山口和幸の「ツールに乾杯! 2013」<2>フランス人をワクワクさせる「ル・ジャポネー、ユキヤ・アハシオ」 ツール勝利への苦悩

  • 一覧

 あー、書き直しだ。前日のニースで2回目のコラムを仕上げておいたが、マルセイユにゴールする第5ステージで日本のナショナルチャンピオンジャージを着用する新城幸也がアタックした!

 ボクがこれを知ったのは迂回路の高速道路をクルマで走っているときに聞いていたラジオだった。とにかくゴールに急ぐしかない。マルセイユのゴール地点は競馬場のわきで、サルドプレスと呼ばれるプレスセンターは競馬場に隣接する施設内にある。指示された駐車場から馬場の外周を半周ほど機材を担ぎながら歩き、ようやくサルドプレスへ。ゴール地点へはさらに3分の1周ほどある。

 サルドプレスに設置されたモニターテレビはフランスの一般家庭と同じ映像が流されているのだが、まだレースの前半戦とあって前座の音楽ショーなんてやっている。つまりこの時点でつかめる情報はWifiをつないでインターネットで得るもののみ。これでは日本にいるファンとおんなじだよね。

 テレビで実況が始まったのはおそらく日本のJ SPORTSの放送開始と同じ時刻。すぐに先頭の6選手の中に、ほぼ純白のジャージを身にまとった新城の姿を発見した。残念ながらサルドプレスで盛り上がっているのはボクだけで、他の取材陣は淡々と仕事をしている。おそらくスタート地点で取材した内容をメモとしてパソコンに打ち込んでいるか、今日のレースレポートの下準備をしているのだろう。

 それでもテレビやラジオ、公式サイトのテキストライブ、さらにはラジオツールと呼ばれるレース無線はどちらかというと新城びいきで、常に「ル・ジャポネー、ユキヤ・アハシオ(フランス語風にね)」と紹介してくれる。関係者も小柄な日本選手の健闘にかなりのワクワク感を持っている証拠だ。

 前日までの総合成績で3分42秒遅れの新城はこの集団の中で最も上位にいて、レース中盤で後続のメイン集団にそれ以上の差をつけた瞬間にバーチャルマイヨジョーヌとなった。つまりこのままの状況でゴールすれば新城が総合1位に立つという意味だ。もちろん99%の確率で数にものを言わせたメイン集団はゴールまでに追いつくはずだが、日本人がここまでやる時代になったのだと思うと身震いする。

 さて残り40kmでいても立ってもいられなくなったボクはゴール地点の記者が立てるポジション「エスパスプレス」で最後の一部始終を目撃。日本期待の新城だったが残り8.5kmほどでメイン集団に吸収され、あとは淡々とゴールを目指した。

 ゴール直後の新城を捕まえた。

 「なかなかうまくいきませんね。(チームメートがいたので)もっとやり方はあったと思うが、難しかった。なにがよくてなにが足りなかったのかまだ答えが見つからない。次のチャンスをねらっていきます」

 悔しさを押し殺した表情には、ツール・ド・フランスで勝つことの難しさに苦悩する思いが見て取れる。「日本選手がここまでやれる」という評価は新城幸也には通じない。目標はツール・ド・フランスで勝つこと。そのためには再びアタックするしかない!

レース前、ウォーミングアップを行なう新城幸也レース前、ウォーミングアップを行なう新城幸也
第4ステージ・チームタイムトライアルのスタート風景第4ステージ・チームタイムトライアルのスタート風景

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)
ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2013 山口和幸の「ツールに乾杯!」

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載