五輪出場決定 緊急インタビューロンドンは「最初から攻める」 片山梨絵がつかんだ手ごたえ

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 7月2日にマウンテンバイク(MTB)女子のロンドン・オリンピック代表候補に決まったばかりの片山梨絵(32)。第一人者として実力も実績も十分だが、日本が国別ランキングで五輪出場枠に届かなかったため、片山の五輪出場も絶望視されていた。今回、他国の出場辞退が絡んで急きょ巡ってきた五輪切符。日本のレース関係者は喜びに沸いているが、同時に、北京に続いて2度目の五輪出場となる片山には前回以上の活躍が課されている。大舞台を目前に控えた片山に緊急インタビューし、ロンドンへの抱負を聞いた。(聞き手 米山一輝)

ロンドン五輪出場が決まった片山梨絵ロンドン五輪出場が決まった片山梨絵

 ――最初にオリンピック代表決定を知ったのは、いつですか?

 「実は先週までサンディエゴにいたのですが、『UCI(国際自転車競技連合)のサイトで、日本に一つ枠がまわって来た』と、マウンテンバイク協会の方から教えていただいたのが一週間ほど前です。その時点でJCF(日本自転車競技連盟)が誰を派遣するかは決定していなかったのですが、代表選考会で優勝しているので、オリンピックに行けるだろうなと思いました」

愛媛・八幡浜で行われた五輪代表選考レースで優勝した片山梨絵(撮影 Shimaco)愛媛・八幡浜で行われた五輪代表選考レースで優勝した片山梨絵(撮影 Shimaco)

 ――その時、どう思いましたか?

 「自分の中では、国別ランキング18位以内に入って出場枠を取るという大きな目標を形にできなかったので、最初に聞いたときは正直『あ、行けるんだ』くらいでした。でも、少し時間が経つと、やはり北京オリンピックで納得できる走りをできなかったから今も続けているんだという思いがこみ上げました。もう一回チャンスを与えられたことを、すごく嬉しく思っています。ヨーロッパをずっと転戦してきた経験を生かし、五輪の舞台で思い切りチャレンジしたいですね」

 ――前回の北京五輪からの4年間について教えてください

 「北京が終わって、最初は次のオリンピックのことは考えられませんでした。やはり4年間は長いですし、トレーニングも簡単ではありませんから。まずは2年後に中国であるアジア大会を目標にして、自分に足りないと感じていた基礎体力を付けるため、長距離のレースによく出たりとか、ミドル走のような練習を増やしたりして、ベースを強くしました」

 「アジア大会の年にヨーロッパで走る機会があって、そこでもう一段階、自分を伸ばせる可能性を感じたんです。北京より上を目指せなければロンドンを目指す意味はないと考えていたのですが、ヨーロッパに行って、北京よりも上を目指せる道筋が見えてきたので、ロンドンを目指すことにしました」

 「その後の2年間は、ワールドカップを全戦転戦したり、またレースの本場ヨーロッパに軸足を持っていき、ワールドカップ以外のレースも転戦しました」

 ――前々回のアテネでも五輪出場のチャンスはありました(代表選考会で2位)。アテネ、北京、ロンドンと、五輪に向き合う姿勢はどう変化してきましたか?

 「アテネの時は日本に出場枠が回ってくると思っていなかったので、オリンピックと言われてもあまり実感がありませんでした。ただ、代表選考レースでずっと先頭を走っていたのに、最後の1キロくらいで逆転されて負け、その1ヶ月くらい後で急に日本に出場枠が回ってきたんです。『あそこでもし逆転されていなければ、自分がオリンピック選手だったんだ!』と初めて気付き、それがとても悔しくて、北京に出場することが大きな目標になりました」

片山梨絵

 「北京オリンピックには、アジア選手権で枠を取って出場することができました。目標に向かっていく感じで充実していたのですが、レースが終わった瞬間に『私、もっとできたんじゃないか?』と思ったんですよね。それからトレーニングも大きく見直しました」

 「ロンドンは北京と違って、出ることが目標ではなく、ちゃんと走って、しっかり上位に絡むことが目標です。2年間ワールドカップを転戦し、オリンピックに出るクラスの選手とも普通に戦ってきましたし、案外向こうも私のことを知ってくれています。北京のときのように“お客様”状態でスタートするのではなく、いつものレースと同じように、いつもの仲間達と冷静にレースができると思います」

 ――世界のトップ選手と日常的にレースをするようになって、日本人と世界との差をどう感じていますか? それはこれから埋めていけそうですか?

