ヴェロ・ミシュラン特集<1>こだわりが生んだ本物の乗り味 ミシュラン「パリ・ブレスト」のフレームを設計した松田志行さんインタビュー

  • 一覧

 日本ミシュランタイヤが昨秋発表した高級自転車ブランド「ヴェロ・ミシュラン」。その第1弾となるシティサイクル「パリ・ブレスト」がこの春、いよいよ発売された。

ヴェロ・ミシュラン「パリ・ブレスト」ヴェロ・ミシュラン「パリ・ブレスト」

 フレーム設計を担当したのは、ハンドメイドのオーダー自転車「LEVEL」(レベル)を手がける国内有数のフレームビルダー、松田志行さん。長年の経験やこだわりが、パリ・ブレスとのクラシックな雰囲気や力強い走りに結実している。従来の街乗り自転車とは一線を画する本格シティサイクルの乗り味は、どのように生み出されたのか? フレームに込められた思いを松田さんにうかがった。

競輪選手も楽しめる本物のクオリティ

 このプロジェクトがスタートしたのは1年半前の2011年秋。ミシュランの自転車用タイヤを輸入するなど、本場ヨーロッパの自転車文化を日本に紹介してきた日直商会が、日本ミシュランタイヤとともに新しい自転車の姿を模索したことから始まった。検討を進める中で、オーダーメイドフレームによるシティサイクル製作で実績を誇る松田さんに白羽の矢が立った。

 松田さんが主宰するマツダ自転車工場は、競輪界で百数十人もの選手にLEVELブランドの競技用フレームを供給していることで知られている。競輪といえば、勝利のために百分の一秒を削る究極の性能が求められる世界だ。

パリ・ブレストの原型となった試作車。市販モデルとはホイール径や細部の作りが異なっているパリ・ブレストの原型となった試作車。市販モデルとはホイール径や細部の作りが異なっている

 そんなLEVELが、なぜシティサイクルの分野でも名を上げたのか? きっかけは、競輪選手が“ママチャリ”に乗って来店する姿が「カッコよくなかった」ことだと松田さん。「自転車競技の選手が街乗りに使えるような、洗練されたデザインとスポーティな乗り味の自転車を作ろうと思った」。以来、競輪のイメージとは異なる、モダンなデザインのシティサイクルや、新しいコンセプトのショーモデルをいくつも手がけてきた。

「まずフレームありき」 独創的な設計

 今回のプロジェクトに協力を求められた際、松田さんは「自転車はフレームが大事だ」と訴え、性能、強度、精度にこだわった理想のフレーム作りから始めることで合意した。通常のシティサイクルは、製品の小売価格や、パーツ(部品)のグレードが先に決められるため、フレームのコストが削られることも往々にしてある。

職人としてさまざまな表彰を受けてきた松田さん職人としてさまざまな表彰を受けてきた松田さん

 しかしパリ・ブレストの設計思想は、まずフレームありき。だからこそガッシリとした高級感のある乗り味が実現できたのだという。

 設計にあたって松田さんがこだわった点は「フレームの芯が出ていること」、つまり、確かなフレーム設計を高い精度で製品化することだ。さらに、「初心者にも分かりやすい加速と安定感」を具現化することも自らに課した。

 そのために描かれたパリ・ブレストのデザイン。クラシックで洗練された雰囲気を巧みに表現しつつ、乗り味を決定づけるパイプの組み合わせ方には独創的な工夫が施されている。ヘッド部からリアエンドまで真っ直ぐ伸びるチューブが背骨のように全体を支え、踏み出しの軽さと安心感をもたらす。一方、ダウンチューブは細い2本のチューブで構成され、ゴツゴツ感の少ない滑らかな走りに寄与している。

塗装前のフレーム塗装前のフレーム
丁寧に研磨された溶接部分丁寧に研磨された溶接部分

細部まで抜かりなし ハンドメイドの上質感

 製品に採用されるフレームは、松田さん自身が溶接を施すのではなく、海外の協力工場で生産されている。

工場から届いた塗装前のフレームを確認する松田志行さん工場から届いた塗装前のフレームを確認する松田志行さん

 この委託生産にも松田さんのこだわりが貫かれた。自ら海を渡って協力工場に出向き、現地の職人にチューブの組み立て方や溶接のノウハウなどを伝授。きめ細かな指導を重ね、納得できる品質を実現したのだという。

 取材にうかがった日には、ちょうど工場から塗装前のフレームが確認用に届いたところだった。そのフレームを手にとり、チューブの継ぎ目を一つひとつていねいに確認していく松田さん。視線の先には、溶接部分を手作業で研磨するなどハンドメイドならではの上質な仕上げが施されていた。

 フレーム作りは職人技だけに、海外生産による品質低下を心配する向きもあるだろう。しかしパリ・ブレストのフレームは、松田さんが共に作ったと言っても過言ではないくらい、しっかりとした監修と協力体制のもとで仕上げられている。松田さんは「自社ですべて製作しようとしても、生産能力が追いつかない。良い製品を買い求めやすい価格で提供するために一番いい方法をとった」と説明する。

 そのおかげで、パリ・ブレストはオーダーメイド車並みの高品質を、一般的な高級市販車の価格帯で手に入れることができるのだ。

走りこそパリ・ブレストの真骨頂

自ら設計したパリ・ブレストを試乗するLEVELのフレームビルダー、松田志行さん自ら設計したパリ・ブレストを試乗するLEVELのフレームビルダー、松田志行さん

 またこの日、パリ・ブレストの市販モデルを松田さん自身が初めて試乗した。

 実車をしばし眺めた後、無言のままサドルの高さを合わせ、すぐにこぎ出した松田さん。かなり時間が経った頃にようやく戻ってきた。サドルを降りてからもしばらくパリ・ブレストを眺め、ようやく「大丈夫だね」と大きくうなずいた。職人らしく言葉は少ないが、期待通りのフィーリングが実現されていたことは間違いない。

 松田さんがこだわる「芯の出ているフレーム」は、カッチリとして軸のぶれない安定感をもたらす。それが、ペダルを踏む力が無駄に逃げることを防ぎ、こぎ出しの軽さと加速の良さに結びつく。

 一方で、2本の細いダウンチューブの構造や、ミシュランによるシティサイクル用高級タイヤ「Pilot Sports」(パイロット・スポーツ)によって乗り心地は柔らかく滑らか。松田さんが狙ったパリ・ブレストの走行感は、「軽い、速い」といった一般的な自転車への賛辞では語れない、深い味わいをたたえている。

■ヴェロ・ミシュラン「パリ・ブレスト」の概要
サイズ: S/M 420mm ・ M/L 480mm
カラー: ブルー
フレーム: REYNOLDS 520 Cro-Mo
タイヤ: MICHELIN Pilot Sport 700C×28
チューブ: MICHELIN A2 バルブ 仏式バルブ
重量: S/M 420mm 13.2kg M/L 480mm 13.5kg
希望小売価格 ¥99,750(税込)

◇           ◇

 ミシュランのブランドを冠した自転車「パリ・ブレスト」がもたらす新しいシティサイクルの世界を、4回にわたって紹介します。

 

(取材協力:日直商会


この記事のタグ

ヴェロ・ミシュラン シティサイクル

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載

連載