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つれづれイタリア~ノ<4>ポディウムのスプマンテ、ブランドはどこ? ジロの舞台裏で繰り広げられる“バブル戦争”

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ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)の華麗なシャンパンファイト(ジロ・デ・イタリア2013)ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)の華麗なシャンパンファイト(ジロ・デ・イタリア2013)

 「ポンッ」と景気のいい音とともにきめ細かい泡がなみなみとあふれ、ボトルごと大胆にシェイクして歓喜の雨を降らす――今回は、レースに欠かせないイベントのひとつ、シャンパンファイトとそれにまつわるイタリアのシャンパン「スプマンテ」ついて書きたいと思います。

 至近距離でシャンパンを浴びてしまう多くのフォトグラファーは嫌う行事ですが、やはり見たい。いや、一度でいいからやってみたいものです。

欧州の祝い酒 仏・シャンパン、伊・スプマンテ

 発泡酒は、糖分が発酵して二酸化炭素を多く含むために泡が発生するワイン。ヨーロッパでは、18世紀に貴族の間で人気となり、おめでたい席や特別な機会に飲まれてきました。甘いものが貴重だった18世紀と19世紀には、甘くて泡の出るワインなんて贅沢中の贅沢でした。

ジロ・デ・イタリアの最終ステージでは、スプマンテの乾杯も(2007年)ジロ・デ・イタリアの最終ステージでは、スプマンテの乾杯も(2007年)

 シャンパンが群衆の前に登場し始めたのが、18世紀後半。技術革命の影響で大型豪華客船が作られるようになり、その進水式がイベントとして盛大に行なわれるようになりました。古代ローマ時代から、進水式では船を清めるため赤ワインをかける習慣がありましたが、イギリスでは赤ワインでははく、豪客船に相応しいおしゃれで高級なワイン、シャンパンが選ばれたのです。

 現在世界中で親しまれているシャンパンはフランス北部生まれの発泡ワインで、17世紀にドン・ペリニヨン神父が開発したワイン。発泡させるために糖度の低いブドウを使うので、砂糖やコニャックなどを足し、ボトルで発酵させます。シャンパーニュ地方でしか作られません。

 一方イタリアのスプマンテは、1865年にガンチャ社によって開発され、ワイン以外の糖類を足してはいけないきまりになっています。ほとんどの場合、樽で発酵させています。2012年には、4億650万本が生産されました(www.corrieredelvino.it調べ)。

スポーツと発泡酒の贅沢な関係

 多くのスポーツでは、ポディウムでのシャンパンファイトが喜びの象徴であると誰もが認める習慣になっています。しかしシャンパンファイトは、スポーツの世界では比較的新しい習慣のようです。

 最初にシャンパンファイトが登場したのは、1967年のル・マン24時間レースだとされています。アメリカ人ライダーが提案し、その後F1に浸透、最終的に自転車レースにも波及したというわけです。

ジロ・デ・イタリア最終ステージでラッパ飲みのニバリ(2013年)ジロ・デ・イタリア最終ステージでラッパ飲みのニバリ(2013年)
発泡酒をボトルホルダーにトライするいスティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、ブランコ プロサイクリングチーム)発泡酒をボトルホルダーにトライするいスティーフェン・クルイシュウィック(オランダ、ブランコ プロサイクリングチーム)

 ジロ・デ・イタリアにシャンパンファイトが登場したのが、90年代中ごろ。イタリア人にとっての発泡ワインは、シャンパンではなくスプマンテとプロセッコですが(スプマンテファイト?)。シャンパンファイトはUCI規定に入っていないため、これを行なうかどうかは各オーガナイザーに任されています。ツール・ド・フランスにはありませんね。

 ポディウムで使う特大サイズ(XXL)のボトルは3000mlと大容量。値段も贅沢なもので、通常の750mlが1本8ユーロに対して、特大サイズはなんと1本60ユーロです! 2013年のジロ・デ・イタリアでは、「アストリア」のスプマンテが使用されました。イタリアスプマンテフォーラムとイタリアソムリエ協会が主催する「第9回イタリアスプマンテコンクール」(2010年)において最高得点を獲得した、味もピカイチの受賞ワインです。

「9.5 Cold Wine Pink」

アストリア「9.5コールドワイン・ピンク(Cold Wine Pink)」

 泡立ち: 非常に繊細、持続する
色: 薄ピンク
香り: フルーティ
味わい: 豊潤、調和のとれた、デリケートな柔らかさ
アルコール度: 9~10%
サービングの適温: 2~3度

 生産元: 1987年創業「Astoria Wines Srl」(日本語ページヘリンク)

ジロの裏ではスプマンテ争い

 イタリアでは、マリア・ローザのスポンサーが重要視されてきた2000年代から、ポディウムで用いるスプマンテ覇権争いが4つの地域で続いています。争っているのは、ピエモンテ州のアスティ地方、ロンバルディア州のフランチャコルタ地方、トレンティーノ州のトレント地方、そしてヴェネト州のヴァルドッビアデネ地方です。後者のトレント地方とヴァルドッビアデネ地方は地理的に近いとあって、お互いに敵対意識を強く持っています。

 スプマンテは、イタリアが輸出するワインのうち38%を占めています(2012年、ISTATイタリア統計局調べ)。国際大会であるジロ・デ・イタリアで扱われれば、大きな宣伝効果が期待できるというわけです。

 2011年までは、長年に渡ってトレンティーノ州の名スプマンテ「Trento D.O.C.」が使われてきました。しかし、2012年からは、ヴァルドッビアデネ地方の若いワイナリー――前出のアストリアが、開発したばかりのロゼの発泡ワイン「9.5コールドワイン・ピンク(Cold Wine Pink)」で攻撃を仕掛け、見事にマリア・ローザのスポンサーになりました。今年も続行してスポンサーとなっているのは、みなさんも見てのとおり。

フランチェスコ・モゼールのゴールシーン(1988年)フランチェスコ・モゼールのゴールシーン(1988年)

 この“大事件”は、トレンティーノ州の人々だけでなく、ワイナリーを所有するかつてのライダー、フランチェスコ・モゼール一族には大きなショックでした。2009年にジロのために開発したTrento D.O.C.ブランドの新しいスプマンテには、モゼールが1984年にメキシコで記録したアワーレコードにちなんで「Trento D.O.C. 51.151」と命名までしていたのです。

 さて次にジロ・デ・イタリアを見るときには、どんなボトルを使うか、注目してみてみましょう。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)
イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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