バイクインプレッション2013「GRAPHITE DESIGN DOKKE AM/XC」 日本のトレイルとライダーにシンクロする“ジャパニーズ・トレイルバイク”

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 グラファイトデザインのMTBシリーズ「DOKKE」(ドッケ)には、サスペンションのストロークが長い「DOKKE AM」と、ストロークが短い「DOKKE XC」がラインナップされている。この2台、先日の「GDTT」取材時に初めて乗ったのだが、あいにくの悪天候にも関わらず、その「フィーリングのよさ」に驚かされた。そこで、「DOKKEを正確に理解したい」というピュアな願望と、「このバイクを自分のホームトレイルで走って確かめたい」という欲求を満たすために(?)、今回は筆者が普段トレーニングとライドをしているトレイルへ2台同時に持ち込み、合計6時間ほどかけて乗り込んだ。(レポート 鈴木良則)

GRAPHITE DESIGN DOKKE AMGRAPHITE DESIGN DOKKE AM
GRAPHITE DESIGN DOKKE XCGRAPHITE DESIGN DOKKE XC

「やっと作れた」MTB

DOKKEの生みの親であるグラファイトデザイン・サイクル事業部、松崎 雄一郎さんDOKKEの生みの親であるグラファイトデザイン・サイクル事業部、松崎 雄一郎さん

 目の前にある2台は渋めのカラーリングで、一見すると“普通のMTB”にしか見えない。しかし、バイクの細部を見て感じる事は、丁寧な製作工程や仕上げから発せられる凄みと、「長く大切に使って欲しい」という強烈なメッセージだ。

 開発者であるグラファイトデザイン・サイクル事業部の松崎 雄一郎さんが、「ロードが一段落して、やっとMTBを作る事ができる」と語った言葉がとても印象的だった。

 グラファイトデザインは、秩父市の山に囲まれた静かな場所に本社工場がある。石川遼選手のゴルフシャフトを製造するなど、ゴルフの世界では「知らない人はいない」ほどの有名メーカーである。生みの親である松崎さんは、同社オリジナルのプロツアーシャフトの開発者で、ゴルフのカーボンシャフトに関する特許も持っている「カーボンのスペシャリスト」だ。

 1977年生まれの松崎さんは、最初の本格的スポーツバイクがMTBだったアラフォー世代。当然、松崎さんも子供の頃から秩父の山でMTBに乗り続けてきた。その松崎さんがMTBを開発したのだから、「日本のトレイルを気持ちよく走れるトレイルバイク」になるのは当然の帰結だろう。「とにかく考えられる事、やりたい事、やれる事は全てやった」という。

 同社におけるMTB開発プロジェクトは2010年9月頃にスタートした。まずはチタン製のスケルトン(寸法)確認用モデルを製作してテストを開始。その際に「ホイールサイズは本当に26インチで良いのだろうか?」「フォークの長さの基準はどうしたらよいか?」など、まずはMTBの根本から全てを検証したという。

手前がAMで奥がXC。パーツアッセンブル以外は同じバイクに見える手前がAMで奥がXC。パーツアッセンブル以外は同じバイクに見える

 その後、素材をカーボンに置き換えて開発を進め、2度の金型変更(これはとてもコストのかかる事!)と3度の積層変更を経て製品化に至った。MTBはライディングスタイルによってフォークに必要なストロークが変わることから、AMをベースとしてXCも製作されたという。

 AMとXCは一見するとほとんど同じで、サスペンションのストローク以外の違いがないように見えるが、並べてみると後ろ三角のボリュームが異なるのがわかる。これは両者に求められるライディングスタイルや速度域が違うことからだ。ロングストローク仕様のAMの方が下り重視になり、速度域も高く設定されている。ライディングスタイルも、大きなギャップを飛ぶシーンなどが想定され、その負荷に耐えられるよう形状やボリュームを変えてあるという。

