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つれづれイタリア~ノ<2>恋する自転車、恋する男たち 情熱を歌声にのせて―ジロのテーマソング

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 泣いても笑っても、“世界一厳しく美しいグランツール”ジロ・デ・イタリアがまもなく幕を下ろします…と、この時期イタリア人はみんなちょっと切ない気持ちになっています。

 初回では、美しい女性たちにスポットを当てました。今回は恋する男性の“必需品”でありイタリアの永遠のテーマ、ビチクレッタ(自転車)とアモーレ(愛)、カンツォーネ(歌)について書きたいと思います。

プロトンが通るとあれば沿道で見送るイタリアの結婚式(2012年ジロ・デ・イタリア)プロトンが通るとあれば沿道で見送るイタリアの結婚式(2012年ジロ・デ・イタリア)

歌うマルコ・パンターニ!

 ジロ・デ・イタリアに関して注目をあびるのは、レース結果のほかに、毎年リリースされるテーマソングです。

 イタリアでは、ジロのオープニングソングがあり、イタリアを代表する著名な歌手が担当しています。時には世界的なオペラ歌手が登場したり、選手自身も歌ったり。

レースを駆けるマルコ・パンターニ(1998年ジロ・デ・イタリア)レースを駆けるマルコ・パンターニ(1998年ジロ・デ・イタリア)

 1996年には、イタリアのヒーロー、マルコ・パンターニ(1970―2004)が担当。前年のクラシックレースの最中に逆走してきた自動車との追突事故によりジロに参戦できなかったパンターニを参加させたい気持ちで、テレビスタッフたちが彼にテーマソングを任せたのだといいます。この出来事は、当時は大きな話題を集めました。

 曲名は「さっさと回せ!(エ・アデッソ・ペダ-ラ)」。これは、イタリアでは一般的なことわざ、「自転車が欲しかったでしょう?くよくよしないでさっさと回せ!」から引用したものです。

 ことわざの由来は、自転車という高価な“おもちゃ”を手に入れた子供が「乗りたくない」とわがままを言ったときに釘をさすためのことば。これが転じて「自分で買ったものだから文句を言うな」、また仕事に文句を言う人に対し「さっさと働け!」、さらに自転車競技では、「レースはきついし、疲れる。しかしそれも好きで始めた道。文句を言わずに最後まで役割を全うしなさい」といったシチュエーションで使われるようになりました。人生を自転車に例えることが多いイタリアならではですね。

 明るい曲調の歌ですが、「自転車は喜びと苦しみを凝縮した乗り物」というイタリア人の自転車の哲学をうまく表している曲だと思います。また、パンターニの苦しみ、心の葛藤、そして責任感がうかがえるので、今も人気があります(どんな曲かを知りたい人はこちら)。

子供たちからサインを求められるマルコ・パンターニ(1999年ジロ・デル・トレンティーノ)子供たちからサインを求められるマルコ・パンターニ(1999年ジロ・デル・トレンティーノ)

オペラ歌手による情熱的なテーマソング

 1980年代は、世界的なオペラ歌手、ルチャーノ・パヴァロッティ(1935―2007)が担当しました。曲は、プッチーニ作曲オペラ「トゥーランドット」のもっとも有名なアリア、「ネッスン・ドルマ(誰も寝てはならぬ)」でした。2006年のトリノ冬季オリンピックで荒川静香選手が金に輝いたフィギュアスケート女子シングルの優勝曲でもありますね。

 その歌詞を聞いて、多くのイタリア人は胸を熱くしました。恋の歌ながら、ジロに重ねてみることもできる情熱的な歌ですね。

「ネッスン・ドルマ」(誰も寝てはならぬ)日本語訳
誰も寝てはならぬ!
誰も寝てはならぬ!
姫、あなたでさえも、
冷たい寝室で、
愛と希望に打ち震える星々を見るのだ…

しかし私の秘密はただ胸の内にあるのみで、
誰も私の名前を知らない!
いや、そんなことにはならない、
夜明けとともに私はあなたの唇に告げよう!
そして、私の口づけが沈黙の終わりとなり、
私はあなたを得る。

(女声コーラス)
誰も彼の名前を知らない…
私たちに必ず訪れる、ああ悲しい、死が、死が訪れる。

おお夜よ、去れ!
星よ、沈め!
星よ、沈め!
夜明けとともに私は勝つ!
私は勝つ!
私は勝つ!

イタリアの男性は自転車に乗って恋をする

 2013年のジロのテーマソングは、大人気のポップ歌手、チェザレ・クレモニーニが担当しました。タイトルは「初夏(メッザ・エスターテ)」。テンポのいい曲で、初夏の訪れがもたらすウキウキした気分と男の熱いロマンがテーマになっています。

 初夏が来ると、ジロが始まります。期待で心が躍ります。ジロが近くを通ると、窓を全開にして大きい声で騒ぎ、他の事はすべてどうでもよくなる――そんな内容です。

 イタリアの男たちが持っている少年の心をうまく表していますよ。ポイントは、どんなに情熱を燃やしても、彼女への気配りも忘れないところ。イタリア人男性の女性に対するエチケットです。曲のサビの部分「ウエイターさん、ガールフレンドにラムネを持ってきて!」という歌詞には多くの男性が反応し、街角で、バー先で口ずさんでいるようです。

「メッザ・エスターテ」(初夏)日本語訳
作詞・作曲 チェザレ・クレモニーニ

ああ、なんという美しい、初夏よ
この時期になるとわくわくする
ヒルクライムだ、急ブレーキだ、ダウンヒールだ、スプリントだ
青春が戻るよ。

ああ、暑いね、初夏よ!
突然、やってくるからね。
窓を開けて
ジロが通るから
他のことは全部関係ないさ。

(サビ)
ウエイターさん、
お願い!のどが渇いた。飲み物を運んできて。
ガールフレンドにラムネをもってきて
今、マリアローザが逃げていく
窓を開けて
ジロが通るから
他のことは全部関係ないさ。

あ、なんという美しい、初夏よ!
この時期になるとわくわくする
窓を開けて
ジロが通るから
他のことは全部関係ないさ。
窓を開けて
ジロが通るから
他のことは全部関係ないさ。

 イタリアの男性の恋心を見事に表している曲はほかにもあります。1982年にリカルド・コッチャンテという国民的な歌手が歌った「自転車で(in bicicletta)」では、スイートなメロディーに乗せて、自転車デートの様子を物語ります。

 寒い日曜日の朝、彼女とのんびり自転車デートをしながら、彼女の横顔と白い息を眺め、夢がロマンを膨らませる。彼女と結婚し、庭付きの素敵な家庭を築く…まるで同年代の清純派アイドルの曲のようです!

 ジロの残りのステージもあと3日。あなたは誰に恋していますか?

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)
イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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