全日本自転車選手権大会ロードレース エリート詳報史上最難関コースで決した男女の新王者 新城幸也と與那嶺恵理が力勝負を圧倒

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 大分県で23日開催された全日本自転車選手権大会ロードレースでは、男子エリートで新城幸也(チーム ヨーロッパカー)が2007年以来6年ぶり2度目の優勝、女子エリートでは與那嶺恵理(チーム・フォルツァ!)が初優勝を飾った。男女のレース展開を振り返る。(米山一輝)

安どの表情がこぼれる。「毎年毎年勝ちたくて、やっと6年越しに勝ててほっとした」安どの表情がこぼれる。「毎年毎年勝ちたくて、やっと6年越しに勝ててほっとした」
雨のスタート前。スタンバイする土井雪広に傘を差す片山右京チームUKYO監督雨のスタート前。スタンバイする土井雪広に傘を差す片山右京チームUKYO監督
春先に体調を崩したという増田成幸(キャノンデール プロサイクリング)は久々のレース。コンディションはまだベストからは遠いという春先に体調を崩したという増田成幸(キャノンデール プロサイクリング)は久々のレース
強行スケジュールでの帰国出場となった新城幸也(チーム ヨーロッパカー)。まだ時差ボケが残る中の出走強行スケジュールでの帰国出場となった新城幸也(チーム ヨーロッパカー)。まだ時差ボケが残る中の出走

 

厳しいコースと悪天候でトラブル続出

雨と霧の中でのスタート雨と霧の中でのスタート

 男子エリートは15.0kmの周回コースを12周する、180kmのレース。激しい上り下りのコースで、レース全体での獲得標高は6000mにも及ぶ。“本当に強い者が勝つ”コースだ。天気予報に反して朝から雨模様、濃霧に包まれた中のスタートとなった。

 危険回避のため1周目の下り終わりまではニュートラルが敷かれたが、この時点で落車やパンクなどのトラブルが頻発し、実スタートは予定よりも遅れた。佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ・セッレイタリア)はトラブルか、早くも回収車に乗ってリタイアとなった。

1周目、上り区間を走る逃げグループ1周目、上り区間を走る逃げグループ
逃げの先頭は西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)逃げの先頭は西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)
メーン集団は30秒弱の差で追うメーン集団は30秒弱の差で追う

 上り口から実スタートが切られ、すぐに集団はハイペースでの攻防となる。上りで7人の逃げグループが形成され、西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、内間康平、中根英登(ともにチームNIPPO・デローザ)、窪木一茂(和歌山県)ら有力選手も数人この中に入る。2周目に入ってからこれを新城が追走。上り区間までに数人が半周をかけて追い付き、再構成された逃げは8人となった。

4周目終盤の逃げ集団4周目終盤の逃げ集団

 最初から逃げていた西谷、内間、中根、窪木、吉岡直哉(京都産業大学)に加え、新城、ディフェンディングチャンピオンの土井雪広(チームUKYO)、中島康晴(愛三工業レーシングチーム)からなる逃げ。

 一方メーン集団は、新城ら下りでの追走に乗れず遅れを取った清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)が、アシスト選手を全員集団先頭に集結させて前を追う。清水のすぐ後ろには増田成幸(キャノンデール プロサイクリング)が付け、その後ろにも有力選手が連なった。

4周目に入るメーン集団。アンカー勢が終始先頭を牽引する4周目に入るメーン集団。アンカー勢が終始先頭を牽引する
アンカーのエースは清水都貴。その直後を増田がキープ。その後ろにも有力選手たちが並ぶアンカーのエースは清水都貴。その直後を増田がキープ。その後ろにも有力選手たちが並ぶ

 このままレース前半しばらくは、逃げ対メーン集団という図式での駆け引きが続いた。距離が長い事から逃げは協調が取れており、一方メーン集団は、徐々に人数を減らしつつも集団の体裁を保っている。先頭と集団との差は2分前後で推移。天気はスタート直後から回復し、徐々に路面も乾いてきた。

 

土井と新城がアタック!

