福光俊介の「寝落ち禁止!ツール三昧」<2>カミカゼ! 初物づくしだったユキヤの敢闘賞

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200km以上逃げ続けた終盤の新城幸也200km以上逃げ続けた終盤の新城幸也

 あまりにも興奮してしまい、今になってドッと脱力感に襲われている。

 スタート直後から200km以上逃げた新城幸也(日本、チーム ヨーロッパカー)が獲得した敢闘賞。賞自体は2009年最終ステージの別府史之(当時スキル・シマノ)に続き日本人2人目だが、多くの観客が見守るツールのポディウムに上がった日本人はこれが初めてなのである。

◇      ◇

 よくよく考えると、第4ステージのユキヤの走りは日本の自転車界、いやツールの歴史においても初物づくしだ。

ツールのステージ0km地点でファーストアタックを決めた初の日本人選手
ツールのバーチャルマイヨ・ジョーヌとなった初の日本人選手
ツールの中間スプリントポイントをトップ通過した初の日本人選手
ツールのポディウムに登壇した初の日本人選手

 どれもこじつけと言われればそれまでだけど、本場ヨーロッパから遅れをとっている日本のサイクルスポーツ界にとっては、その1つ1つが歴史的快挙。そして、これを日本の競技水準が世界レベルに達するための通過点としなければいけない。

 一緒に逃げた選手も良かった。ブエルタ・ア・エスパーニャで2008年から4年連続山岳賞のダヴィド・モンクティエ(フランス、コフィディス ルクレディアンリーニュ)はもちろん、ボクはアントニー・ドゥラプラス(フランス、ソール・ソジャサン)の存在が大きかったと見ている。

 過去にフランスの小レースであるポリ・ノルマンド優勝や、若手の登竜門ツール・ド・ラヴニールでのステージ優勝経験を持ち、これまで収めてきた好リザルトのほとんどが逃げによるもの。今年もカタルーニャ一周第1ステージで2位に入っており、今回のような展開は彼にとってもベストなものだったのである。このメンバーであればフランス語で会話ができるし、山岳ポイントが欲しいモンクティエと逃げで活路を見出したい2人の利害も一致していたのだと思う。

この日の敢闘賞を獲得した新城幸也(チーム ヨーロッパカー)。日本人選手で史上初めてツール・ド・フランスの表彰台に上ったこの日の敢闘賞を獲得した新城幸也(チーム ヨーロッパカー)。日本人選手で史上初めてツール・ド・フランスの表彰台に上った
昔、住んでいた町の近くを通ってご機嫌の新城昔、住んでいた町の近くを通ってご機嫌の新城

 最近のユキヤの走りを見ていると、2009年にBbox・ブイグテレコムに加入した頃のようながむしゃらさが戻ってきたような気がする。当時はプロチームで自らの居場所を確保するのに必死な様子が見て取れたものだ。ダンケルク4日間レースで総合9位、クリテリウム・ドーフィネではスプリントに加わって、あれよあれよという間にツールのメンバー入り。ツールでもいきなりステージ5位に入った。あの頃との違いといえば、経験と実力、チーム内での信頼度。そして、この敢闘賞でプロトン内で受けるリスペクトはさらに大きなものになるだろう。

 ボクはテレビでレースを観る時、必ずパソコンを前に置く。公式サイトを確認しながらだったり、Twitterで戦況についてあれやこれやツイートしたりするのだけど、このステージに関しては本当に落ち着かなかった。ユキヤがメイン集団に吸収されてからは、レースそっちのけで公式サイトのリロードを繰り返し。敢闘賞選手の発表があるまでどれだけ時間が長く感じたことか。

 そして、ユキヤが敢闘賞に決まったら決まったで、喜びすぎてレースの最終局面を押さえていられなかったりする。気が付いたら残り3kmを切っての大落車が起こっていたし、アンドレ・グライペルの勝利をお膳立てしたロット・ベリソルトレインの美しさも、レース後のハイライト映像でようやく把握した。いや、実際はテレビ画面に目をやっていたはずなのだけれど、ハイになりすぎてしまってレースに身が入らなくなっていたという方が正しいか。

 実を言うと本業の締切が迫っていて、本当はツールどころではなかったりするのだが、無理やりにでも早めに仕事を切り上げてレースを観て正解だった。もちろん、後手に回した分のしわ寄せが及ぶけど、この喜びと「次はきっと勝ってくれるだろう」という期待感が仕事へのモチベーションとなりそうだ。

 ユキヤがポディウムで見せた満面の笑顔のように、ボクも笑って締切を乗り切る覚悟を決めた。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

(写真 砂田弓弦)

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