イベントレポート東北3県で「CYCLE AID JAPAN」開催、1300人が疾走 サイクリストができる復興支援の新しい形

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参加者が勢揃いのフォトセッション=6月9日、福島・四季の里参加者が勢揃いのフォトセッション=6月9日、福島・四季の里

 東日本大震災の被災地を忘れないでほしいと岩手、宮城、福島で6月1、2、8、9日の4日間、サイクリングイベント「CYCLE AID JAPAN(サイクルエイドジャパン)2013」が開催された。2週にわたった大会では、75~105kmのロングコースと、45~75kmのミドルコースを合わせて全12コースが設けられ、のべ1318人がバラエティ豊かなコースを疾走した。

 このイベントには、「コーダーブルーム」「マルキン」ブランドで知られる自転車メーカーの「ホダカ」(埼玉県越谷市)から、今年4月に入社した新人を含む社員らのチームも出場。「Cyclist」では6月8日、ホダカの社員とともに宮城・松島~宮城・白石間の南下・ロングコース(75km)に出場し、大会の様子を取材した。

記者が乗ったコーダーブルーム「Farna 700-105」(ブラック/ガンメタリック)。松島の景観をバックに撮影記者が乗ったコーダーブルーム「Farna 700-105」(ブラック/ガンメタリック)。松島の景観をバックに撮影
同じコースを走行したホダカチーム。アットホームな社風でみんな自転車が大好き同じコースを走行したホダカチーム。アットホームな社風でみんな自転車が大好き

 

「日本三景」松島から蔵王連峰のおひざ元・白石へ

「Cyclist」記者が走行したコースは松島~白石の75km「Cyclist」記者が走行したコースは松島~白石の75km

 スタート地点の松島海浜公園から白石市の文化体育活動センター「ホワイトキューブ」を目指したのは、およそ240人。地元「松島五大堂太鼓」のダイナミックな音に見送られ、おそろいのチームウェアに身を包んだ仲間や、カジュアルウェアの男女グループが次々にスタートを切った。

 75kmと長いコースにもかかわらず、曲がり角や、車道が狭い場所などで注意を促す案内看板がほぼ全域にわたって設置されていた。地図を確認しなくても走行ができるのは、参加者に嬉しい配慮だ。

 また、ホイールなどを積載した4台のテクニカルサポートカーと、大会を特別協賛するau損保による2台のサポートカーが併走。加えて、自転車に乗った10人以上のスタッフがコースを走行して参加者をサポートした。

「松島五大堂太鼓」部隊の音に見送られてスタート「松島五大堂太鼓」部隊の音に見送られてスタート
スタートを切る参加者スタートを切る参加者
au損保のサポートカーau損保のサポートカー

 ブリヂストンサイクル社員の元MTBプロライダー、宇田川聡仁さんも、この日はサポートスタッフとして参加。コース上では、大勢の参加者に声をかけながら走っていた。途中、パンク修理に奮闘中の男性を見かけると、見事な手さばきで素早く直してしまった。「選手時代はサポートされるばかり。引退した今は恩を返さないと」と語り、さっそうと駆けていった。

コース案内看板コース案内看板
参加者のパンク修理をする宇田川さん(奥)参加者のパンク修理をする宇田川さん(奥)

 水や補給食が得られるエイドステーションは、スタートから17km、36km、51km地点の3カ所。特に第2エイドステーションでは、宮城名物ずんだ餅と笹かまぼこが振る舞われるとあって、ここをひとつの目標とする参加者も多かった。

 千葉と東京から参加した男女のグループは、田園風景の中をゆったりと走りながら、前夜に食べた海の幸の話題で盛り上がっていたが、第2エイドステーションには“ずんだコール”とともに吸い込まれていった。

千葉・東京から参加したグループ千葉・東京から参加したグループ
ずんだ餅を食べる参加者ずんだ餅を食べる参加者

 

雷雨にも負けず

 その第2エイドステーションでは、「ゴール地点で雷雨」の情報がもたらされた。行く手に見える山の向こうには、すでに怪しい雲が広がっている。スタートから40kmを過ぎる頃には大粒の雨が降ってきた。急な雨に、温まったアスファルトからは湯気が立ち昇る幻想的な光景…。

