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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<18>フランス一周の旅が幕開け 人間味あふれる選手たちの姿を追う、ツール観戦の極意

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 “Bienvenue en France!(ようこそフランスへ!)” 待ちに待ったツール・ド・フランスが開幕しました! 毎年この時期がやってくると、日本にいるのに何だかフランスの人たちの出迎えを受けた気分でワクワクしてきます。そして初日から期待をはるかに超える熱いレース展開…。やっぱりツールは違う! 妙に舞い上がっている筆者ではありますが、今回もよろしくお付き合いください。

他のレースとは異なる、“ツールの歩き方”

 コルシカ島での3ステージを経て、戦いの舞台はいよいよフランス本土へ。それにしても、コルシカ島は初のツール上陸ながら、ネタに事欠かない3日間だった。落車、ハプニング、感動の勝利…1つ1つのドラマが濃密だ。観る側にはもちろんだが、選手、関係者、すべての人にとってツールは特別なレースだと再認識させられる。

透きとおった海が美しいコルシカ島の海岸沿いを走るプロトン(6月29日)透きとおった海が美しいコルシカ島の海岸沿いを走るプロトン(6月29日)
第1ステージではタイムがニュートラル扱いになるほどの大落車が起こった(6月29日)第1ステージではタイムがニュートラル扱いになるほどの大落車が起こった(6月29日)
怪我を負いながらも「ボクは走り続ける」と話すトーマス(6月29日)怪我を負いながらも「ボクは走り続ける」と話すトーマス(6月29日)

 よく、「サイクルロードレースは人生に例えられる」と言われるが、ツールほど人間味溢れるレースはないだろう。選手たちの異常なまでの執念が伝わってくる。勝ち負けもそうだが、パリ・シャンゼリゼへの到達が選手たちにとっては壮大なテーマなのだ。

 通常のレースであれば、チームオーダーを果たせばアシストマンはそこでレースを終えられる。ステージレースであれば、最終ステージを完走せずに終えることだってある。

 しかし、ツールに臨む選手たちは“フランス一周”を実現させようとする。たとえそれが1位であろうと、最下位であろうと。特に今回は第1ステージでの大落車で、早々にフィジカルに苦しむ選手が出ているのも関係しているのだろう。骨盤を骨折しながら走り続けるゲラント・トーマス(イギリス、スカイ プロサイクリング)の言葉がすべてだ。「母はもう走らないでと言っているけれど、ボクは走り続ける。ツールは並のレースではないのだから」。

 また、選手たちにとっては「就職活動」、チームにとっては新スポンサー獲得のための格好のアピールの場でもある。ツールに臨む選手はチームの1軍選手であることは確かなのだが、だからといって来シーズン以降の契約が確約されているわけではない。場合によっては逃げを打ち、チャンスがあれば勝ちを狙いにいく。ステージを1勝でも挙げられれば、一生の名誉だとも言われる。勝利1つの価値が、ほかとは違うのもツールならでは。

頻繁にアタックを試みるヴァカンソレイユ・DCM(6月30日)頻繁にアタックを試みるヴァカンソレイユ・DCM(6月30日)
キッテルが優勝した第1ステージでスプリント3着に食い込んだファンポッペル(6月29日)キッテルが優勝した第1ステージでスプリント3着に食い込んだファンポッペル(6月29日)

 既にスポンサー撤退や来シーズン以降の新体制での運営が発表されているチームにとっては、新スポンサーの獲得は至上命題。特に、メイン・セカンドともにビッグスポンサーが撤退することになっているヴァカンソレイユ・DCMは、毎日逃げに選手を送り、ゴールスプリントにも絡む。今大会最年少・19歳のダニー・ファンポッペル(オランダ)の活躍などが報われる日がやってくるのを祈りたい。

 最後に、ごくごく個人的なことになるが、毎ステージ、レースメモを作成している。このツールではレースレポートを書かせてもらっていることもあり、担当ステージに限らずメモすることで、開幕からの一連の流れが押さえられるのではないかと思ってのことだ。

