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御神火ライド2018

池田祐樹のレースレポート世界のスピードとパワーを痛感 「シーオッタークラシック」に日本のMTBトップ選手4人が参戦

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最終日に参加したMTBグランフォンドのフィニッシュ後に食べたランチ。最高!最終日に参加したMTBグランフォンドのフィニッシュ後に食べたランチ。最高!

 アメリカ・カリフォルニアで4月18~21日に開催された北米最大の自転車ショー&レース「シーオッタークラシック」。マウンテンバイク(MTB)のレースには、日本から全日本チャンピオンの山本幸平選手(SPECIALIZED RACING)、Jシリーズチャンピオンの斉藤亮選手(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)、ベテランプロの松本駿選手(SCOTT JAPAN)、王滝連覇中の池田祐樹選手(TOPEAK ERGON RACING TEAM)らトップ選手が集結した。池田選手が詳細なレポートを「Cyclist」へ寄稿してくれた。

◇      ◇

 「シーオッタークラシック」は“サイクリングの祭典”として知られ、シーズン開幕の代名詞となっている。私は今回、ショートトラックと、大会のメインイベントでもあるクロスカントリーに参戦した。

スタートを待つライダーたちと観客スタートを待つライダーたちと観客

スロースタートが仇…力を出し切れなかったショートトラック

 19日に開催されたプロショートトラックは、翌日のクロスカントリーを控えた“お披露目レース”といった感じだが、もちろん全員が本気だ。今年のコースは一新されて、難易度がアップ。前年のシクロクロスコースのレイアウトを使用したコースは、距離が1周0.7マイル(約1.13km)に延長され、人工ロック、深い砂利、舗装路の高速セクションや多くのタイトコーナーが設置された。1周にかかる時間は3分強だ。

 ルールは20分+3ラップ。少しでも遅れると、次々と切られていくサバイバルゲームとなっており、トップと同周回で完走することが難しいレースだ。私は主戦場を長距離レースとしているが、短距離レースの緊張感もたまらなく好きだ。

隙を見つけてはアタックをかけて前の集団を追う隙を見つけてはアタックをかけて前の集団を追う

 世界各国から集まったトップレベルのライダーは80人ほど。私のスタートは、うしろから2~3列目だった。

 スタートすると、案の定、タイトなコーナーですぐに渋滞が起こった。全力で踏もうとするも、私を含む後方スタートのライダーたちは、この渋滞との戦いに打ち勝たなければいけない。詰まっている間にも先頭付近のライダーはビュンビュン飛ばしていく様子がうらめしい。

 それでも、いま私が問われていることは、この状況でどれだけベストを尽くせるか。逆境を跳ね返すだけの足があるかどうか。それだけだ。

 集団がバラけてきたところで少しずつ前のグループに追いつき始めたが、集団の中で落ち着くとすぐに切られてしまう。生き残るためには、一人ででも飛び出して前を追うしかない。

 風が強いので単独走はかなりきつい。心肺も足も、最初から最後まで惜しみなく追い込んだ。1周毎に順位を少しずつ上げていったが、スロースタートが仇となり「残り1周へ飛び込めば完走!」というところでレースを降ろされてしまった…。

 世界との差云々の前に、自分のパフォーマンスを出し切れずに終わってしまったことがすごく悔しい。翌日のクロスカントリーでは、今の力をしっかりと出し切ることを心に誓った。

プロショートトラック結果
1位 GEOFF KABUSH(SCOTT 3-ROX)
2位 LUKAS FLUCKIGER(BMC MOUNTAINBIKE RACING)
3位 EMIL LINDGREN(GIANT PRO XLT)
9位 山本幸平(SPECIALIZED RACING)
20位 斉藤亮(MIYATA-MERIDA BIKING TEAM)
44位 池田祐樹(TOPEAK ERGON RACING)
71位 松本駿(TEAM SCOTT JAPAN)

“ハングリー”な米国ライダーたちと真剣勝負

 プロクロスカントリーが行われた20日は、思い切り晴れて気温も上昇し、日差しが痛いほどだ。参加人数は前日のショートトラックよりも増え、100人を超えるトップライダーが所狭しとスタートラインに並ぶ。レースに向けて、いい感じに高揚していった。

ロケットスタートで超高速レースが始まったロケットスタートで超高速レースが始まった

 距離は33kmのビッグループを1周。長距離レースにはないクロスカントリー短時間決戦の緊張感と、このカリフォルニアのダイナミックなコース設定を前に興奮しないわけがない。最初からオールアウトペースで攻めた。レースはスタートから白熱し、中にはスタート直後の舗装路区間で早速クラッシュ、転倒して救急車で搬送されたライダーもいた。

 コースは、試走時よりもかなり砂が浮いていて滑りやすい。常に集中していないとすぐに前輪をすくわれてしまう。

 オフロードに入ると、渋滞。私は落ち着いて前へ出るチャンスをうかがいながら駒を進めたが、やはり海外へきて思うのは、ライダーのアグレッシブさとハングリー精神が日本と明らかに違うという点だ。砂埃で視界が確保できないテクニカルなダウンヒルセクションでも、ノーブレーキで肩をぶつけ合いながら下ることもある。

 乗っている機材はカーボンでなく、アルミ、鉄もあれば、ミドルグレードのコンポーネントやパーツを使用しているライダーもいる。決してベストではないが、それでも充分に速い。競技人口が多いアメリカでは、プロライセンスを持っていても物品スポンサーを得るのは楽ではない。私自身も、アメリカで今のチームに入る前は、中古や下位グレードの製品しか使ったことがなかった。皆、トップへ這い上がるための必死なのだ。