参加者を見守るボランティアスタッフ参加者を見守るボランティアスタッフ
第3エイドステーションのテントで雨を避ける第3エイドステーションのテントで雨を避ける

 雨に打たれたのは参加者だけではない。宮城県大河原市で出会ったボランティアスタッフは、「朝からここに立っています。大雨に濡れてしまったので、いちど帰宅して着替えてきました」と、空模様を気にしながら参加者の誘導を続けていた。

牛米さん兄妹牛米さん兄妹

 塩釜市から参加した牛米慶太さん、薫さんは、アウトドア好きの兄妹。ライドイベントは初めてという。マイペースで走る薫さんを、後ろで少し距離を置きながら見守る慶太さんの様子が印象的だった。ゴールでは、びしょ濡れになりながらも「楽しかったです」と満足そうに話してくれた。

 サイクルエイドでは、参加者全員の総走行距離を復興支援の寄付金に換算する「サイクリングチャリティ」を実施。「セーブ・ザ・チルドレン」など5団体が寄付の対象に設定された。参加者自身が寄付先を選べるよう、ゴール地点では団体名が記載された箱にゼッケンを投じて意思表示する仕組みも導入。記者のように迷う人のために、“5団体に均等に寄付を希望する”ボックスも用意されていた。走りきった達成感だけでなく、復興支援というイベント開催の意義を参加者が実感できる取り組みだ。

寄付先を選んでゼッケンを投入寄付先を選んでゼッケンを投入

 

華々しいグランドフィナーレ

最終ゴール地点ではチアガールがお出迎え最終ゴール地点ではチアガールがお出迎え

 グランドフィナーレは、福島市の公園施設「四季の里」で9日に行なわれた。ゴールのゲートでは、福島や宮城を拠点に“地元の応援団”として活動する「クラップス・チアリーダーズ」のメンバーが「お疲れさまでしたー!」と参加者を元気にお出迎え。会場には地元のグルメが味わえる飲食ブースや、自転車関連の協賛企業ブースが立ち並び、ゴールした参加者をねぎらうとともに、フォトセッションで締めくくった。

グランドフィナーレの舞台では東北出身のお笑いコンビ「サンドウィッチマン」も踊りに参加=6月9日、福島・四季の里グランドフィナーレの舞台では東北出身のお笑いコンビ「サンドウィッチマン」も踊りに参加=6月9日、福島・四季の里
グランドフィナーレ会場に集まった参加者のバイク=6月9日、福島・四季の里グランドフィナーレ会場に集まった参加者のバイク=6月9日、福島・四季の里

 

「また参加したい」イベントであるために

 記者は「サイクルエイド2013」を走行中に時折、2011年3月の大震災の悲惨な映像が目に浮かんできた。2年以上経ったいま、大会のコースからは震災の生々しい爪あとこそ見えないが、「なんでもないのどかな風景」になるためには膨大な時間と労力が費やされたことだろう――そう思いを馳せた。サイクリストができるひとつの支援の形として、有意義な体験となった。

 ただし、サイクリングイベントとしての課題も残る。記者が参加した8日の南下・ロングコースは、交通量の多い幹線道路や、住宅街を抜ける裏道、工業地帯といったひと気のない場所がほとんどで、景色に見どころは少なかった。グランドフィナーレ会場では、地元の来場者から何のイベントかを問う質問も聞かれ、「地元に浸透していないことがうかがわれた」(出展者)という。8日に参加した記者も、地元の方と交流する場面は確かに少なかった。

 また、“3分間隔、5人スタート”というルールの影響から、コース上のほとんどの区間で参加者はまばらだった。グループでなく単独で参加したサイクリストが、コース上を単独で走行する場面も多く見かけた。閑散とした雰囲気の中、見知らぬ土地をゴールまで淡々と走り抜けた印象は否めない。安全を考慮しつつ、各地からの参加者がサイクリングの楽しさを共有できる機会を生かし、「また参加したい」と言ってもらえるイベントであってほしい。

文 柄沢亜希・写真 サイクルエイドジャパン2013組織委員会、柄沢亜希

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