池田祐樹のレースレポート賞金総額4万ドル! 町ぐるみで盛り上がったMTBレース「ウィスキー・オフロード」を疾走

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町ぐるみで盛り上がった「ウィスキー・オフロード」=アメリカアリゾナ州プレスコット町ぐるみで盛り上がった「ウィスキー・オフロード」=アメリカアリゾナ州プレスコット

 米国アリゾナ州で4月26~28日に開催された「ウィスキー・オフロード」は、今年10周年を迎えるレースイベントだ。会場となったプレスコットの町は標高1600mに位置し、アメリカ西部の古い歴史が多く残っている。MTBライダー池田祐樹選手から「Cyclist」に届いた、レースや会場のレポートをお届けする。

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“マウンテンバイクの祭典”の始まり

質の高いトレイルが果てしなく続くプレスコット周辺質の高いトレイルが果てしなく続くプレスコット周辺

 ウィスキー・オフロードは、周辺に質の高いトレイルが果てしなく続き、マウンテンバイカーやハイカーにとってはたまらない環境がそろうプレスコットの町で開催される。ウィスキーの生産地としても有名な場所だ。

 このレースに私は昨年も出場したのだが、注目は何と言ってもプロレースに用意される賞金額だ。男女の配当賞金額は均等となっており、女性カテゴリーの活性化にも一役買っている。今年はなんと、過去最高の総額4万ドルが用意された。

 レースとしては、プロレーサーによるMTBクリテリウムと50マイルレース(およそ80kmのクロスカントリー)がメインイベントとなる。ほかに、アマチュアレース(15/25/50マイル)やキッズレースがあり、こちらもとても盛り上がる。

ガイド新聞のERGONの広告にモデルとしてちゃっかり登場ガイド新聞のERGONの広告にモデルとしてちゃっかり登場

 またウィスキー・オフロードは、レースのみが主役ではない。プレスコットのダウンタウンを閉鎖した歩行者&バイク天国、無料のライブミュージック、70の出展ブース、多数のバイク&パーツデモ、映画上映…たくさんのアトラクションが用意されている。無料のガイド新聞までが配布される、町を挙げての大きなフェスティバルなのだ。

 初日には、プロライダーの受付とミーティングがあった。プロ参加者は全員ポスターにサインをするのだが、一人漢字で書いてみた。

プロ参加者は全員ポスターにサインプロ参加者は全員ポスターにサイン
漢字でサインしてみました。さてどこでしょうか?漢字でサインしてみました。さてどこでしょうか?

 プロレーサー向けの開会式は、町のシアターで盛大に行なわれた。市長からのあいさつ、ジョークを交えたコース説明、前年のレースムービーなど、趣向を凝らしたとても面白い内容となっていた。

 参加者には、景品がプロアマ問わず全員に配られる。バッグの中身はかなり豪華だが、会場の各出展ブースを回るとさらに多くのフリーグッズをもらうことができる。そのうち荷物が持てなくなるほどで、お得感が満点だ。

町のシアターが会場となったプロレーサー向けの開会式町のシアターが会場となったプロレーサー向けの開会式
参加者全員に配布されるバッグの中身は豪華!参加者全員に配布されるバッグの中身は豪華!

 

今年、一番きつかったクリテリウム

 まず始めのイベントは、キッズを含むビギナーレース。しっかりポリスの先導もつく。

 今回のレースには、アマチュアとプロ合わせて2000人以上が登録し、過去最大規模となった。そのうちプロは男女で160人だ。

ミラーボールヘルメットが輝く先導バイクミラーボールヘルメットが輝く先導バイク

 プロの私にとって欠かせないレースが、初日の夕方6時過ぎにスタートするプロMTBクリテリウム。このレースは3日目の本番、クロスカントリーのスタート順を決める前哨戦となっている。また、もしスタートを切らないと、本レースで8分のペナルティが与えられる仕組みだ。

