彼に“日本語講座”を提供。そんなコミュニケーションのおかげで、セール品の安くて温かい寝袋を買うことができた。

 また、彼の情報によると、ルートの後半にあるオルベリー付近は山岳地帯で、雪山なのだとか…でも丁髷の予定コースなら、おそらく大丈夫とのこと。マックスさんに挨拶をして、お店を後にした。さぁ、次は地図を探さなくては。

 丁髷は電線を見るのが好きだ。街中の頭上に張り巡らされた路面電車の電線が美しい。美しいといえば、メルボルンは美人が多い(と僕は思う)。浮かれる丁髷。しかし、物価の高さが拙者を現実に連れ戻してくれる。メルボルンとはそういう街かな。

 その夜はメルボルン在住のモノノフさん(拙者と同じ、ももいろクローバーZファンの呼び方だ)と会って、マレーシア料理を楽しんだ。そして親切にも、まだ手に入っていなかった地図を彼に譲ってもらった。メルボルンに来ても熱いももクロトークができて、地図までもらって、本当に感謝だ。

路地裏では靴が中に浮いていた。映画などで見たことのある光景だ路地裏では靴が中に浮いていた。映画などで見たことのある光景だ
メルボルンの街では自転車が生活の一部で、街の景色にも交通にも溶け込んでいたメルボルンの街では自転車が生活の一部で、街の景色にも交通にも溶け込んでいた

 

トラブルはいつも突然に…

 次の日の朝。用意してきた中古のラップトップ・パソコンの初期化ができず、メルボルンで「TOKYO DELI」という和食店を営んでいるまた別のモノノフさんのところへ行き、Wi-Fiを借りることになった。お店までの距離は10kmくらいなので、自転車で行くことにする。

 自転車を置かせてもらっていたユースホステルのガレージにいくと、そこに僕の荷物が散乱していた。目を疑ったが、自転車に装着したままだった荷物が物色され、いろいろと盗まれていたのだ。気持ち悪い汗をかきながら確認していくと、幸いにしてキャンプ道具は残っていたけれど、防寒具や薬が無くなっていた。

 丁髷、再びの逆境。元々お金に余裕なんてないこのチャレンジ。寝袋を追加で買うことになってからすでに金欠だ。でも、どうにか前に進まなければ…。

メルボルンの和食屋「TOKYO DELI」。味噌カツ丼とコロッケカレーを食べて元気が出たメルボルンの和食屋「TOKYO DELI」。味噌カツ丼とコロッケカレーを食べて元気が出た

 とりあえずラップトップを直さなければと思い、秋で紅葉がきれいな街を空っぽな心で走り抜け、「TOKYO DELI」へ向かった。店内には日本のポップソングが流れていた。早速お店のWi-Fiを借りつつ、心、いや、お腹を満たすために味噌カツ丼を食べた。

 復旧作業中の丁髷は、ツイッターでもらったエールの数々を見て涙目だった。一つひとつのツイートが本当に力を与えてくれ、貧弱な丁髷のハートを支えてくれた。ランでもバイクでも、レース中の沿道からもらう「がんばれ!」の一言がどれほど選手の力になるか。この時、まさにそんな心境だった。

店内は飲食ができるだけでなく、お米や日本の調味料なども売っていた店内は飲食ができるだけでなく、お米や日本の調味料なども売っていた

 無事に作業が完了し、そろそろ帰ろうかという時、防寒装備を盗まれてしまった僕に、店長さんが使っていないというジャケットを用意してくれていた。もう感謝の気持でいっぱいになる。ありがたく頂戴して熱い握手を交わし、丁髷は夜のメルボルンへと走り出した。

 ライトアップされた教会や走る馬車を見ながら、決意を新たにする。スタート前にいろいろなことが起こりすぎたけれど、明日、ついにハートチャレンジが始まる。

メルボルンセントラルライブラリをスタート地点にした。不安を抱きつつ撮影したメルボルンセントラルライブラリをスタート地点にした。不安を抱きつつ撮影した

 

いざ、ハイウェイ55号で北上!