 動きがあったのは6周目。逃げの中で中根が落車し、また窪木と吉岡も途中で脱落。一方アンカーのアシスト選手が徐々に苦しくなってきたメーン集団からは、清水と増田、狩野智也(チームUKYO)、伊丹健治(ブリヂストンアンカー)の4人からなる追走グループが抜け出し、メーン集団は粉砕。追走の4人は6周目の終わりには先頭まで20秒差にまで詰め寄る。7周目に入ってすぐ先頭では土井と新城がアタックして2人が抜け出す形となり、12周のレースのまだ半分時点で、コース上から“集団”が消滅してしまう展開となった。

6周目に5人に数を減らした逃げ集団。新城がペースを上げる6周目に5人に数を減らした逃げ集団。新城がペースを上げる
逃げ集団のすぐ後ろまで追い上げた4人の追走集団逃げ集団のすぐ後ろまで追い上げた4人の追走集団
西薗は追走集団に乗れず遅れる西薗は追走集団に乗れず遅れる
落車で遅れた中根英登(チームNIPPO・デローザ)。あごから出血している落車で遅れた中根英登(チームNIPPO・デローザ)。あごから出血している
遅れた飯野智行(宇都宮ブリッツェン)遅れた飯野智行(宇都宮ブリッツェン)

 7周目の終わりには先頭が新城と土井、それを追うのが清水と増田になる。8周目の上りでは土井が新城からやや遅れかける場面があったが、「後ろも2人だったので、できるだけ長く2人で一緒にいたかった」という新城がここは合わせる。一方追走の2人は分かれ、清水と増田がそれぞれ単独となる。天気は再び雨がぱらつき始めた。

7周目の途中から2人になった新城と土井。何やら会話する7周目の途中から2人になった新城と土井。何やら会話する
先頭を追う第2グループは清水と増田に先頭を追う第2グループは清水と増田に

 

足が止まった土井…新城はペースアップ

遅れ気味の土井を気にしつつ走る新城遅れ気味の土井を気にしつつ走る新城

 9周目、清水は上りで強力に追い上げ、2分半ほどあった差を1分半を切るところまで詰めてきた。一方先頭では土井が明らかに苦しくなり、新城に付いて行けない。土井が限界を伝える素振りを見せると、新城は単独でペースを上げ始めた。雨と共に霧も濃くなり、終盤に来て再び荒れ模様の天候だ。

 「このコースは落車もパンクもあり得るし、もしアクシデントがあっても対応できるように、できるだけタイム差を付けようと追い込みました」とレース後に語った新城。単独となった周に早くも土井や清水から2分の差を広げ、さらに力強くペースを上げる。一方2番手を走っていた土井は上りで完全に足が止まり、力のない表情で補給所では大量の食料を受け取る。序盤から積極的に走っていた土井だが、エネルギーが枯渇してしまったようだ。

力強くダンシングする新城力強くダンシングする新城
完全にガス欠の土井。補給所で大量の補給を受け取る完全にガス欠の土井。補給所で大量の補給を受け取る
11周目、集中した表情で上りを走る新城11周目、集中した表情で上りを走る新城
6年ぶりの2度目の全日本エリート制覇。U23も含めると4度目の日本王者だ6年ぶりの2度目の全日本エリート制覇。U23も含めると4度目の日本王者だ

 「自分の力を全部出し切ることを心がけた」の言葉通り、集中した表情で走る新城。その顔が崩れたのは、大差を付けて全ての下りを終えた、最終周回の上りだ。勝利を確信して応援のギャラリーに応えながらゴールへと向かう。最後はゴール前で両腕をを大きく横に広げながら、勝利をかみしめるように、ゆっくりとゴールラインを切った。

 2位には清水が、3位には最終周回に土井を逆転した増田が入った。土井はさらに順位を落として8位でゴール。「だめだ……」と力なく一言を残してチームピットへと去った。あまりに厳しいレース展開に、当初先頭から10分だった足切り時間は、周回遅れギリギリ(30分あまり)まで拡大された。それでも完走者はわずか16人にとどまった。

 