 「ヨーロッパで走るまでは、厳しいのではないかと思っていたのですが、この2年間、いろいろと経験する中で、ヨーロッパに拠点を置いて臨めば、日本人でも十分やっていけるなと感じています。ただ、今のワールドカップはチームで転戦する選手が多いので、向こうのチームに所属した方がいいと思います。私はプライベート参加なので、日本から一人で行くというのは、やはり大きなハンディになっていますね」

 ――今後、ヨーロッパのチームに所属する予定は?
「うーん、もうちょっと若かったらやりたいんですけれどね(笑)。でも、向こうのチームと言っても、一流どころから小さいチームまでいっぱいあるので、クラブチームみたいなのに所属して向こうに住んでしまうというのは、一つのやり方だと思います。ワールドカップはヨーロッパのラウンドが圧倒的に多いので、例えばドイツとかスイスとか、ヨーロッパの真ん中あたりに住めば、ほとんど車で遠征できるんですよ」

 ――1人の遠征での苦労は?

 「時差と、荷物を持っての移動と、航空券の予約、ホテルの予約、車の予約…。全部自分でこなすと、手続きにも時間がとられるし、トラブルもなくはない。結構厳しいと思っています」

愛媛・八幡浜で行われた五輪代表選考レースで独走する片山梨絵(撮影 Shimaco)愛媛・八幡浜で行われた五輪代表選考レースで独走する片山梨絵(撮影 Shimaco)

 ――今回、ロンドン五輪にチャレンジするためのプロジェクトを組まれていましたね

 「OFFROAD to LONDON(O2L)ですね。自分がロンドンを目指そうと思ったときに、一人でできる事は少ないけれど、多くの人を巻き込めばいろいろ助けてもらえる。ロンドンを目指すことをただの自己満足に終わらせず、皆に元気やパワーを与えられたらいいな、と思ってO2Lを始めました。せっかくやるんだから、皆で楽しくやろうと(笑)」

 「幸い、たくさんの方が巻き込まれてくれて、応援してくれました。私が頑張れば、みんなが笑ってくれるというのは、ものすごくモチベーションになりました。今回の五輪出場決定も、自分の事のように喜んでくれた人がたくさんいます。私に手を貸して、実際動いてくれたからこそ、一緒になって喜んでくれる。そういう仲間が多いことは、とても幸せだなと思います」

 ――ロンドン五輪の後について、何か考えていますか?

 「まだハッキリとは考えていないですけれど、海外のレースを中心にするスタンスは一区切りして、軸足は何かちょっとほかの事に移していくと思います。次の五輪は、今は全く考えていないですね」

 ――日本の女子MTB界の今後ですが、片山さんの次の世代の選手があまりいません

 「あまり良いことではないんですけど、そればかりはどうしようもないですね。ただMTB界全体としては、男子も含めて海外に行く選手が増えていて、良い流れができています。女子はどうしても競技人口が少ない中で、私自身もそうだったのですが、『頑張りたい』という子が突然変異的に現れたりするので、今の流れがどんどん続いて大きくなればいいと思っています。私達がヨーロッパに出て感じた、日本人でも上を目指せるということを、少しでも残せるようにしたいと考えています」

片山梨絵

 ――五輪での具体的な目標はいかがですか?

 「実は具体的な目標は立てていません。最低限の目標として、北京でできなかった完走は絶対できると思っています。その上で、守ってもしょうがないので、最初から攻めていきたい。それで良い順位が出たら嬉しいですね」

 「この2年間は駆け足で走り続けたので、けっこう満足した感があります。『あたし、頑張ったわ!』みたいな(笑)。あと1ヶ月、短い期間だけれど、改善しないといけないところはしっかりやって、『これでどうだ!』とロンドンで納得して終われたら最高です」

 ――でも、終わらないかも知れませんね

 「まぁ、気は変わりますからね。北京のときも『北京終わったら辞める!』ってずっと言ってましたから(笑)。でも今回こそは、よく頑張ったし、結構納得がいきました。あとの課題は、本番でそれをちゃんと出せるかですね」

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