“四つ葉のクローバー”届けました!仙台、名取の被災地を訪問 「SUNRISE RIDE 3」復興への願いを込めて交流ライド

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津波で甚大な被害を受けた名取市閖上地区を走るサイクリストたち津波で甚大な被害を受けた名取市閖上地区を走るサイクリストたち

 東日本大震災からの復興をサイクリストの立場で支援しようと、東京・下北沢の「カフェサコッシュ」が企画したライドイベント「SUNRISE RIDE3」が4月14日、仙台市内から仙台空港(宮城県名取市)まで約30kmのコースで開催された。参加した首都圏と東北のサイクリスト25人は、春の陽気と満開の桜に包まれた仙台平野をひた走り、津波で甚大な被害を受けた名取市閖上(ゆりあげ)地区を訪れて被災地の再生を願った。

被災地の様子を胸に刻み、そして伝えたい

 スタート地点は、プロ野球楽天イーグルスの本拠地として知られる「Kスタ宮城」。このイベントに参加するため、前日までに東京から2つのグループが自走で仙台にたどり着いたほか、宮城県内や岩手県からもサイクリストが集まった。

 イベントの目的は、被災地のことを忘れないよう胸に刻み、現地の様子を友人・知人に伝えること。そして、ささやかながら現地で食事や買い物を楽しみ、地元の方々と交流することで、被災地と共に歩みたい―という願いがある。さらに今回は、東京のサイクリストから東北のサイクリストへ贈る「四つ葉のクローバー」の種子も用意された。

スタート前、宮城野原運動公園でミーティングスタート前、宮城野原運動公園でミーティング
まずはKスタ宮城の前で記念撮影まずはKスタ宮城の前で記念撮影

 午前10時、3つのグループに分かれてスタート。Kスタ宮城がある宮城野原運動公園から一路、南東を目指した。走り始めてからしばらくの間は、津波が及ばなかった地域であり、特に被災の爪あとを感じることもない。絶好のサイクリング日和のもと、軽快にペダルを回した。

 国道4号を南下し、一行は広瀬川左岸のサイクリングコースへ。ここはクルマに出会うこともほとんどなく、のんびりと快適なライドを楽しむことができた。

広瀬川沿いのサイクリングコースを快走!広瀬川沿いのサイクリングコースを快走!

荒涼とした光景…復興のより所には社殿を再建

 しかし、仙台市と名取市を結ぶ閖上大橋を渡り、かつて住宅が密集していた閖上地区へ進入すると、現実とは思えない状況に参加者らは言葉を失った。復旧されたごく一部の住宅を除き、ほとんどの区画は建物の基礎部分だけが残され、荒涼とした光景が広がっている。

名取市閖上地区へ入った瞬間、周囲の光景が一変した名取市閖上地区へ入った瞬間、周囲の光景が一変した
津波で流された家屋の跡地に作られた花壇も、春の訪れを告げていた津波で流された家屋の跡地に作られた花壇も、春の訪れを告げていた

 ただ、建物の土台は残っていても、がれきはすべて撤去されている。地元関係者を中心に、懸命に復旧作業が続けられてきたことは一目でわかった。参加した遠来のサイクリストたちは、無言でその光景をデジカメやスマートフォンで記録し、また脳裏に焼き付けた。

 この閖上地区で復興のより所となっているのが、中心部にある標高6.3mの高台「日和山」だ。2011年3月11日の津波は、この“頂上”のさらに2.1m上にまで達し、すべてをのみ込んだ。それでも、ここに鎮座した「富主姫神社」が地元の信仰を集めてきたことや、閖上地区全域を見渡せる場所であることから、多くの人々が日和山を訪れ、鎮魂と地域再生への祈りを捧げている。

日和山の登り口に建てられた、かつての閖上地区の様子を伝える案内板日和山の登り口に建てられた、かつての閖上地区の様子を伝える案内板
東日本大震災の前後で閖上地区がどれほど変わったかを示す写真東日本大震災の前後で閖上地区がどれほど変わったかを示す写真
慰霊塔に線香を手向けるサイクリスト慰霊塔に線香を手向けるサイクリスト

 今回のライドイベントに先立つ3月17日、閖上で被災した宮大工の男性の尽力により、富主姫神社は2年ぶりに再建されたばかり。訪れたサイクリストたちは、真新しい小さな社殿に向かって静かに手を合わせた。

