ロードレースの美しさと醜さを凝縮した1冊ファンに寄り添い、ドーピングも正面から議論 『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』

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『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(洋泉社)『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(洋泉社)

 国内のロードレースシーンをリードするプロチーム「宇都宮ブリッツェン」の監督であり、ロードレース中継の解説者も務める栗村修さんの新刊『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』が洋泉社より発売された。2012年に『栗村修の気楽にはじめるスポーツバイクライフ』、『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』(ともに洋泉社)と、スポーツサイクル初・中級者向けの解説本を立て続けに上梓した栗村さん。新刊ではロードレース観戦の基本と“深み”をまとめあげ、ファンの裾野をいっそう広げようとしている。

『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』
著者: 栗村修(プロロードレースチーム宇都宮ブリッツェン監督)
出版社: 洋泉社
版型: A5
価格: 1,680円(本体1,600円+税)

“匂い立つ”ようなロードレース解説

 著者の栗村さんは、国内外でのチームでロードレース選手としての経験をもつ。本書には、スプリントに挑む集団内にみなぎる気迫や、「血の匂いが立ち込める」ほどの怖さ、レース中の立ち居振る舞いにみるエース選手のオーラなど、リアルな感覚が散りばめられている。

 全体的に親しみやすい文体やイラストが魅力で、観戦するために知っておくべき「アシスト」「山岳ポイント」「空気抵抗」といったキーワードも網羅されている。だが、要所に現れる身の引き締まるような描写や熱弁に、栗村さんのロードレース愛がにじみ出ている。また、読み進めるほどに、心理戦としてのロードレースの魅力に引きこまれていく。ロードレースの監督は、長いツアーやステージレースのすべてをプロデュースする「ツアーコンダクターのような存在」という表現が印象的だった。

ドーパーたちへ「バカヤロー」~アンチ・ドーピング宣言

 記者自身は最近、ロードレース観戦熱が少々冷え込んでいた。その元凶は、自転車競技界につきまとうドーピング問題だ。

 以前は寝る間も惜しんで熱い声援を送っていたこともあったが、最近では、突出して強い選手がいると疑念を向けないわけにはいかない。何度も裏切られた結果、友人たちにロードレース観戦の魅力を熱っぽく語ってきたことすらバカバカしく思えていた。

 本書では、4章目と「エピローグ」が丸々ドーピングについて割かれいる。基本的には、著者の経験を交えつつ事実が淡々とまとめられており、直近12年間のツール・ド・フランス上位入賞者やWADA(世界反ドーピング機構)規定などの資料も掲載されている。

 その中でハッとさせられたのは、著者が感情をあらわにして反ドーピングの姿勢を示す2つの箇所だ。

 ひとつめは、ランス・アームストロングが今年1月、世界に向けて禁止薬物の使用を認めたライブストリーミング配信を見た時に感じた衝撃を記した箇所。ふたつめは、“ドーパー”(ドーピング適用者)のレースでの走りを解説者として賞賛してきたことに対し、自戒の念をにじませながら、彼らを「バカヤロー」と罵倒する場面だ。

 「嘘はもう嫌」と書きつづられた章の最後で、「監督として、解説者として、日本のレース界を中心にアンチ・ドーピングの取り組みをして、日本から世界を変えていきたい」と力強い意思をみせている。

 ロードレースの“黒い側面”を真正面から見据え、ファンの立場に寄り添いながら改革を目指す“誠実”な解説本に出あうことができた。(柄沢亜希)

◇      ◇

 出版を記念して、栗村さんのサイン&トークショーが6月13日、東京・秋葉原の書泉ブックタワーで開催される。

『栗村修の100倍楽しむ!サイクルロードレース観戦術』発売記念 サイン&トークショー
開催日: 2013年6月13日(木)開場18:45~ 開始19:00
場所: 書泉ブックタワー9階イベントホール(秋葉原)
参加方法: 書泉グランデB1階、または書泉ブックタワー4階にて『栗村修の100倍楽しむ!サイクルロードレース観戦術』の購入者で参加券をお持ちの方
特典: 持参した書籍の見返し部分へのサイン
 
※商品1枚ご購入につき、参加券1枚を会計時にお渡しいたします。

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