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西加南子の“勝手に”サイクルカフェ紀行<4>山越えの道の休憩所「ヒロ・コーヒー・ファーム」 無農薬&自家焙煎のコーヒーに秘められた思い出

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無農薬&手作業の豆のコーヒーと明るいオーナー

台風の被害を免れたテラスに自転車を立てかける=沖縄県東村高江台風の被害を免れたテラスに自転車を立てかける=沖縄県東村高江

 「ヒロ・コーヒー・ファーム」は、沖縄県北部の辺戸岬(へどみさき)から安波(あは)の集落を抜けて15km、アップダウンを繰り返す東海岸にあります。「ツール・ド・おきなわ」を走ったことがあればご存知と思いますが、あたりには基地と農地、小さな集落の売店以外にお茶をできるようなところはありません。初めて訪れた時も、「こんなところに?」という気持ちで入っていったのを覚えています。

 実はヒロ・コーヒー・ファームは、2012年9月の台風16号で畑とカフェに大きな被害を受け、今回私が訪れた時にはまだがれきの撤去中でした。最初に来店した時のような、ヤシの木が数本生える庭にコンテナとパラソルだけでカフェ営業といった趣きです。その後オーナーの足立朋子さんと生産担当の小林敬礼さんが急ピッチで再建作業を進め、4月24日にようやく営業再開を果たしました。

オーナーの足立朋​子さん(左)、生​産者の小林敬礼さんと。雄鶏は故・足立浩志さんの生まれ変わ​りなのだとかオーナーの足立朋 子さん(左)、生 産者の小林敬礼さんと。雄鶏は故・足立浩志さんの生まれ変わ りなのだとか
急ピッチで進むカフェの再建。加工室は元のままだ=沖縄県東村高江急ピッチで進むカフェの再建。加工室は元のままだ=沖縄県東村高江

 ここのコーヒーは、日本でコーヒー栽培ができる北限とされる沖縄、その中でもさまざまな条件を満たしたこの地において、無農薬・手作業で大切に育てられたコーヒー豆が使われています。沖縄では草分け的コーヒー農園なのですが、生産量を増やすのが難しい上に、ここ数年の不作と台風の影響で収穫できた豆が少なく、この先しばらくは輸入豆とのブレンドで提供されるそうです。何年か後には、台風と戦って100%オリジナルコーヒーが飲める日がくると思います。

収穫できた豆を持つ足立さん(左)と小林さん収穫できた豆を持つ足立さん(左)と小林さん

 ちょうど、台風の影響で傷つきながらも収穫することができた30粒の実を見せてもらいました。2人の両手に乗った熟した実、これでコーヒー1杯分ほどとはなんとも貴重! また、実を食べる初体験も。熟した実が、とても甘いのには驚きました。

 販売しているコーヒーは、焙煎の具合によって味が異なるミディアム・ブレンドとストロング・ブレンドの2種類。木が若いからでしょうか、味・コクはまだまだ発展途上ですが、香り高い風味が特徴です。ホットとアイス、いずれも400円から。現時点では紙コップかオリジナルタンブラーでの提供になります。フードメニューは現在準備中ですが、サーターアンダギー、コーヒープリン、トーストといったスイーツや軽食を用意していく予定とのことです。

 サイクリストにとっては、山を越えたところにある休憩所として有名です。オーナーの朋子さんからは「台風で吹っ飛んだ鉄骨が一杯あるからバイクラックも作るよ!」と嬉しいコメントも。北部をサイクリングする際は、ぜひコーヒーで一息ついて、元気をもらってください。

強い日差しとコーヒーの香りに満たされる時間は、ここでしか味わえない贅沢強い日差しとコーヒーの香りに満たされる時間は、ここでしか味わえない贅沢

「待っていたらダメ」ヒロさんに教わったプロの心構え

 ヒロ・コーヒー・ファームは、私にとって思い出深い場所でもあります。1997年に初めて行った時には、髭面に真っ黒に日焼けして、パッと見怖そうなおじさんに出迎えられました。それが元オーナーのヒロさん、こと足立浩志さんでした。朋子さんのお父さんです。