「チャンピオンジャージを着て、日本をもっとアピールしたい」

今年から全カテゴリーの大会名称が統一されたことで、チャンピオンジャージのデザインも、白地に赤を基調としたものに戻った今年から全カテゴリーの大会名称が統一されたことで、チャンピオンジャージのデザインも、白地に赤を基調としたものに戻った

 表彰台で「雨の大分とはご縁があるみたいで…」と苦笑した新城。同じように悪天候の大分で開催された2007年以来6年ぶりの、エリートでは2度目の全日本チャンピオン獲得となった。「キツいコースで脚の差が出るのは分かってたので、前半のいい逃げに乗って、それを最後まで逃げ切るというのが作戦だった」と話すとおり、早い段階で個人の力勝負に持ち込み、そのまま圧倒的な力の差を見せ付けての勝利となった。

 「これを着てまたヨーロッパで、日本をもっともっとアピールしていきたい」と語る新城。ツール・ド・フランスの出場に向けて、チームに対し大きなアピールとなったことは間違いない。レース後、新城は「ぜひ日本チャンピオンジャージを着て、ツール・ド・フランスのスタートラインに立ちたいですね」と意欲を見せた。

【レース速報と結果】新城幸也が力の差を見せつけ2度目の日本チャンピオンに

男子エリートの表彰台。(左から)2位の清水、優勝の新城、3位の増田男子エリートの表彰台。(左から)2位の清水、優勝の新城、3位の増田
シャンパンファイトは観客席にまで乱入シャンパンファイトは観客席にまで乱入

女王初戴冠の與那嶺 「目標は世界選手権での結果」

與那嶺恵理が初チャンピオンを獲得。個人タイムトライアルと合わせて今年全日本2冠目だ與那嶺恵理が初チャンピオンを獲得。個人タイムトライアルと合わせて今年全日本2冠目だ

 女子エリートのレースでは、與那嶺が前評判どおりの圧倒的な力で、序盤から独走で優勝した。1周目は集団内で安全に走ったというが、この時点で集団に残ったのはわずか5人。2周目に入って與那嶺が「自分のペースで」踏み始めると、昨年まで全日本3連覇中の萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)らは全く付いていけず、早くも独走体制となった。

 競技歴2年足らずという與那嶺だが、独走になっても安定した走りを続け、最終的には2位に4分半の大差を付けて優勝した。落車やパンクなどのトラブルを避けるため下りでは丁寧に走り、上りでペースを上げる走りをしたという。2位には金子広美(イナーメ信濃山形)が入り、萩原は3位に敗れた。

1周目の上り終盤、すでに集団は5人に1周目の上り終盤、すでに集団は5人に
3周目には単独2番手となった金子広美(イナーメ信濃山形)3周目には単独2番手となった金子広美(イナーメ信濃山形)
3番手の萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)3番手の萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)

 初優勝となる與那嶺だが、「今年の最大の目標としているのは世界選で結果を出すこと」と話し、全日本はあくまで通過点だという。3連覇中だった女王、萩原への思いをたずねられても、「今日は誰かとではなく自分との戦い」とかわした。「スタートラインに立てたことは私だけの力ではありません。私は結果を出すことでしか感謝を伝えられないので、こうして結果で感謝をお伝えできたことが本当に嬉しい」と淡々と語った。

 7月にはMTBの全日本選手権にも出場する。こちらも「獲るつもりでいます」と宣言するとおり、優勝候補の筆頭だ。将来どちらに競技を絞るかはまだ決めていないというが、「マウンテンは世界のコースに適応する能力がまだ今はない状態」と自己分析。今年はまずロードで世界を目指す。大学4年生となるが、今年は休学して競技に集中しており、良い誘いがあれば海外にも出られる状態だという。

【レース速報と結果】與那嶺恵理が圧倒的な独走で新女王に

女子エリート表彰。(左から)2位の金子、優勝の與那嶺、3位の萩原女子エリート表彰。(左から)2位の金子、優勝の與那嶺、3位の萩原
2013年の男女ロード王者。與那嶺恵理(左)と新城幸也(右)2013年の男女ロード王者。與那嶺恵理(左)と新城幸也(右)

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