最後の登り、攣りかけた足でアタックをかけて前を追う最後の登り、攣りかけた足でアタックをかけて前を追う
フィニッシュ直後。スプリント勝負だったこともあり、呼吸がなかなか戻ってこなかったフィニッシュ直後。スプリント勝負だったこともあり、呼吸がなかなか戻ってこなかった

 レース中盤からは自分のペースをつかみ、単独で飛び出して前を追い始めた。飛ばしすぎて落ちてきたライダーを交わしながら徐々に順位を上げていくが、前を見るとまだまだ先まで多くのライダーが数珠状につながって見える。心が折れそうになるが、精神があきらめてしまっては身体も動かなくなる。「フィニッシュまでできるだけの数を追い抜く!」と自分に何度も言い聞かせてモチベーションを保った。

 後半、ここで足を緩めるわけにはいかないと、長いアップダウンで最後の力を絞り出してひとつ前の集団に追いついた。舗装路のサーキットに出ると3人の集団となった。

 ゴール前は、ロードレースのような駆け引きをしながらスプリント勝負。しびれを切らして早く勝負を賭けすぎてしまった私は、集団の2番手でフィニッシュした。

 中盤からは追い越されることなく、抜けるだけ抜いた結果、トップから8分38秒遅れの44位。このタイムの間に43人もいるのだ。悔しい。

プロクロスカントリー結果
1位 MIGUEL MARTINEZ、 FACTORY FRM ISD 1時間16分21秒
2位 GEOFF KABUSH、 SCOTT 3-ROX +1秒
3位 TODD WELLS、 SPECIALIZED RACING +13秒
13位 山本幸平、 SPECIALIZED RACING +2分9秒
44位 池田祐樹、 TOPEAK ERGON RACING +8分38秒
65位 斉藤亮、 MIYATA-MERIDA BIKING TEAM +12分6秒
71位 松本駿、 TEAM SCOTT JAPAN +13分3秒

今シーズンは“スピードレース”に対応するトレーニングを

松本駿選手とレース後のツーショット。悔しいレース結果だったがアメリカのレースの楽しさを語り合った松本駿選手とレース後のツーショット。悔しいレース結果だったがアメリカのレースの楽しさを語り合った

 近年のレースのスピード化は、クロスカントリーのみならず、私がメインで出場している耐久系長距離レースも例外ではない。実は、2年前からトレーニング方法を変える試みをしている。瞬発系の練習を多く取り入れるとともに、ウェイトトレーニングやクロストレーニングも積極的に行い、絶対パワーの向上を狙ってきた。

 スピード化の流れに対応したつもりだったが、今回のレースで、まだまだ世界に通用するパワーが足りていないことが露呈した。順位は悔しいが、世界のベストライダー達と一緒にレースをして、彼らとの距離を知ることができたことはこれ以上ない収穫だ。

 今回の一番の反省点は、スタートダッシュからよいポジションを取るまでのパワーだ。集団がばらけ始めてからようやくエンジンがかかるため、後方集団から抜け出せないままレース前半を消化してしまった。

 また、アグレッシブさ――前へ進むことに対して絶対的に強い意志を持つことが必要だと感じた。レース中は、一瞬でも気を抜くとすぐにライダーが前に入り込んでくる。一瞬毎の集中力を大切にしなければ、いくら強い足を持っていても結果につながらない。約100人のワールドクラスのライダー全員が1番を目指している中で、フィジカルが強くあることは当たり前。「誰にも負けない」という確固たるメンタルを持つことが最後の勝負を決めると実感した。

ウェルカム・トゥー・シーオッタークラシック!ウェルカム・トゥー・シーオッタークラシック!
メインスポンサーのトピークブースにてスタッフとメインスポンサーのトピークブースにてスタッフと

 今年は、とにかくおもしろそうだと感じた海外レースへ積極的に参戦することにしている。オーストリアの「MTBマラソン世界選手権」、アメリカでは、最大の長距離レース「レッドヴィル100(160km)」、ビッグな賞金レース「ウィスキーオフロード(80km)」、「ファイヤーバード・イン・イーグル(約64.4km)」、過酷だがワールドクラスのシングルトラックが味わえる「ブレックエピック」6日間ステージレースなどを予定している。国内では「セルフディスカバリーアドベンチャー・イン・王滝」のディフェンディングチャンピオンとして連勝を目標としている。

◇      ◇

 レースで結果を残すことはもちろんだが、世界で起こっている新しいMTBの流れや楽しみを日本に伝えることも私の目標だ。

 今回出場したシーオッタークラシックは、1991年にマウンテンバイクのイベントとして始まった。現在はMTBに加えてロードバイクやシクロクロスのイベントも行なわれ、9千人以上のアスリート、5万5千人の観客動員を誇る。

週末はクルマの長い渋滞の列ができるほど多くの参加者が集まる週末はクルマの長い渋滞の列ができるほど多くの参加者が集まる

 ショーには400を超える企業から700ものブランドが出展された。来場者にとっては、新製品をチェックしたり、ショッピングしたり、催し物に参加したり…と、レース以外にも面白いアトラクションが盛りだくさん。サイクリストなら興奮してたまらないモンスターイベントとして、今年も大いに盛り上がった。

文・写真 池田祐樹

池田祐樹池田祐樹(いけだ・ゆうき)
MTB競技で国内外の耐久や長距離レース(マラソン)に挑戦しているライダー、かつコーチ。2012年は、国内では希少なMTBマラソン「セルフディスカバリーアドベンチャー・大滝」を春・秋と制し、「キング・オブ・王滝」の称号を獲得。また、日本人初の米国自転車連盟認定コーチとして、小野寺健(TEAM SPECIALIZED)のパーソナルコーチとなっている。トピーク・エルゴンレーシングチーム所属。東京都在住。ブログ「Yuki’s Mountainbike Life

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