元オーナーのヒロさんこと足立浩志さんと、台風被害を受ける前の店舗の写真。手前はパックされたミディアムブレンドとストロングブレンド元オーナーのヒロさんこと足立浩志さんと、台風被害を受ける前の店舗の写真。手前はパックされたミディアムブレンドとストロングブレンド

 強い日差しの中、ヒロさんが栽培・焙煎し、淹れてくれたコーヒーを飲みながら、原色のパラソルの下でノンビリ話をしながら飲むコーヒーに、時間が経つのを忘れました。それからというもの、毎年沖縄にいくたびに自転車で訪れるようになりました。

 何度も行くうちに、毎年ツールドおきなわが近づいてくると「今年は来るのかい?」とヒロさんから電話が入るようになりました。私の成績を気にしてくださり、応援してくれたヒロさんに、胸が熱くなりました。

 そんなヒロさんは、もういません。2009年の年末に、ヒロさんが亡くなったという知らせが届きました。私が全日本選手権で優勝し、東アジア大会代表に選出されたその年です。

 その際、代表合宿が沖縄で行なわれました。私がトレーニングで外出中に、ヒロさんはホテルのロビーに写真と手紙を届けてくれていました。私も、実際に会って全日本チャンピオンになったことを伝えたいと思っていました。ところが、「時間がない」という言い訳をするうち、とうとう会うことができなかったのです。大切な人のためには時間は無理してでも作って会うべきだと、今では強く思っています。

足立朋子さんと小林敬礼さん。朋子さんの笑顔と強い日差しは変わらない足立朋子さんと小林敬礼さん。朋子さんの笑顔と強い日差しは変わらない

 ヒロさんはもともと、ニッサンのオフィシャルチーム「SCNN」で日本グランプリにも出場したことがあるレースドライバーでした。レース界を離れたヒロさんとは、自分がカーレースをしている時にスポンサー集めに苦労したことなどよく競技生活の話をしていました。そして、「待っていたらダメだよ。話は自分から持っていかないと」と言われたのです。

 当時の私は、競技は始めていたものの物品サポートも受けずに仕事をしながら自転車をやっていた頃。自分では“プロ”という意識はありませんでした。それでも、競技を続けていくには自ら提案し、メーカーに何かを還元しようという気持ちを持たなければならないのだ、と身が引き締まったのを今でも覚えています。

僅かに台風の被害を逃れたコーヒーの木に実がなる。黄色い実が完熟。赤い実もある僅かに台風の被害を逃れたコーヒーの木に実がなる。黄色い実が完熟。赤い実もある

◇      ◇

 ヒロ・コーヒー・ファームでは、豆販売もしています。下記連絡先にメールか電話で注文を受け付けています(個人宛て配送可)。

ミディアムロースト 100g 600円 | 200g 1,200円
ストロングロースト 100g 700円 | 200g 1,400円
※営業使用・卸販売は行なっていません。


「HIRO COFFEE FARM」
所在地: 沖縄県東村高江85-25
TEL/FAX: 0980-43-2126
メール: hirocoffeefarm@k5.dion.ne.jp
営業時間: 11:00~18:00
定休日: 火・水曜日(祝日除く)
※営業時間・定休日は天候により変更する可能性あり。
※仕入れのため長期休暇があるので開店しているかどうかの事前確認が確実。

文・写真 西加南子

西加南子西加南子(にし・かなこ)
日本大学短期大学在学中、トライアスロンを始める。1994年、サイクルショップ「ズノウイースト」(千葉県船橋市)にて本格的に自転車ロードレースを開始。8年間「チーム ラバネロ」に所属し、2010年からは自身のチーム「Luminaria」を運営・活動する。座右の銘は「女は年齢じゃない、肌と筋肉だ!」、自他共に認めるカフェ好き。千葉県在住。ブログURL(http://www.kanakonishi.com/)

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