山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道

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 第8ステージのスタート地点ベルフォールは第二次世界大戦の激戦地で、人々の記憶にも忘れがたい遺恨が刻まれている。テリトワール・ド・ベルフォール県の県都だが、テリトワールとは領土という意味があり、普仏戦争の時代から幾度となく支配者が変わってきた過酷な歴史を想像せずにはいられない。

 もう少し北に行くといわゆるアルザス・ロレーヌ地方で、ツール・ド・フランスもたまに訪問するバールルデュクは第一次世界大戦で焼け野原になった。このスポーツイベントを取材するために旅していると、いやでもそんな歴史を目の当たりにしてしまい、選手が通過する1つひとつの町が現在の平穏な生活を取り戻したことのありがたさを痛感せずにいられない。

山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道
山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道

 ただし現在、このあたりはヨーロッパの心臓部だ。さほど遠くないところにあるストラスブールにはEU本部があり、ヨーロッパ国際空港もある。フランス・ドイツ・スイスに通学できるので、それぞれの大学は授業の門戸を開き、所属大学の単位として計算されるという。

山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道

 ツール・ド・フランスにおける国際化も目を見張るばかりだ。かつては自転車レースが盛んな西ヨーロッパの伝統行事だった。80年代に米国選手が参加し、すぐに南米コロンビアやオーストラリアのフロンティアが乗り込んだ。ベルリンの壁崩壊とともに東独勢、さらに旧ソ連、そして東ヨーロッパ諸国。近年では英国チームが登場し、今季はついにオーストラリアチームが参加した。

 日本人カメラマンが初めてレンズを向けたのは70年代だ。さらにシマノの日本人メカニックがツール・ド・フランスの現場に赴任。そこから送られるレポートは別次元の驚きばかりで、すべてが自転車パーツの開発に生かされた。

 85年にはNHKがツール・ド・フランスを放送し、後半になると記者としてボクが乗り込むようになり、マッサー、チームスタッフなどツール・ド・フランスのひととおりの役職にいまでは日本人が関わるようになっている。

 もちろん主役である日本選手の参加、活躍は言うに及ばずだ。

山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道ツール・ド・フランス関連グッズが並ぶ土産物売り場
「Cyclist」に写真を送っているフォトグラファーの砂田弓弦さん(左)と和田やずかさん「Cyclist」に写真や記事を送っている砂田弓弦さん(左)と和田やずかさん
第4ステージで敢闘賞を受賞した新城幸也(チーム ヨーロッパカー)第4ステージで敢闘賞を受賞した新城幸也(チーム ヨーロッパカー)

 あとは日本人不毛の領域としてどんなポジションが残されているだろうか? まっさきに頭に浮かぶのが広告キャラバン隊の女のコだ。男はすでにシマノが96年に1台走らせたことがあるので却下するとして、だれか名乗りを挙げてくれないかなあ? ただしそれ相応の体力が必要だけどね。

 あれ、一番大事なことを忘れていた。日本チームの初参加である。

 昨年冬に来日した大会の渉外担当、ベルナール・イノーに日本勢の活躍のほどを聞いてきた。イノーの答えはこうだった。

 「うーん、ヨーロッパのプロチームに所属する日本選手をオレがどうこう言うのはおかしいと思う。すべては実力で、それは監督が決めることだからね。でも日本チームが参加するっていうほうが現実的だと思わないか。オレは必ず推薦するよ」

山口和幸の「ツールに乾杯!」<4>ベルナール・イノーが明かした秘密 チーズとワイン、そして日本チーム初参加への道

 うれしいことを言ってくれるね。

 フランス最後の総合優勝者、イノーは毎年のコースを決める最高責任者だ。話のついでにコースをどんな基準で決めるのかを聞いてみると、「おいしいチーズとワインがあることだね」と子どもっぽく応えてくれた。

 以来、ボクはイノーの発言を裏付けるために各ステージのゴール地点ではチーズとワインを試食することを欠かさない。うん、サスガだね。イノーの言っていることに間違いない。
 

山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)
ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「シマノ〜世界を制した自転車パーツ〜堺の町工場が世界標準となるまで」(光文社)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)。

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