ツアー・オブ・ジャパン2013逆境はね返した西谷、進化を続ける西薗、大器の片鱗見せた西村 日本ロード界の将来を担う3世代エース

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 5月19日から6ステージにわたって開催されたツアー・オブ・ジャパン(TOJ)が、26日の東京ステージで幕を閉じた。今年も2004年の福島晋一以来となる日本人の個人総合優勝はかなわなかった。本場欧州のトッププロとして4選手が活躍するなど、活況を呈しているかにみえる日本ロードレース界だが、彼らに続く次世代の選手が出現していないという不安もある。TOJを走った、日本の将来を担う3つの世代の選手に注目した。

ベテランエースの意地 西谷泰治

東京ステージのスタート前、チームテントで集中しながらウォーミングアップする西谷泰治(愛三工業レーシング)東京ステージのスタート前、チームテントで集中しながらウォーミングアップする西谷泰治(愛三工業レーシング)

 レース後に話す声はカラカラに枯れていた。TOJの東京ステージを連覇した西谷泰治(愛三工業レーシング)だが、前日に38度近い熱を出しており、実はリタイア寸前にまで追い込まれていたのだ。

 絶不調の伊豆ステージでは最下位で何とかゴール。リタイアも考えたというが、「沿道から『西谷!西谷!』ってすごい応援をしてもらった。出ないわけにはいかない」と出走を決意した。

 幸い、東京ステージの朝には熱は下がっていた。「出るからには優勝を」と集中して臨んだ。今年32歳になった西谷は、もうベテランと呼べる域に達している。積み重ねた経験を生かしてレースの流れを読みきった。

 西谷は昨シーズンから、国内ツアーへの選手登録をしていない。出場するのはアジアツアーなどの国際レースや、全日本選手権といったビッグレースのみだ。愛三工業チームの別府匠監督によると、ベテラン選手はレースを絞ることで、結果を出すことに集中させているのだという。

 結果とは、すなわちUCI(国際自転車競技連合)ポイントだ。世界選手権などの大舞台により多くの代表選手を送り込むためには、ポイントによる国別ランキングを高め、出場枠を確保する必要がある。愛三工業がアジアツアーのUCIレースを中心に、日本人のみのチームで転戦する理由だ。

最終ステージを見事制し、ややぐったりしながらも安堵の笑顔最終ステージを見事制し、ややぐったりしながらも安堵の笑顔

 しかし今年は思わぬ誤算もあった。4月に出場予定だったアジアでのレースが、相次いでキャンセルになってしまい、西谷は3月のアジア選手権以降、TOJまで2カ月間走るレースがなくなってしまったのだ。レースに出なければ、当然ポイントも稼げない。昨シーズンのアジアツアーで、個人5位、チームで6位だったランキングは、今年4月時点では個人138位、チームも22位と低迷していた。TOJは復活を懸けたレースだった。

 ただ、チームはアクシデントが重なり、TOJでは出場6人のうち、3人が途中リタイアに追い込まれた。ボロボロになりながら、しかし西谷はステージ2勝で復活の雄叫びをあげた。西谷と愛三工業にとって、これからがシーズン本番となる。

日本人最高位も想定通り 西薗良太

西薗良太(チャンピオンシステム プロサイクリングチーム)西薗良太(チャンピオンシステム プロサイクリングチーム)

 西薗良太(チャンピオンシステム プロサイクリングチーム)は、レース前に自身とコーチが想定した「総合6位」という、まさにその順位でフィニッシュを迎えた。日本人最高順位だ。また総合争いだけではなく、難コースで激しい勝負が繰り広げられる飯田、伊豆の両ステージでも、それぞれ日本人最高の7位と5位でゴールしている。

 昨年は総合31位、ステージでも最高9位。チーム内での役割が違うとはいえ、1年で大きな進歩だ。西薗自身は「こういうハードなコースも、同じ日本人選手で土井さんとか飯野選手とか、強い選手はいるんですけど、今年すでに200キロ超のクラシックレースで、激しい戦いが5時間6時間と続くのを体験してきたのが、大きなアドバンテージになっている」と冷静に分析する。きつい状態が続いても、最後まで集中力が切れなくなったのだという。

終始集中を切らさずに集団前方でレースを展開した終始集中を切らさずに集団前方でレースを展開した

 唯一悔いが残ったのは、ヒルクライムで争われた富士山ステージだ。レース中盤には良い位置につけていたが、後半やや失速してしまった。「前半勝負にするか後半勝負にするか、どっちかに分けなくちゃいけなかったんですけど、中途半端になってしまった。練習以下ではなかったけど、練習以上を出せなかったのが残念です」とレースを振り返って反省する。

 シーズン後半には、アメリカで「結果が狙えるレース」がいくつかあるという。出場するためにはまずチーム内の選考を勝ち抜く必要があるが、今回の結果は大きなアピールになったはずだ。25歳と年齢的には中堅だが、大学から本格的に競技を始めてまだ6年ほど。東大卒の異才が、世代をつなぐ存在になっていくかもしれない。

貪欲な逸材 西村大輝

西村大輝(シマノレーシングチーム)。笑顔でピースサイン西村大輝(シマノレーシングチーム)。笑顔でピースサイン

 レースの前後に、少し遠くからでもカメラを向けると、目ざとくこちらを見つけて笑顔でポーズをとる。1994年生まれの18歳、今大会最年少の西村大輝(シマノレーシングチーム)は、表情も身体つきもまだ少年の雰囲気そのままだ。

 ジュニア時代には全日本選手権やアジア選手権、また大人と混じってのプレ国体での優勝経験がある、次世代を担う逸材。今大会でも最難関の富士山ステージでチーム最高位の18位、続く伊豆ステージでも11位に入り、大器の片鱗を見せた。

 今年の春、高校を卒業してシマノに加入したばかり。最初はジュニアよりはるかに長いレースの距離や、プロとして毎日続く厳しい練習内容に戸惑ったというが、TOJの走りを見る限りは十分に適応できているようだ。

最終決戦の伊豆ステージでは、日本王者の土井や総合優勝のバリアーニと同じ集団でゴール最終決戦の伊豆ステージでは、日本王者の土井や総合優勝のバリアーニと同じ集団でゴール
初めてのTOJを総合29位で完走した西村初めてのTOJを総合29位で完走した西村

 将来の夢は、「ヨーロッパでプロになりたいです。ツール・ド・フランスにも出たい」と目を輝かせる。シマノでレースに出る一方で、アンダー23の日本代表でネイションズカップ(国別対抗戦)などのレースに出場する。「そこでいい順位が取りたい。ネイションズポイントとかにも絡みたい」と話す。現在のシマノは将来ヨーロッパでプロになる選手を育成したいという方針で、チームのスケジュールよりも代表のレースを優先できる環境を得られているという。

 アンダー23の全日本タイトルも「絶対勝ちたいです」と話す。明るく屈託のない話し口だが、その姿勢は限りなく貪欲な、若いエネルギーにあふれていた。

(写真・文 米山一輝)

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