日和山に再建された富主姫神社を参拝するサイクリスト日和山に再建された富主姫神社を参拝するサイクリスト
太平洋までの距離はわずか500mほど太平洋までの距離はわずか500mほど

 仙台市宮城野区から参加した会社員の後藤豪志さん(24)は、昨年10月に東京から転勤で赴任してきたという。津波の被災地帯を訪れるのは2度目だが、「何も変わっていない。東京では震災の実感が遠のきつつあるが、ここはまだまだ被災地なんです」と訴えた。

津波の犠牲者を静かに弔う来訪者たち津波の犠牲者を静かに弔う来訪者たち

【関連写真】360°パノラマ:名取市閖上地区「日和山」(産経フォト)
PC用リンク / iPad・スマートフォン用リンク

 日和山から南東へわずか500m足らずの場所に、かつて「名取市サイクルスポーツセンター」が存在した。現在は営業が停止され、立ち入り禁止となっている。

 仙台市の北側に隣接する富谷町から参加した会社員の菅野浩さん(48)は、「以前はサイクルスポーツセンターによく来ていた。震災以降は、この辺りを訪ねにくいという思いがあったが、今日はみんなで走って様子を見ることができ、よかった」と話していた。

「よく来たね」の一言に感じた復興の歩み

 一行はその後、閖上地区の商店や飲食店が事業を“再開”し、客と“再会”するため2012年2月に開設された仮設の商店街「閖上さいかい市場」を訪れて昼食をとった。

「閖上さいかい市場」にズラリと並んだ自転車「閖上さいかい市場」にズラリと並んだ自転車
この日、紅一点の佐野ひろみさん(右)は、夫の望さんにサポートされながら男性陣に交じって快走この日、紅一点の佐野ひろみさん(右)は、夫の望さんにサポートされながら男性陣に交じって快走

 仙台市宮城野区から参加した医師、佐野望さん(41)は、さいかい市場の女性店員に「自転車で来たの?よく来たね」などと声をかけられ、ホッとしたという。

 「震災後しばらくは、自転車で被災地を訪れることなんてはばかられたが、きょうは温かく迎えてもらった。地元の方が明るく仕事をされているのを見て、以前より復興が進んでいるのかなと感じた」と佐野さん。被災地に寄り添いたいというサイクリストの願いと、“自転車で走りたい”というサイクリスト元来の遊び心、その両方を「閖上さいかい市場」の方々はおおらかに受け入れてくれたようだ。

 今回のライドイベントでは、東京と東北のサイクリストが交流を深め、復興の進展や幸福の到来を願うために、カフェサコッシュが来店客らに協力を呼びかけて「四つ葉のクローバー」の種を用意した。この種はタキイ種苗が販売しているもので、通常よりも高い確率で四つ葉が出現するという。

 ゴール地点の仙台空港に到着すると、カフェサコッシュ代表の中村孝之さんと、イベントに協力して仙台側の窓口を務めた「TOHOKU CX Project」の菅田純也さんから、東北のサイクリストに種が手渡された。

イベントを運営したカフェサコッシュの中村孝之さんから東北のサイクリストへ「四つ葉のクローバー」の種が贈られたイベントを運営したカフェサコッシュの中村孝之さんから東北のサイクリストへ「四つ葉のクローバー」の種が贈られた
イベントを企画したカフェサコッシュの中村孝之さん(左)と「TOHOKU CX Project」の菅田純也さんイベントを企画したカフェサコッシュの中村孝之さん(左)と「TOHOKU CX Project」の菅田純也さん

◇            ◇

 「SUNRISE RIDE」は、東日本大震災の被災地支援のために、カフェサコッシュが仲間に呼びかけて実施してきた小規模なライドイベントだ。これまで東京近郊で2回開催されたが、今回は初めて東北の被災地を訪れた。物資やお金の支援には結びつかないが、東北のサイクリストと交流し、被災地への思いや復興への願いを共有できたことが一番の成果だ。

 サイクリングで被災地を支援できるのか? 東北以外の地域で暮らしていると、そんな疑問を感じることもあるだろう。しかし真摯な気持ちで被災地域をサイクリングすれば、見えなかった現状が見えてくる。また、支援の気持ちは必ず現地の方々に伝わっていく。今回のライドで得た小さな発見と確信を、最後にお伝えしたい。(レポート 上野嘉之)

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