 出発の朝、チェックアウトの際に荷物を整理していたら、ロードバイク乗りのピーターに話しかけられた。あまり聞き取れなかったけれど、どうやら予定しているベンディゴまでのルートはフラットで走りやすいと教えてくれたようだ。

 スタート地点はメルボルンのセントラル駅近く。学生や観光客がたくさんいたが、その中で出発の記念撮影をし、景気付けにももクロの曲を聴くと、感極まって思わず涙腺が緩んだ。

車道の真ん中には路面電車が通り、路上駐車も交通量も多いが、古い街並が楽しめた車道の真ん中には路面電車が通り、路上駐車も交通量も多いが、古い街並が楽しめた

 最初の目印となるメルボルン空港を目指し、まずはハイウェイの55号を進む。この道は街から外れていることもあり、ややごちゃごちゃした印象。自転車レーンもあるが、駐車車両が重なっている。でも、道路沿いの古い教会や建物は、眺めるだけで楽しかった。

 途中でこの道は交通量とクルマのスピードが増したので危ないと判断し、下道を走ることにすると、しばらくして工事作業をしている男性5人組に呼び止められた。この上なくビビる丁髷。止まらなきゃよかったんだけど、5人が一気に話しかけてくる。

 

“ユーのストーリーはメイクマニー!”

 荷物に注意しつつ、このハート・チャレンジのこと、フロントバッグにつけているソーラーパネルのこと、キャンプのことなどを説明すると、「ユーのストーリーはメイクマニー! チャンネル7に電話するからステイしろ!」と言われた。おそらく、この珍しい丁髷ジャパニーズでちょっとお金を稼げるぞ、と盛り上がっているようだ。丁髷も旅の資金の足しになるならお金は欲しいし、5人組にお金が入るのも別にかまわないぞ。

まだ内心不安な丁髷だけど、にこやかにサムたちと写真に収まったまだ内心不安な丁髷だけど、にこやかにサムたちと写真に収まった

 最終的にどういう話になったのか、実のところよく分からないけれど、とりあえずサムという男に電話番号をもらい、「あとで連絡してくれ、約束だぜブラザー!」と言われた。ブラザーって、本当に言うんだ…。

 サム達からも旅の情報を聞けた。どうやら、ウォガウォガという旅の後半に通る街は相当ヤバいらしい。「絶対に飲み物は受け取るな、ドラッグが入ってるぞ!」「自転車は停めるな! 絶対に、だ。止まったら殴られて荷物盗まれるぞ!」という具合。丁髷、泣きたくなる。

メルボルンの中心部から55号線を通り、北上。見る景色すべてが新鮮メルボルンの中心部から55号線を通り、北上。見る景色すべてが新鮮

 サムたちと別れ、メルボルン空港を目指して再びペダルを踏む。フリーウェイ横にあるサイクリングロードを走ったが、ここは本当に気持ちが良かった。またハイウェイに入ると、羊はいるし、カンガルーの標識も出てきて、オーストラリアらしい景色になってきた。でも、突然現れる10%越えの坂に、重量級バイクを操縦する丁髷は脚を削られる。

 「なぁ、ピーター。ベンディゴまではフラットって言ったじゃないか…」

(続く)  

のどかな羊たちのいる景色。段々と日が暮れてきたけど、今日の宿はどうしようのどかな羊たちのいる景色。段々と日が暮れてきたけど、今日の宿はどうしよう

高橋祥哲高橋祥哲(タカハシヨシノリ)
1980年生まれ。姉2人、弟1人の4人兄弟で育つ。趣味は自転車ジャージのデザインで、コンテストでのグランプリ受賞経験もある。サイクリストとしては、2012年8月に自宅(川崎)から青森県の龍飛崎まで1150kmを走破。また「チームイナリ」として、ホビーレースやエンデューロを仲間と楽しんでいる。好きなアーティストはももいろクローバーZ。このチャレンジに際して、髪を丁髷に。

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