山口和幸の「ツールに乾杯! 2013」<4>荘厳な世界遺産をゴールにしてしまうツール・ド・フランス それぞれの目標へ選手たちは走り続ける

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ツール・ド・フランス2013 コースマップ  ©A.S.O.

 「今年の主催者はホントにイジワルだ」という言葉を選手から聞く。第6ステージで“魔の山”と呼ばれるフランス南部の難関山岳、モンバントゥーが見えるところまで接近しながら、その後にスペイン国境近くを訪れ、一気に700km北上して英仏海峡へ(イマココ)。その後は六角形のフランス国土を斜めに突っ切って再びモンバントゥーを目指すのだ。

 「勝負どころはアルプスにある2つの頂上ゴール。フルームにとっては絶対的に有利で、いくらそれまでに山岳ポイントを稼いでもたった2日で逆転が可能。もしかしたら2つのジャージを獲得することも」

 これは8日の休息日に新城幸也が語った言葉。ちなみにフルームの強さを問うと、「いや、見てないから分からない。ボクはそのころ、後ろでヒラヒラしているから」と笑い飛ばしたが、それはそれで納得の解釈だ。総合上位進出を目指していない新城にとって、エースをしっかりとアシストするとともに、ターゲットとするのは起死回生のアタックによるステージ勝利だ。

 ツール・ド・フランス出場198選手にはそれぞれの目標があり、それにチャレンジしながらパリ・シャンゼリゼに向けて走り続ける。

 選手や関係者を振り回す第100回記念大会は、第10ステージで海賊の町サンマロへ。第11ステージで世界遺産のモンサンミッシェルにゴールした。過去にもモンサンミッシェルにゴールしたことはあるが、今年は個人タイムトライアルのゴールだった。選手は本土側から砂州を渡り、島の入口で180度のUターンをしてゴールする。つまり荘厳な修道院を背景にしてゴールするという演出だ。

 かつてモンサンミッシェルから50kmほど離れた町をツール・ド・フランスが訪れたとき、日本人取材陣およそ10人でゴール後に観光に行った。駐車場に到着して驚いたことに大会関係車両がズラリと駐まっていた。そんなに近いわけじゃないのにみんなここを観光したいのだ。

 ちなみに干潮と満潮の海面の高さは15mの差がある。いくつかの駐車場は時間限定で、利用時に「午後6時までに帰れよ」と念を押される。つまりその場所は午後6時を過ぎると海面下になり、クルマが置かれていたらプカプカと波間に漂っているというわけ。

 ゴールの大規模施設や中継車のゾーンテクニック、シャピトーと呼ばれるサルドプレスの大型テントはすべて内陸側に設営された。世界遺産にゴールしてしまうツール・ド・フランス。その歴史は崇高で、世界中の人から一目置かれる大会なんだろうね。

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)
ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

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