気持ちよく脚が回るペダルフィール

 試乗ライドの上りでは、まずペダリングのフィールの良さを実感した。レースではないので淡々とシッティングで上ったのだが、AMとXC、どちらも気持ちよく脚を回す事ができた。「気が付いたら頂上まで着いてしまった」と思わせるくらいの心地よさだ。最初にXCで3時間乗り、その後AMを3時間乗ったのだが、最後までこの「気持ちよさ」は持続した。下りを意識したトレイルバイクで、こんなにハイレベルな乗り味のものは滅多にない。「どんなフィールの乗り味にしたいか」というイメージがハッキリとしていて、それがカーボンフレームという素材で表現されているという事なのだろう。

GDTTでDOKKE XCをテストする筆者GDTTでDOKKE XCをテストする筆者

 試しにダンシングもしてみた。ひと踏みした反応は特段鋭いものではないが、そのまま踏み続けると、いつまでもバイクを振り続けられるような感じがする。これは長い時間快適に乗り続けるために、一瞬の反応性よりもリズムのよいペダリングを重視した結果であろう。

 砂利の敷き詰められた路面でも、リアが弾かれないので安定して踏んでいける。この「粘るトラクション性能」は本当に安心感があり、またペダリングの力をより長い時間路面に伝えることができる。

 こうした乗り味の秘訣は、フレームの設計にある。後輪の支持部がループエンドと呼ばれる円弧を描いた形状になっており、またシートステーが弓なりにベンドされている事、さらにカーボン素材の積層などの設計によって、サスペンションのように「ある程度よじれる」構造になっているのだ。

下りで異なる持ち味

今回テストを行ったトレイルとDOKKE AM今回テストを行ったトレイルとDOKKE AM

 下りセクションに入ると、AMとXCで印象が異なる。AMはXCと比較すると長めのホイールベースを持ち、高速の下りに入るとビシッと安定する。大半のライダーは、シングルトラックで出しうる速度域において、何の不満もない筈だ。超高速の常設コースを本気で攻めた時は少し不安定感が出るかも知れないが、日本のトレイルでは細かい切り返しなどで、ハンドルが素早く切れてくれる方がありがたい。秩父のトレイルは比較的斜度がきつく、スイッチバックも多い印象であり、なるほど「あの山々から生まれてきたMTBならこうなるな」と思わせるような仕上がりだった。

 下りのスピードに特化して懐が深いAMと比較すると、XCはもう少し全体がコンパクトで、バイクが身体の下にキッチリとまとまっている。速度域の低いトレイルでは、自然で小気味良いハンドリングが味わえるバイクだ。

思わずニヤリのフレーム工作

 バイクの細部に目をやると、古くからのMTB乗りなら「思わず微笑んでしまう」ような細かい配慮のオンパレードだ。

 「工場には仕上げについてかなりうるさく言っている」と松崎さんが語るだけあって、フレームの表面は一目でわかるほど美しい仕上げがなされている。

ワイヤーは担ぎの邪魔にならないよう、全てトップチューブの上側に配置されているワイヤーは担ぎの邪魔にならないよう、全てトップチューブの上側に配置されている
担ぐ時に肩の当るトップチューブ下側に突起物が来ないようにデザインされている。トレイルを走るMTB乗りなら、思わず頷いてしまう工夫だ担ぐ時に肩の当るトップチューブ下側に突起物が来ないようにデザインされている

 ワイヤーリードは全てトップチューブの上側に取り付けられている。これは「日本の山では担いて上る事も多いので、邪魔にならないように」という配慮だ。下側に取り付けられると、担ぐときに肩にワイヤーリードが食い込んで痛い。トレイルライダーらしい細かい配慮に、思わず筆者の頬が緩んでしまう。

 フレーム重量はAMが1300gと、トレイルバイクとしては格段に軽い。XCに至っては1170gである。「丈夫さ」を売りにして軽量化を特に意識していないというが、上りにも支障ない十分な軽さを誇っている。

