チームNIPPO・デローザ 大門宏GMと福島晋一選手に聞く(前編)大ベテランと大学生 凸凹構成で戦ったランカウイ 苦戦の末に得た大金星と経験

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2013シーズンのチームNIPPO・デローザは、日本、イタリア、アルゼンチン、コロンビアと多国籍な選手15人で構成される。イタリアを拠点に活動しながら、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・コリアなどのUCIアジアツアーにも積極的に参加する予定2013シーズンのチームNIPPO・デローザは、日本、イタリア、アルゼンチン、コロンビアと多国籍な選手15人で構成される。イタリアを拠点に活動しながら、ツアー・オブ・ジャパンやツール・ド・コリアなどのUCIアジアツアーにも積極的に参加する予定

 今年2月から3月にかけて開かれたアジア最高峰のステージレース「ツール・ド・ランカウイ」(2.HC)で、主力選手のジュリアン・アレドンド・モレノ(コロンビア)が総合優勝を果たし、欧米のトップチームを相手に大金星を挙げたチームNIPPO・デローザ。昨シーズンも日本開催の国際レースで破竹の勢いを見せた強豪チームだ。今季は42歳のベテラン、福島晋一が加入。そして福島とは対照的に、20歳で鹿屋体育大学に在籍中の石橋学と徳田鍛造というフレッシュな2人も加入し、それぞれシーズン初戦となるランカウイに参戦した。

 アレドンドはクイーンステージ(最難関ステージ)である、ゲンティンハイランドにゴールする第5ステージで独走優勝を飾ってリーダージャージを獲得した。しかし、経験豊富なキャプテンのフォルツナート・バリアーニ(イタリア)や福島晋一を従える形で、アレドンド自身が大舞台でリーダーになるのは初めてのこと。それに加え、プロ初戦で右も左もわからない大学生が2人。開幕時から凸凹構成と言われていたチームは、最終日までの5ステージで苦戦を強いられることになった。

 チームNIPPO・デローザによる懸命のレースコントロールに対し、総合順位逆転を狙うトップチームは鋭いアタックを仕掛けた。途中、第7ステージでは頼れるバリアーニが雨水の影響からかひどい胃腸トラブルに見舞わるなど、大ピンチの局面も多かった。しかし、チーム一丸となった果敢な走りで無事に最終日までアレドンドの総合首位を守りきり、日本、アジアのコンチネンタルチームとして、非常に価値のある勝利を掴んだ。そのバックグラウンドやチームのヴィジョンを、福島晋一選手とゼネラルマネージャーを務める大門宏氏に語ってもらった。(聞き手 田中苑子)

福島晋一選手と大門宏マネージャー福島晋一選手と大門宏マネージャー

 ――ツール・ド・ランカウイでは、どのような狙いがあってのチーム編成だったんですか?

 福島晋一選手(以下、福島)「大門さん、アレドンドがリーダージャージ着たって聞いたとき、正直シマッタって思いませんでした?(笑)」

2月末にマレーシアで開催されたツール・ド・ランカウイのチームプレゼンテーション。チームNIPPOは初出場だったが、福島晋一は今年で10回目、出場選手のなかで最多の出場回数だった2月末にマレーシアで開催されたツール・ド・ランカウイのチームプレゼンテーション。チームNIPPOは初出場だったが、福島晋一は今年で10回目、出場選手のなかで最多の出場回数だった

 大門宏マネージャー(以下、大門)「いきなり返答のピントがズレてるな(笑)。第5ステージに勝った日の夜、アレドンドから『まずはステージに勝てて良かった。このレースのメンバーに選んでくれたこと、大変だったコロンビアからのチケットコーディネート等、改めて感謝している、本当にありがとう』とメッセージがあった。まずは彼にとって念願だった目標が達成できて、正直ホッとした。彼自身のコロンビアでの苦労を知ってるだけに、それはとても嬉しかったな。

 でもその先、チームは総合を守ることよりも、チームメンバーの誰かでステージ優勝を狙う展開になるんじゃないのかな? とも考えた。現場監督の(アルベルト・)エッリには伝えてあったんだけれど、当初から総合優勝を狙うメンバー構成にしたつもりはなかったから。

 通常、ステージレースの途中でリーダーになり、『総合を守るオーダーで行けるとこまで行く』とチームが決断した場合、当然のことながら、目標や作戦が連日固定されチームメイトが全てその目標に傾倒することになるよね? チームが総合を維持することを目標にした時点から、もう勝つか負けるか(ジャージを失い2位でも負けは負け、チームには敗北感しか残らない)って展開になる。

チームのエース、ジュリアン・アレドンド・モレノ(コロンビア)のために懸命にアシストをするフォルツナート・バリアーニ(イタリア)。アレドンドはこのあと独走でステージ優勝を挙げるチームのエース、ジュリアン・アレドンド・モレノ(コロンビア)のために懸命にアシストをするフォルツナート・バリアーニ(イタリア)。アレドンドはこのあと独走でステージ優勝を挙げる
チームの現場を仕切るイタリア人のアルベルト・エッリ監督。2000年のツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを4日間着用した経歴をもつ元一流選手チームの現場を仕切るイタリア人のアルベルト・エッリ監督。2000年のツール・ド・フランスでマイヨジョーヌを4日間着用した経歴をもつ元一流選手