ツール第5~10ステージの展望

 フランス本土へと舞台を移し、中盤戦に向かうステージをチェックしてみたい。

 第5ステージ(228.5km)は、プロヴァンス地方に向かって細かいアップダウンを繰り返す。登坂力のあるスプリンターであれば問題はなさそうだが、ゴール前12.5kmに現れるジネスト峠がポイント。カテゴリーこそ付かないが、4級山岳レベルの難易度はあるだろう。地中海沿いならではの風「ミストラル」が吹くと、荒れたレースになるかもしれない。

 第6ステージ(176.5km)、第7ステージ(205.5km)はスプリントステージ。この2日間も強い風に注意が必要。また、第7ステージでは中盤に2級山岳のクロワ・ド・ムニス峠が控えるが、ゴールまでの距離を考えるとスプリンターには問題なさそう。総合勢にとっては、来るピレネーステージに向けて無難に終わらせておきたい。

第8ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第8ステージ コースプロフィール ©A.S.O.
第9ステージ コースプロフィール ©A.S.O.第9ステージ コースプロフィール ©A.S.O.

 いよいよ第8ステージ(195km)からピレネーへと突入。平坦路を進み、119.5km地点の中間スプリントポイントを起点に登坂が始まる。多くのヘアピンカーブと10%前後の上りが続く超級・パイエール峠で最初の絞り込み。一度下って、1級山岳アクス・トロワ・ドメーヌの頂上を目指す。ここで仮に総合有力勢が大差なくゴールしたとしても、どのチームが主導権を握るかで今後の展開が見えてくることになるだろう。

 第9ステージ(168.5km)は、ダウンヒラーが主役になるか。2級1つ、1級4つのカテゴリー山岳が立て続けに登場。最後の1級山岳ラ・ウルケット・ダンシザンからバニエール・ド・ビゴールのゴールまでの30kmは、有力選手たちのハイスピードダウンヒルが見られるはず。

 1回目の休息日を経て、舞台は北西部・ブルターニュへ。完全フラットの第10ステージ(197km)は、ナポレオンが設立したサン・シール陸軍士官学校前を通過し、イギリス海峡に面したサン・マロへ。多くのバカンス客がプロトンを迎えることになる。


今週の爆走ライダー: ヤン・バークランツ(ベルギー、レディオシャック・レオパード・トレック)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

第2ステージで逃げ切り優勝を決め、頭を抱えながら喜ぶバークランツ(6月30日)第2ステージで逃げ切り優勝を決め、頭を抱えながら喜ぶバークランツ(6月30日)

 計算は得意なはずなのに、いつも答えが合わない…これまでのプロ人生は、そんな気分だったに違いない。

 しかし、ついに複雑な計算がピタリと合った。ツール第2ステージ、ゴールまで1.8kmの最終局面。一緒に逃げてきたグループからわずかに先行した瞬間、あとはゴールまで突き進むだけだった。そして、迫り来る大集団に対し1秒差の劇的ゴール。ステージ優勝とともに、マイヨジョーヌまで獲得した。

 トレーニングパートナーのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)は自分のことのように喜び、チームメートのマキシム・モンフォール(ベルギー)は「不可能だと誰もが思うことを実現させてしまった」と驚きを隠さなかった。

 2008年、若手の登竜門とされるツール・ド・ラブニールで総合優勝。リエージュ~バストーニュ~リエージュ・エスポワールでも勝利。その圧倒的な強さから、鳴り物入りでプロへ。しかし、落車負傷が多く、思うように走れないこともあったという。とはいえ、毎年グランツールでは総合20位前後のリザルトを残しており、オールラウンダーとしての将来性は高い。

 ベルギーの最高学府とも言われる、ルーヴェン・カトリック大学でバイオ工学を学んだというインテリな一面もあるバークランツ。前途洋々と言われたライダーとしてのキャリアは、いよいよ花開くときがやってきたようだ。

バークランツ、笑顔の第2ステージ表彰台(6月30日)バークランツ、笑顔の第2ステージ表彰台(6月30日)

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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