自転車店2代目オヤジは町の芸術家! 千手観音、バレリーナ…部品使いオブジェ制作

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千手観音像(左から2つ目)などの作品を前にする鈴木さん=2011年12月千手観音像(左から2つ目)などの作品を前にする鈴木さん=2011年12月

 自転車店を経営するかたわら、自転車のパーツを使って優美なオブジェを仕上げるプロアーティストがいる。さいたま市浦和区の鈴木三郎さん(63)だ。正規の美術教育を受けたことがない「根っからの機械屋」(鈴木さん)だが、今までに個展を何度も開催し、数百点の作品を売り上げてきた。「芸術は手の届かないものじゃない。日用品のように生活の中にある」と、エネルギッシュに創作活動に打ち込んでいる。(塩塚夢)

 自転車のスタンドは牛の四肢や頭に。コイルは優美に舞うバレリーナに。無機質な部品が、鈴木さんの腕にかかるとたちまち躍動感あふれるフォルムに生まれ変わる。緻密に計算された部品の組み合わせは繊細極まりない。「作品を見た後に作った本人を見ると、みんなびっくりしているよ。細っこい芸術青年を想像するみたいね」。青のつなぎに身を包み、鈴木さんは豪快に笑う。

自転車の部品で制作した牛を手にする鈴木さん自転車の部品で制作した牛を手にする鈴木さん

 自転車店の2代目。中学卒業後すぐに修業を始めたという「根っからの機械屋」だ。転機は30代前半。近所に芸術家の卵たちが集う喫茶店があった。顔なじみになった鈴木さんが芸術論に加わろうとしたところ、「自転車屋に芸術がわかるか」と言われた。その言葉が、創作魂に火を付けた。「やってやろうじゃないかって。町のオヤジの代表ってとこだな」。

 目を付けたのはバイクや自転車のクズ鉄。「これをくっつけたらおもしろいんじゃないか」と、独特のオブジェが誕生した。作品が画廊の目にとまり、以来、都内などで十数回の個展を重ね、200点以上の作品を売り上げてきた。

 美術書を読んだり、知人に聞いたりするなど、すべて独学。店のかたわら、手が空いたときに作品を作る。「これまでに何万台ものバイクを直した」と言うだけに、板金や塗装、溶接など“機械屋”としての技術が余すところなく生かされている。圧巻は千手観音像。高さ50センチほどだが、ネジや歯車が放射状に組み合わされ鉄の炎のようにゆらめく。「アイデアはある日突然降ってくる。芸術っていうのは日記みたいなもの。その日の頭の中身を刻みつける」。

バイクや自転車の部品を組み合わせて制作した「牛」バイクや自転車の部品を組み合わせて制作した「牛」

 美術館や豪邸に飾られる高価なものだけが芸術ではないというのが持論。最近は、手元に置ける小品を中心に制作している。「本当に普通の人が、家具みたいに自分の好きな作品を買って家に飾る。そんな時代が来ると思うんだ」と鈴木さん。買い手も、作り手も、もっと気軽にアートを楽しめばいいじゃないか-。“町のオヤジ”のアート魂は、既存の垣根を軽々と越え、今日も金属に熱く命を吹き込んでいる。

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