 コースは、プレスコットのダウンタウン名物となっている、3ブロックほど続く斜度15%は確実にあるだろう激坂を含み、後半は下り、という流れを繰り返すインターバル形式。ルールは20分+3周で、1周2分半~3分の周回となる。

 まずはプロ女子がスタート。ニュートラルスタートの先導は、ミラーボールヘルメットのライダーだ! トップから遅れるとバッサバサ切られていくサバイバルレースなのに、こういう遊び心を入れる運営がアメリカらしくて大好きだ。

 沿道には観客が多く詰めかけ、レーサーのテンションは否が応でも上がっていく。スタート前にまわりを見渡すと、メンツはインターナショナルレベル。

ペースダウンしてくるライダー達を踏ん張って抜かすペースダウンしてくるライダー達を踏ん張って抜かす

 88人のプロ男子がスタート! 予想はしていたが、スタートからレッドゾーンのスプリントペースで強者たちがぶつかり合いながら駆け抜けた。

 今回は、スリックタイヤ使用もOKだったのだが、あいにく持ち合わせがなくブロックタイヤのままで参戦。大半のライダーがセミスリックもしくは細いタイヤに交換する中、コンチネンタルレースキングの空気圧を60psiまで上げて少しでも転がり抵抗をなくした。

 前半は50~60番手くらいに位置していたが、トップから1分半ほど遅れると切られてしまう。このままだとすぐに切られてしまう。ペースダウンしてくるライダー達を精神力で踏ん張って抜かすことに努めた。

 周回を重ねるごとに回復が追いつかなくなってくる。呼吸が苦しく、足もガクガクいいはじめた。でもそれは皆も同じなはず。さらに観客の声援も強力な後押しとなった。

仮装の人たちを見るとレース中なのに思わず笑いがこみ上げてくる仮装の人たちを見るとレース中なのに思わず笑いがこみ上げてくる
JHK選手まで追いつきモチベーションがアップJHK選手まで追いつきモチベーションがアップ
レースが終わっても咳が止まらないレースが終わっても咳が止まらない

 前アメリカナショナルチャンピオンのJHK(Jeremy Horgan-kobelski Boulder)選手まで追いつき、さらにモチベーションがアップ。最後の最後までもがききって33位でフィニッシュした。

 今年一番きつく、激しい追い込みとなったレース。フィニッシュ後も咳が止まらなかった。ショートのレースをすると、自分の弱点が露呈する。着実に強くはなっているが、この速度では勝負はできていない。2日後の本番レースは、賞金圏内(12位以内)を目指す。

プロMTBクリテリウム結果
1 位 Max Plaxton(カナダ)
2 位 Geoff Kabush(カナダ、前年優勝者)
3 位 Sid Taberlay(オーストラリア、5回のナショナルタイトル保持者)

週末でにぎわう「ウィスキー・オフロード」の会場週末でにぎわう「ウィスキー・オフロード」の会場

 2日目は、朝の7時半から会場は盛り上がる。私はレースがないので、コースへ足を運んで知り合いや友達を応援した。

 アリゾナ州内でケーキ屋「ARAI PASTRY」を営んでいる友人が、差し入れのあんぱんと食パンを持って応援に駆け付けてくれた。食パンは、あのイチロー選手もわざわざ注文しているほどの味だ。

 観光地としても有名なプレスコットは、週末を迎えて人がどんどん流れ込み、会場の興奮は最高潮に。「何をやっているのだろう?」と興味を持った観光客がMTBを観戦するといったスタイルだ。この雰囲気がとても良い。

「がんばれ~!」知り合いを応援「がんばれ~!」知り合いを応援
差し入れを持ってきてくれたTAKU君と差し入れを持ってきてくれたTAKU君と

 

アメリカ遠征のヤマ場! 砂まみれで激走した3時間半

心を落ち着かせてスタートを待つ心を落ち着かせてスタートを待つ

 今回の1カ月のアメリカ遠征で一番のヤマ場、ウィスキー・オフロードのクロスカントリーレース(80km)の当日を迎えた。先月のネパールで患った病のダメージをようやく乗り越えたところなので、ここらで結果を出していきたい。

