ヴェロ・ミシュラン特集<3>時代を切り開くシティサイクル 「パリ・ブレスト」に息づくミシュランの世界観

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ヴェロ・ミシュラン「パリ・ブレスト」のヘッドマークヴェロ・ミシュランのヘッドマーク

 今春から本格展開されている新しい自転車ブランド「ヴェロ・ミシュラン」は、世界屈指のタイヤメーカー「ミシュラン」と、日本の自転車専門輸入商社「日直商会」のコラボレーションによって誕生した。ミシュランといえば、自転車や乗用車からレーシングカー、そしてスペースシャトルまで、あらゆるタイヤを生産。さらに、レストランなどを紹介する「ミシュランガイド」を世界各地で発行するなど、移動や旅行にまつわる文化の創造にも貢献してきたブランドだ。そんなミシュランの名を冠した自転車は、ユーザーに何をもたらそうとしているのか? 連載3回目は、ヴェロ・ミシュランを生んだ歴史や企業文化、そしてブランドの価値を探求する。

消費者と共に歩む “ミシュラン文化”の奥深さ

 ミシュランの歴史は1863年、フランスで農業用機器やゴム部材を製造する会社が設立されたことから始まる。1889年、当時の経営者だったアンドレとエドワールのミシュラン兄弟が、社名を「ミシュラン」に変更し、事業を活発化させた。

ミシュランの企業キャラクター「ミシュランマン」ミシュランの企業キャラクター「ミシュランマン」

 その後、1895年に初めて空気入りタイヤを装着した自動車を走らせたほか、航空機用タイヤへの進出、ラジアルタイヤの発明など、自動車や輸送機器の歴史に新たなページを書き加えながら発展を続けてきた。

 しかしミシュランを語る時、こうした産業的な側面を越えたさまざまなサービスや取り組みにも注目しないわけにはいかない。

 そのひとつの象徴が、“元祖・企業キャラクター”とでも言うべき「ミシュランマン」の存在だ。タイヤを積み重ねたようなモコモコした姿が愛くるしいミシュランマンが企業広告に初めて登場したのは、今から115年前の1898年。以来、時代に合わせて容姿を変化させながら、ミシュラン製品を扱う店舗やモータースポーツの現場で活躍し、世界中の人々に愛され続けている。

「ミシュランガイド 広島2013特別版」で、三つ星となった日本料理「なかしま」店主の中島徹夫さん(右)と日本ミシュランタイヤのベルナール・デルマス社長 =2013年5月14日午後、広島市(共同)「ミシュランガイド 広島2013特別版」で、三つ星となった日本料理「なかしま」店主の中島徹夫さん(右)と日本ミシュランタイヤのベルナール・デルマス社長 =2013年5月14日午後、広島市(共同)

 もうひとつ、ミシュランの知名度や好感度を飛躍的に押し上げているのが、レストラン案内で知られる「ミシュランガイド」の存在だ。発端は1900年にまでさかのぼり、自動車の利用者が便利なように地図やガソリンスタンドの一覧がパリで刊行されたことが始まりだった。その後、旅行ガイド、観光ガイドなどがヨーロッパを中心に各国で編纂され、とりわけ店の評価を「3つ星」「2つ星」「1つ星」と星の数で表すレストラン・ホテルガイドは世界的な権威として知られるようになった。

 日本では2008年にレストランガイドの東京版が発売され、一大ブームに。現在では「東京・横浜・湘南」「京都・大阪・神戸」の2つの版に加え、昨年10月に「北海道2012特別版」、今年5月には「広島2013特別版」が発刊され、利用者を拡大している。

 本業のタイヤ以外でも特徴的なPRやサービスを通じてブランドの個性を際立たせ、消費者の支持を集めてきたミシュラン。そうした取り組みを強化しようと、2000年には「ミシュラン・ライフスタイル・リミテッド」を設立し、世界85カ国以上でアパレル・雑貨・コレクショングッズ・旅行鞄などのライフスタイル製品を販売している。このように、新しい文化を創出して消費者に提供してきたミシュランの企業風土が、新しい自転車ブランド「ヴェロ・ミシュラン」に結びついている。

 

極限の世界で発揮する高性能

 フレンドリーなブランドとして受け入れられているミシュランだが、タイヤを中心とする製品の性能や品質面でも、他の追随を許さぬ存在感を示している。主力事業の自動車用タイヤでは、乗用車、トラック、産業用車両などに幅広い製品を供給。さらに、モータースポーツの分野で、華々しい栄光を獲得し続けてきた。

 ミシュランの母国フランスで開催される世界で最も過酷なレースの1つ「ル・マン24時間耐久レース」では、最強の実力を誇るアウディチームなどにタイヤを供給し、昨年まで15年間にわたってミシュラン装着車が総合優勝を遂げている。

 また、世界ラリー選手権にも常にトップコンペティターとパートナーシップを結んで挑戦を続けてきた。今シーズンは、ミシュランを履くシトロエンとフォルクスワーゲンの2チームがここまで連戦連勝を続けている。

ミシュランのタイヤを履いて2012年のル・マン24時間レースを制した「アウディ R18 e-tronクワトロ」ミシュランのタイヤを履いて2012年のル・マン24時間レースを制した「アウディ R18 e-tronクワトロ」
ミシュランのタイヤを履いて世界ラリー選手権(WRC)を戦う「シトロエン DS3 WRC」(日本ミシュランタイヤウェブサイトより)ミシュランのタイヤを履いて世界ラリー選手権(WRC)を戦う「シトロエン DS3 WRC」(日本ミシュランタイヤウェブサイトより)

