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つれづれイタリア~ノ<5>因縁のライバル! ツール・ド・フランスとジロ・ディタリアの終わりなき戦い

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2001年のジロでマルコ・パンターニにインタビューするアウロ・ブルバレッリ(右)。RAI(イタリア放送協会)の名物キャスターだ2001年のジロでマルコ・パンターニにインタビューするアウロ・ブルバレッリ(右)。RAI(イタリア放送協会)の名物キャスターだ

 6月27日、テレビ画面からツール・ド・フランスのチームプレゼンテーションの映像が流れていました。

 「フランスのテレビ局は、よくも昨年のつまらないツールを面白く編集できたね」

 この強烈なコメントは、イタリア国営テレビの有名なスポーツコメンテーター、アウロ・ブルバレッリが、ツールのプロモーションビデオが流れた後に放ちました。日本ではきっと物議を醸す発言ですが、イタリアでは誰もがきっとクスクスと笑ったでしょう。実は、このコメントの裏には、イタリア人とフランス人の大きな競争意識があるからです。

 国土の面積はほぼ一緒、ラテン系の文化、長い歴史、強い影響力、そしてファッションとアモーレを恋する国民たち。何を隠そう、似ているところが多いからこそ競争意識が強いのです。

 今日はイタリア人とフランス人が互いに触れてはいけない、そして決して譲らないポイントを紹介します。イタリア人の優越感に対し、フランス人がどのように反論するかも解き明かしましょう。

「イタリア万歳!」とばかりに、ツールの現場でイタリア国旗をアピールするマリオ・チポッリーニさん「イタリア万歳!」とばかりに、ツールの現場でイタリア国旗をアピールするマリオ・チポッリーニさん

どちらが上?

 「イタリア人とフランス人、どちらが上?」とイタリア人に訪ねたら、100%が「もちろん、イタリア人だよ」と迷う事なく答えるでしょう。その背景には、長い歴史があります。

■古代ローマ時代

 古代ローマ時代に、ケルト民族が住んでいたフランス地方にはローマ軍が進軍し、全地域を支配しました。その結果、イタリア人から見ると、フランスはイタリアのおかげで文明を覚えました。

<フランス人の反撃>
フランス人はそれを逆手にとって、「アステリックス」というマンガを作りました。このマンガはルネ・ゴシニ(作)とアルベール・ウデルゾ(画)によって生み出されたフランスコミックのシリーズで、古代ローマ時代のフランスが舞台。平和に暮らしていたケルト民族がいかにもいい人で、襲ってきたローマ人はいかにもおかしな人たちだとユーモラスに描いた作品です。皮肉にも、コミック担当だったウデルゾ氏はイタリア移民の息子でした。

■フランスの文化はイタリアのおかげだ!

 ルネッサンス時代には、メディチ家出身の女王が2人も誕生しました。この2人の女王はフランスの宮廷に、フィレンツェで花咲いたルネッサンスの文化を持ちこみ、フランスの文化がここから栄えました。

<フランス人の反撃>
カテリーナ・デ・メディチはとんでもない残酷な人で、彼女が君臨した時代に多くの宗教紛争が勃発し、3万人以上の市民が犠牲となりました。

■ナポレオンもイタリア人!
ナポレオンもコルシカ島出身でしたので、つまりイタリア人! そして前フランス大統領ニコラ・サルコジの奥さん、カルラ・ブルーニもイタリア人。「イタリア人がいなければ、フランスという国が存在しない!」と考える人もいます。

<フランス人の反撃>
ナポレオンはイタリア半島に進軍し、ヴェネツィア共和国を滅ぼしただけでなく、イタリアに近代化の波をもたらしました。さらに、カルラ・ブルーニはフランスでモデルと歌手になりました。フランスがなければ、彼女はきっと活躍できなかっただろう!

■フランス料理はイタリアのおかげ!
フランス料理は15世紀に大きく変わりました。先ほど紹介したカテリーナ・デ・メディチはアンリ2世の妻になるため、渡仏しました。そして貧しかったフランス宮廷の料理を前にして、フィレンツェからトップシェフとパティシエを呼び寄せ、フランス料理に変革をもたらしたのです。彼女のおかげで、フランス人はフォークを使うようになり、生でサラダも食べるようになりました。フランス定番の料理(クレープ、ホワイトソース、オニオンスープなど)は、みんなイタリア生まれの食べ物だとイタリア人は言います。

<フランス人の反撃>
そんな経緯について、フランス人は確かに否定はしません。しかしフランス人はコースという概念をもたらしました。現在のレストランの基本の「き」はフランス生まれのものです。

 

ジロとツールの終わりなき戦い

 ジロとツールの話になると、イタリア人は急にヒートアップします。

 昨年、イタリア国内で行われた「ジロとツール、どちらが面白い?」というアンケート調査に対し、72%の投票者は「ジロ!」と答えました。(bicisport調べ)

投票者:計2001人 (bicisport調べ)
Giro d’Italia: 72% (1432票)
Tour de France: 28% (569票)

ジロ・デ・イタリアは、時に雪の山岳ステージもジロ・デ・イタリアは、時に雪の山岳ステージも
真夏のツール・ド・フランス。向日葵の写真は定番真夏のツール・ド・フランス。向日葵の写真は定番

 「ツールはつまらない」「落車が多すぎ」「ジロのほうが面白い」「ジロのほうがきつい!」「本当のレースだ」と訴えるイタリア人が大半です。

 2010年には、イタリア人をもっと興奮させるアンケート結果が発表されました。英国発の著名なウエブサイト「cyclingnews.com」が実施した調査で、「2010年においてもっとも美しい、もっともドキドキしたレース」にジロが選ばれたのです!

投票者:計16.787人 (cyclingnews.com調べ)
Giro d’Italia: 42,1% (7071票)
Tour de France: 41,9% (7028票)

2010年のジロ最終日はヴェローナでの個人TT。マリアローザを着たイヴァン・バッソが、大観衆の競技場にゴールする、最高のフィナーレ2010年のジロ最終日はヴェローナでの個人TT。マリアローザを着たイヴァン・バッソが、大観衆の競技場にゴールする、最高のフィナーレ

 しかし、アンケートが始まってから10年。ジロ2010年の1回しか首位を奪えず、2011年にまたツールの前で頭を下げることになりました。やはり、イタリアはツールのメディア戦略の圧倒的な強さに対し、歯が立たないということですね。

 さて、ツールが始まったばかりですが、永遠のライバルに敬意を払って、観戦しましょう!

2011 Best Stage Race: (cyclingnews.com調べ)
1 Tour de France 64.9%
2 Giro d’Italia 15.6%
3 Vuelta a España 5.5%
4 Amgen Tour of California 5.3%
5 USA Pro Cycling Challenge 4.7%

2012 Best Stage Race: (cyclingnews.com調べ)
1 Tour de France 33.24%
2 Giro d’Italia 27.75%
3 Vuelta a España 23.14%
4 Amgen Tour of California 6.45%
5 USA Pro Cycling Challenge 6.27%

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)
イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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