福光俊介の「寝落ち禁止!ツール三昧」<3>Clear SKY! 一瞬にして鮮明になった総合争い

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 今年のツールは、今まで目にしたことのない光景をプロトンに見ることができる。大会開幕前に主催者のA.S.Oが「チーム総合トップのチームは黄色のヘルメットを着用する」ことを義務付けたことで、マイヨ・ジョーヌカラーのヘルメットが一際目立つのだ。マイヨ・ジョーヌ着用者がヘルメットの色を合わせているケースは毎年見受けられるが、チーム総合トップのチームも着用することにより、最大10選手が同じ色のヘルメットをかぶることになった。

 もっとも、このルールに対応できるチームが少なかったため、結局「任意」に変わったようだが、プロローグ終了時からチーム総合トップのスカイ プロサイクリングは毎日着用している。堅実なアシストマン、クリスチャン・クネースはTwitterで「冗談かと思ったけど、このルールは本当だったよ!」と驚きをツイートしていたが、ルールが変わった今もかぶり続けるこのチームは、何気に黄色のヘルメットが気に入っているのかもしれない。

プロトンをよく見ると、黄色いヘルメットのスカイ軍団の位置取りがわかるプロトンをよく見ると、黄色いヘルメットのスカイ軍団の位置取りがわかる

 一方で、観る我々の評判はもっぱら「通学帽」「通園帽」との声。きっと黒を基調としたジャージカラーも通学服や通園服に見えてしまう効果があるのだろう。スカイ小学校…選手に役職を付けるなら、エースのブラッドリー・ウィギンスは児童会長、ベテランのマイケル・ロジャースが副会長、そしてスプリンターのマーク・カヴェンディッシュはヤンチャ坊主といったところか(笑)。

 本格的な山岳が始まる第7ステージで、スカイがついにベールを脱いだ。前半からメイン集団前方にクネースやベルンハルト・アイゼルを送り込み、このステージを狙うという意思を表示し続けた。カヴェンディッシュもボトル運びに従事し、できる限りの仕事はこなした。山岳アシストとして大きな期待を寄せられていたカンスタンティン・シフトソフが落車で離脱した今、彼らの戦いぶりがこの大会を大きく左右すると言っても過言ではないのである。

 レースが終盤に近付くにつれ、BMCレーシングチームやガーミン・シャープ、リクイガス・キャノンデールが集団の主導権を握ろうと前方に顔を出すも、北欧が生んだ“ジョーカー”がすべての流れを決めた。

ブラッドリー・ウィギンスをぴったりマークするカデル・エヴァンスブラッドリー・ウィギンスをぴったりマークするカデル・エヴァンス

 残り20kmを切って集団を牽き始めたエドヴァルド・ボアッソン・ハーゲンのペースアップは、他チームの焦りを呼ぶ。ロット・ベリソルはユルゲン・ファンデンブロックが、モビスターはアレハンドロ・バルベルデといったエースがそれぞれパンクやメカトラブルで遅れ、最後までその差をカバーできなかった。ロジャース、リッチー・ポートと牽引を引き継ぐ頃には有力選手の多くがこの日の戦いからふるい落とされてしまった。

 昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位になり、いまやウィギンスとともにチームを支えるクリス・フルームは、最終牽引を任されながら上りスプリントまで制してしまった。実際のところ、このステージのような激坂であれば、ウィギンスよりもフルームの方が強い。ブエルタのアングリルでの走りや、ペーニャ・カバルガでのステージ優勝がそれを物語っている。ウィギンスを差し置いて勝ってしまうと、2人の関係性が気になるところではあるが、第1ステージでの落車の影響で総合タイムを落としていることもあり、やはりエースの座はウィギンスから代わることはなさそうだ。

 もう少しフルームついて触れると、コニカ・ミノルタに所属していた2007年にはツアー・オブ・ジャパンの伊豆ステージで勝利を挙げ、日本にも馴染みのある選手である。その後はなかなか芽が出ず、一時はスカイとの契約も2011年限りと言われていたが、ブエルタでの活躍もあり今にいたっている。そんな浮き沈みのあった彼を見ていると、どこに飛躍のきっかけが潜んでいるか分からないものだとつくづく思わされる。

ステージ優勝を果たしたクリストファー・フルームステージ優勝を果たしたクリストファー・フルーム
総合首位に立ち、表彰台でマイヨ・ジョーヌに袖を通したブラッドリー・ウィギンス総合首位に立ち、表彰台でマイヨ・ジョーヌに袖を通したブラッドリー・ウィギンス

 ウィギンスが早くもマイヨ・ジョーヌをゲットし、翌日からはいよいよジャージを守る戦いが始まる。きっと、第9ステージの個人タイムトライアルでそのアドバンテージをさらに強固なものにしようと目論んでいるはずだ。

 もちろん、カデル・エバンス(BMCレーシングチーム)やヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)らにも挑戦権はある。チーム力の高さを証明したスカイに対して、どこまで太刀打ちができるか、そしてその牙城を崩せるか。彼らも真価が問われる日々となる。

 一瞬で鮮明になった総合争い。「通学帽」とネタにされた黄色のヘルメットは、実は「王冠」なのかもしれない。“スカイ小学校”、いや“スカイ帝国”の本当の戦いが今まさに始まったのだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

(写真 砂田弓弦)

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