 さらに、ミシュランの活躍の場は大空や宇宙にまではばたいている。航空産業の黎明期からタイヤを供給し、最近では超大型旅客機「エアバス A380」にもミシュランのタイヤが採用された。また、旅客機よりもさらに過酷な荷重が加わるNASA(アメリカ航空宇宙局)のスペースシャトルにも、ミシュランのタイヤが採用されていた。

 ミシュランはその最高水準の技術力で、極限に挑む人類の挑戦と発展を支えてきたのである。

超大型旅客機「エアバスA380」 =2007年10月撮影超大型旅客機「エアバスA380」 =2007年10月撮影

 

自転車用タイヤは“お家芸”

 自転車の世界も、ミシュランの存在抜きには語れない。なぜなら、現在主流となっているタイヤの構造そのものをミシュランが発明したからだ。

 1889年、ミシュランのもとに、パンクをした自転車が持ち込まれた。当時はまだ珍しかった空気入りタイヤだったが、それは修理してから乗れるようになるまで一晩かかる代物だった。

 そこで共同経営者だったエドワール・ミシュランは、タイヤのビード(両端の盛り上がり部分)をリム内側の溝に引っかけて使用するクリンチャー方式のタイヤを開発した。パンク修理がわずか15分で済むこの画期的な技術を広めるため、1891年、世界最古の自転車レース「パリ・ブレスト往復レース」にミシュランタイヤ装着車が出場。2位の選手に8時間もの大差をつけて優勝し、その発明はまたたく間に世界標準となって広まった。

 ミシュランが世界的なタイヤメーカーとして飛躍したのも、この発明があったから。そしてミシュランの新しいシティサイクルの名称「パリ・ブレスト」は、このレース名に由来している。

 その後もミシュランは自転車レースの世界で活躍。世界最高峰の「ツール・ド・フランス」をはじめ、国内外のロードレースやMTBレースで、トップライダーからホビーレーサーにまで幅広く愛用されている。

ミシュランのタイヤで「ツール・ド・フランス2012」を戦う選手(砂田弓弦撮影)ミシュランのタイヤで「ツール・ド・フランス2012」を戦う選手(砂田弓弦撮影)
ミシュランのタイヤでミシュランのタイヤを採用して「ツール・ド・フランス2012」を走ったマシン(砂田弓弦撮影)ミシュランのタイヤでミシュランのタイヤを採用して「ツール・ド・フランス2012」を走ったマシン(砂田弓弦撮影)
ミシュランのシティサイクル用高級タイヤ「パイロットスポーツ」ミシュランのシティサイクル用高級タイヤ「パイロットスポーツ」

 もちろん、レース以外の用途にもミシュランはさまざまな自転車用タイヤを生産、供給している。

 例えばパリ・ブレストに採用されているのは、シティスポーツ用の高性能タイヤ「Pilot Sport」(パイロット・スポーツ)だ。レース用タイヤで培ったグリップ力や路面追従性を踏襲しながら、乗り心地はしなやか。さらに、特殊なナイロンで高密度に編み込まれたベルトを装備するパンク防止テクノロジー“PROTEK HD”が導入され、ライダーが安全・快適に走ることを可能にしている。

 パリ・ブレストは、日本でミシュランブランドから初めて発売された自転車だが、初めてと思えない完成度と価値を実現している。それは、ミシュランの歴史が自転車と共にあり、自転車はミシュランのお家芸という親密な関係に支えられているからだ。

 

ヴェロ・ミシュランが目指す新しい自転車文化

 ミシュランの企業理念は「移動することの悦び」。それは、19世紀にミシュランの経営者が空気入りタイヤの自転車に感動した時に生まれたものだ。さらに、人とモノが移動するための、持続可能な「モビリティ」の発展に貢献することがミシュランの使命とされている。超高性能タイヤの開発も、ドライブに便利なガイド本の出版も、人々のモビリティに寄与するための取り組みだ。

 そんな思想に基づき、25年にわたってミシュラン自転車用タイヤを輸入販売してきた日直商会と手を結んで「ヴェロ・ミシュラン」ブランドが創設された。第1弾となるシティサイクル「パリ・ブレスト」は、街乗りに求められる快適性と、ミシュランのブランドにふさわしい走る悦びを徹底的に追求。ハンドメイド自転車の専門家である松田志行氏に設計を依頼し、理想のシティサイクルに仕上がっている。

 単に優れたデザインや走行性能を備えているだけではない。ヴェロ・ミシュランが目指しているのは、新しい自転車文化の創造。それはミシュランが切り開いてきた歴史そのものといえよう。

ミシュランマンがPRするミシュランのシティサイクル「パリ・ブレスト」ミシュランマンがPRするミシュランのシティサイクル「パリ・ブレスト」


■ヴェロ・ミシュラン「パリ・ブレスト」の概要
サイズ: S/M 420mm ・ M/L 480mm
カラー: ブルー
フレーム: REYNOLDS 520 Cro-Mo
タイヤ: MICHELIN Pilot Sport 700C×28
チューブ: MICHELIN A2 バルブ 仏式バルブ
重量: S/M 420mm 13.2kg M/L 480mm 13.5kg
希望小売価格 ¥99,750(税込)

(取材協力:日直商会


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