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山田美緒の「旅する満点バイク」<13>ひょんなことから「日本×エリトリア親善サイクリング」へ 誇りと自信に満ちあふれた現地サイクリストとライド

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 「すばらしい! わが国でもレースに出てくれ!」

 駐日エリトリア大使と出会ったのは、社会人1年目。毎週末に欠かさずかよっていた東京・神楽坂のアフリカンバー「トライブス」(現在は新宿区荒木町に移転、7月12日に再オープン)で、私のアフリカ縦断の話にいたく感動した大使から、自転車レース出場のオファーをいただきました。

エリトリアの女子サイクリスト、(左から)ラティン、サナイット、ヘレンエリトリアの女子サイクリスト、(左から)ラティン、サナイット、ヘレン
エリトリアの首都アスマラの町並みエリトリアの首都アスマラの町並み

 エリトリアはアフリカの自転車大国で、週末になるとレースが開催され、ヨーロッパのプロロードレースチームで活躍する選手もいるということでした(※)。大使は、自国の自転車事情について語り、さらには私にもレースに出てほしいと言います。

エリトリアのまっすぐに伸びる道、山あいの起伏に富んだ道をトレーニング走行するサイクリストたちエリトリアのまっすぐに伸びる道、山あいの起伏に富んだ道をトレーニング走行するサイクリストたち

※2013年現在、ダニエル・テクレハイマノット(オリカ・グリーンエッジ)やナトナエル・テウェルドメドヒン・ベルハネ(チーム ヨーロッパカー)らプロ選手のほか、南アフリカにあるUCIのトレーニング施設「UCIコンチネンタルセンター」に所属するクダス・メルハウィといった若手が伸びている。

 お酒の席だったということもあり、「OK、OK。いつでも行きますよ!」と気軽に返事。きっと大使も覚えていないだろう…と思っていたところ、翌朝会社でパソコンを開いてびっくり。件名が「Bicycle Ambassador」とされたメールとともに、前夜に話したことについての正式な依頼が届いたのです。

 せっかくの依頼だけれど、私は速く走れないしさすがにレースには出られない…親善サイクリングではどうだろう? 大使に提案をしたところ話が進み、2007年に「日本×エリトリア親善サイクリング」を行うことになりました。

「2時間で3つの季節が体験できる」といわれる道「2時間で3つの季節が体験できる」といわれる道

 エリトリア滞在は1週間。日本からは、自転車仲間や大学の先輩、合わせて7人が参加をしてくれました。エリトリアでは、現役プロサイクリストたちが一緒に走ってくれました。スラリと伸びた引き締まった手脚、きゅっと小さな顔にお尻! 皆10代~20代の若者で、どこかあどけなさが残りますが自転車で駆ける姿は誇りと自信に満ちあふれていました。

 親善サイクリング初日、首都アスマラから約100kmを走りマッサワという港町へ向かいました。このルートは「2時間で3つの季節が体験できる」と言われるとおり、海抜2300mの澄んだ空気のアスマラから下るにつれて空気がどんどんと変化し、海抜0mのマッサワにつくころには空気は蒸して汗だく。

親善サイクリングに参加したエリトリアのサイクリストたち親善サイクリングに参加したエリトリアのサイクリストたち
見通しのいい直線の下りではかなりのスピードが出る見通しのいい直線の下りではかなりのスピードが出る

 ひいひい言っている日本人をよそに、さわやかな笑顔のエリトリアサイクリストたち。どうやらここは走りなれたトレーニングコースのようです。ここを毎日往復するなんて、どんな心臓と脚をしているのだろう!? 彼らの強さの秘密がそこにあるような気がしました。

トタンでできたレストランで休憩。エリトリアで食べたものトタンでできたレストランで休憩。エリトリアで食べたもの

 夕食にはインジェラという発酵したクレープのようなものを主食に辛いシチューを食べ、よく冷えた地ビール「アスマラビール」で乾杯!

 共に過ごした中でサイクリストたち、とりわけ女子選手たちとはたくさん話をしました。エリトリアでの生活のこと、日本のこと、ボーイフレンドのこと、将来のこと…。

 「いつか私たちも日本を走ってみたいな」

 女子選手たちのこの言葉に、衝撃を受けました。自転車に青春をかけて夢を追い、国のスター、さらには希望でもある彼らが、日本に来たいと思っているなんて。私は自転車に乗ってアフリカや他の国々を旅し、縁あってエリトリアを走ることになりました。自転車が私の世界、可能性を広げてくれたと言えます。同じように自転車に乗っている彼らの世界と可能性は?

エリトリアの女子自転車選手とエリトリアの女子自転車選手と

 自転車で日本を走る、そのことが夢なのだとしたら、同じ自転車乗りとしてそれを叶えられたら素敵じゃないか!「任せて、私が呼ぶよ!」――そう約束をしてエリトリアを後にしました。

 エリトリアとの交流はその後も続き、2008年にも2度目の親善サイクリングを行いました。報告会やイベントなどで、親善サイクリングの様子を伝える場面もありました。そして2012年には、念願のエリトリアサイクリストの日本招聘を実現。4人のエリトリアサイクリストが「四国ディスカバリーライド」に参加をしました。「日本に来られたことを誇りに思う」と言って空港から帰国していった彼らの素敵な笑顔が印象に残っています。

文・イラスト・写真 山田美緒

山田美緒山田美緒(やまだ・みお)
大阪府生まれ。サイクリストとして世界中を旅してきたほか、一般社団法人コグウェイを設立し、「四国ディスカバリーライド」などを主催。著書に、アフリカ大陸縦断記をまとめた『マンゴーと丸坊主』、女性サイクリストたちとの旅や交流の体験記『満点バイク』がある。ブログURL(http://mantem.exblog.jp/)

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