 撮影用のヘリコプターも飛び、興奮度はマックス。90人のプロライダーによる賞金争いが始まった。

 レースは序盤からほぼ全開ペース。例年なら集団がバラける最初の登りでも、バラけずに皆必死で食らいついている。

 コース中盤に待ち構えている約1時間続くヒルクライムにエネルギーを残しておくことも必要だが、エネルギーをセーブすることなど考えていたらあっという間に取り残されてしまうだろう。流れに任せて、一瞬一瞬に全力を注いだ。

日陰がない灼熱地獄のコース日陰がない灼熱地獄のコース

 シングルトラックはドライで砂が深くなっていて、落車が続出。多々あるロックセクションも、砂埃でラインが読めずパンクが多くみられた。私は、試走を何度も繰り返したおかげで幸いトラブルなく走ることができた。

 日差しが強く、気温も高い。肌がジリジリ焼けていくのを感じながら、名物の20km続くスカル谷の登りを駆け抜ける。日陰が一切ないので、まさに灼熱地獄だ。

 この時、足はまだ生きていた。挽回のチャンスだと見極めて、積極的にペースを上げて前に見えるライダー達を次々と抜かした。KONAのSean Babcock選手と並んで速度を高めあいながら10人は抜いただろうか。永遠とも感じられたスカル谷の登りもついに終わり、頂上へ到着。

 腿の内側が攣っていたが、ここで順位を落とすわけにはいかないので激痛を我慢してビッグリングを踏み抜いた。レースは辛いが、ロックセクション、河渡り、流れるようなシングルトラック、コース上のいたるところにいる観衆、綺麗な景色、飽きがこない最高のコース設定だ。

 シングルトラックを出ると、フィニッシュラインまではプレスコットのダウンタウンの舗装路セクションだ。スペシャライズドレーシングのHoward Grotts選手と先頭交代し合いながら超高速ペースでフィニッシュへ向かった。

わずかな差でスプリントを制してゴールへ飛び込んだわずかな差でスプリントを制してゴールへ飛び込んだ

 ラストはわずかな差でスプリントを制してフィニッシュ。去年よりタイム的にはかなり速くなっているが、順位はダウンして33位。3時間22分57秒。

 レース後は、ライバル達とお互いの健闘をたたえ合う。この時間がとても好きだ。激走を共にしたバイクのフレームは、砂埃にまみれ、汗、涎、鼻水、こぼれたドリンクがしたたり落ちた跡が残っていた。

 結果を出したかったレースだけに非常に悔しく、もどかしい。もっと爆発的な成長が必要だ。表彰式のポディウムを前に、「いつかはあそこに立ってみせる!」とまた闘志が燃え上がるのを感じた。

レース後はライバル達とお互いの健闘をたたえ合うレース後はライバル達とお互いの健闘をたたえ合う

プロMTBクリテリウム結果
1 位 Geoff Kabush(カナダ) 2時間57分37秒
2 位 Jeremiah Bishop(アメリカ) 3時間02分47秒
3 位 Max Plaxton(カナダ) 3時間04分20秒

◇      ◇

 最高に楽しかったMTB漬けの3日間が終了。日本でもいつか、町ぐるみでたくさんの人が集まり、MTBを楽しむことができるこんなイベントを開催したいと思う。

 ありがとうウィスキー・オフロード。See you next year!

文・写真 池田祐樹

池田祐樹池田祐樹(いけだ・ゆうき)
MTB競技で国内外の耐久や長距離レース(マラソン)に挑戦しているライダー、かつコーチ。2012年は、国内では希少なMTBマラソン「セルフディスカバリーアドベンチャー・大滝」を春・秋と制し、「キング・オブ・王滝」の称号を獲得。また、日本人初の米国自転車連盟認定コーチとして、小野寺健(TEAM SPECIALIZED)のパーソナルコーチとなっている。トピーク・エルゴンレーシングチーム所属。東京都在住。ブログ「Yuki’s Mountainbike Life

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