 リアエンドは交換式だ。通常はディレーラー側の右側にのみ交換式のドロップエンドが装着されるが、DOKKEは左側の車軸が接する部分も交換式になっている。

 リア三角はパイプを繋いだような形状ではなく、エンド部も殆どがカーボンで作られている。衝撃や強い負荷に耐えられるよう、ハブ軸を覆うようなエンド形状になっている。これはハブ軸が接する部分の精度を高めるためでもあるという。実際、今回のライディングでもリアホイールがずれる事は無かった。

左側のエンドも交換式になっている。強い衝撃に耐え、精度を高める為の工夫だ左側のエンドも交換式になっている。強い衝撃に耐え、精度を高める為の工夫だ
パイプを繋ぎ合わせた形状ではなく「ループ」を描いているエンド部と弓なりにベンドしているチェーンステイが「粘るトラクション」を産み出しているパイプを繋ぎ合わせた形状ではなく「ループ」を描いているエンド部と弓なりにベンドしているチェーンステイが「粘るトラクション」を産み出している

どんな人に向いているか?

 「トレイルバイク」としてのイチ押しは「AM」だ。日本のトレイルを「速く」「楽しく」走るために考えうる性能が詰め込まれている。「自走で上り、下りを楽しむ」こんな走りを一日中続けていたいライダーには最高のバイクとなる。

 アッセンブルについては、フォークは推奨ストローク長の範囲で可変のもので、さらに15QR仕様の予算が許す限り高性能なものがベストだろう。ブレーキはSAINTなど下り向け性能が強化されたものか、XTクラスがバランスが良いだろう。ホイールは「少し上る事を考えた丈夫なホイール」が合いそうだ。MTBを良く知るショップなどで「手組み」してもらうのも良いだろう。

AMのテストバイクにはストローク可変のFOX TALAS CTDが装着されていたAMのテストバイクにはストローク可変のFOX TALAS CTDが装着されていた
ショートストローク仕様XCのテストバイクにはFLOAT 100 CTDが装着されていたショートストローク仕様XCのテストバイクにはFLOAT 100 CTDが装着されていた

 「XC」は、普段はトレイルライドをしているけれど、レースも少しやりたいと思っているライダー向け。また昔からXC系の26インチハードテイルに乗っていて、似たようなフィールのバイクが欲しい人には最高のバイクだろう。

 フォークに関してテストライドでは100mmがベストバランスと感じたが、高速時の反応をマイルドにするなら120mmでも良いように思える。パーツは新調するならばXTやXTRなど、クロスカントリー系のコンポなら間違いがないだろう。組み合わせるホイールは、いわゆるXC用のホイールが最適。DOKKEの「気持ちよいペダリング」を更にサポートしてくれる。

日本のトレイルとライダーに“シンクロ”する

受注生産となる特別カラー「LXホワイト」受注生産となる特別カラー「LXホワイト」

 ゴルフの世界では「シンクロナイズ」という理論がある。「ゴルフシャフトのしなりを利用してより遠くにボールを飛ばす。または人間の心地良いタイミングを作る(それによってパワーを引き出す)」といった概念だ。

 DOKKEに乗ってトレイルを一日中走ってみると「日本のトレイル」と「日本のライダー」のシンクロナイズや心地よさを筆者は感じた。MTBは実はとても「ローカル」な乗り物だ。ロードバイクとロードレースは「人」が作り出すものだが、MTBは人とトレイルが生み出すものだからだ。

 アメリカで生まれたMTBという遊び道具が、日本のトレイルに見事にシンクロナイズされた。そう思えるバイクだ。

GRAPHITE DESIGN DOOKE AM
推奨フォークストローク長 100~140mm
フレーム重量 1300g(Mサイズ)
製品ページ http://cycle.gd-inc.co.jp/producttop/item-dokke_am/
フレーム価格 199,500円

GRAPHITE DESIGN DOOKE XC
推奨フォークストローク長 80~120mm
フレーム重量 1170g(Mサイズ)
製品ページ http://cycle.gd-inc.co.jp/producttop/item-dokke_xc/
フレーム価格 199,500円


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