【迷走 自転車対策の現場(中)】歩道?車道?基準あいまい 誤解生んだ“原則回帰”

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 「自転車は車道を走る」という“原則回帰”を警察庁が打ち出してから、中学校教諭の増田詩織さん(28)は毎朝、冷や冷やしながら、自転車で通勤している。

 東京都足立区の自宅から隣の葛飾区内にある勤務先の中学校まで約6・5キロ。通勤路の片側2車線の車道には、スピードを出した車が絶え間なく行き交っている。自転車で走るすぐ脇を路線バスが通り過ぎていく。よろけて倒れれば、確実にバスと接触する。

 「怖くて、気が休まることがない。でもルールを守らなければいけないし…」

 増田さんはため息をつく。それでも自転車通勤はやめられない。バスを使えば、停留所までの歩きや待ち時間を入れて通勤時間は50分、電車では1時間近くかかる。自転車なら25分。始発や最終便の時間を気にすることもない。

 「子供たちや学校行事の都合で、朝が早くなったり、夜遅くなったりするいまの仕事には、自転車は欠かせない」

 自転車がないと通勤や日常生活に困るが、車道は怖い。全国各地のサラリーマンや、毎日の買い物などに自転車を使っている主婦たちは、増田さんと似たような思いを抱えている。

■通達で「道幅3メートル以上」

 ただ、警察庁の方針徹底はすべての自転車を歩道から排除しようとしているのではないという。一定の道幅がある歩道では自転車走行が認められているのだ。

 これまでは「道幅2メートル以上」がその基準だった。2メートルというのは「車いすと自転車1台が同時にすれ違える幅」を想定した数字。2メートル未満でも道路事情から走行が認められるケースもあり、警察庁によると、こうした歩道は全国の歩道約16万7200キロのうち、半分近い約7万6600キロに上る。

 警察庁は10月に「2メートル以上」の基準を「3メートル以上」に変更する通達を出した。自転車と歩行者が衝突する事故をより少なくするためだ。だが、この通達が利用者の誤解を生んだ。いつも走っている歩道の幅を気にしている自転車利用者はほとんどいない。「よりいっそう歩道から締め出され、危険だ」と考えてしまう。

■真意、正確に伝わらず

 「子供が、自転車で車道を走って事故に遭わないだろうか…」

 最近、8歳の長女が自転車に乗り始めた愛知県一宮市の会社員、松田玲人さん(37)は、こう不安げに話す。道路交通法などでは、13歳未満と70歳以上ならば歩道での自転車走行が認められているが、それは知らなかった。

 「じゃあ、娘を連れて、買い物に行くときは、私は車道で、娘だけ1人で歩道を走るのかね」。松田さんはこう首をひねる。同法などでは「車道等の状況に照らして自転車の通行の安全を確保するため、やむを得ない場合」は大人の歩道走行も認められている。

 そもそも、自転車の歩道走行が普及した背景には、昭和40年代に多発した交通死亡事故があった。自転車と自動車の接触事故を減らすことなどを目的に、45年の道路交通法改正などで公式に自転車の歩道走行が認められている。

 警察庁関係者は「杓子(しゃくし)定規に自転車を歩道から追い出そうとしているわけではない。ゆっくり徐行するなど歩行者の通行を妨げなければ、歩道を走っても問題はない」と強調する。

 ただ、自転車利用者が納得できるような分かりやすい説明が行われてこなかったため、自転車対策の真意はうまく伝わっていない。それが利用者の「迷走」につながっている。(西尾美穂子)

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