 今回の布陣を総合的に見た場合、チームとしては、リーダージャージに執着した挙げ句、総合2位や総合上位で終わるよりステージ2勝のほうが価値がある、って選択も間違いじゃない。たとえ勝てなくてもマウロ(・リケーゼ/アルゼンチン)に本気でスプリントさせたいステージも多かった。要するに、たとえばチームにステージを勝てるスプリンターがいたとしても、総合を狙うには、それは我慢しなきゃならない。

 一言ではなかなか上手く説明できないんだけれど、リーダーのキャラクターやコースの状況にもよる。早い段階で、アレドンドやアシスト陣に不安材料が多ければ、あっさり総合を捨てる判断も有り得たと思う。アレドンドも勝った時のインタビューでは『総合は必ず最終日まで死守する、手放さない』みたいなことを言ったようだけど、内心は違っていた。

レースのスタートを待つ福島晋一。アレドンドのリーダージャージを守るために、チームからは緊張感が漂うレースのスタートを待つ福島晋一。アレドンドのリーダージャージを守るために、チームからは緊張感が漂う

 お人好しの彼だから恐らく誘導尋問に引っ掛かったんじゃないかな…(苦笑)。ジャーナリストは、記事として、たとえ社交辞令でも、そう言わせたいものだから。あのときは、これで(ステージ優勝を狙う)晋一は終わったなと思ったよね(笑)。その瞬間に、晋一は悟ったと思うけど」

 福島「はい、エッリに言われましたよ。いや、でもまさかリーダージャージを守る仕事ができるなんて思っていませんでしたから良かったです(笑)」

 大門「質問に対する話の続きだけど、時期的にランカウイは、基本的にトレーニング(シミュレーション)レース的な位置付けでした。ただ、夏真っ盛りの南半球のメンバー(コロンビアのアレドンド、アルゼンチンのマウロ)にとって、狙える体調であったことは確かだった。

 昨年は1月にあった南米チリのステージレースがそんな位置付けだった。しかし今年は大会が延期されてプログラミングできなかったことも、ランカウイのエントリーを本気で考えた理由。2月から3月にかけてのランカウイは、大会の規模的にもまさに打ってつけだった。だからあえて個人総合は最初からチームの最優先目標から外し、ワンデイレース×ステージ数と考えるのもいいんじゃないかと考えていた。でも、晋一はもっと試運転したかったと思うんですよね、自分がどれだけ仕上がっているかって…」

 福島「初日に逃げて、思う存分やらせてもらって、自爆したんで大丈夫ですよ(笑)」

ツール・ド・ランカウイ第1ステージ、アジア人2選手とともに逃げに乗った福島晋一ツール・ド・ランカウイ第1ステージ、アジア人2選手とともに逃げに乗った福島晋一
初めてプロとして国際レースに挑む大学生の徳田鍛造と石橋学。たくさんのことを経験した10日間のステージレースだった初めてプロとして国際レースに挑む大学生の徳田鍛造と石橋学。たくさんのことを経験した10日間のステージレースだった

 ――チーム構成の狙いですが、若い選手とベテラン選手の配分は?

 大門「 大学生(鹿屋体育大学)の2人を一緒に出したかったんです。(鹿屋体育大学の)黒川監督にもお約束したんですが、あの2人を離すつもりはなかった。イタリア人スタッフやチームメイトは、ちょっと抵抗あるかな、とも思ったんですが、彼らは春休みを利用してチームに合流しているので、1カ月以上の長期遠征は2月から3月に限られてしまう。

 HCクラスとはいえアジアのレース、しかも2月のレースなので、強い選手、仕上がってる選手もいるけれど、そうでない選手もいる。ランカウイのほうが、彼らにとって得られることが多いと思いました。積極的にミッション、課題に挑戦しても、(それでメーン集団から遅れたとしても)最終的に完走するためのグループがある可能性も高い。

懸命にリーダーチームとしてレースをコントロールする福島晋一。経験豊富でレースを熟知する彼の存在はチームにとって大きなプラスとなった懸命にリーダーチームとしてレースをコントロールする福島晋一。経験豊富でレースを熟知する彼の存在はチームにとって大きなプラスとなった

 ステージの数も多いので、経験しながら習得できるメリットは計り知れない。最初からイタリアへ乗り込み、寒い中でいきなり完走者の少ないハイレベルなワンデイレースを走ってリタイアを繰り返すよりも、ランカウイの方が学べることが多いと思いました。このセレクトに全く迷いはなかったですね。

 大学生の出場を決めた時点で、晋一と契約することはまだ決まっていなかったんです。晋一と正式に契約を交わしてからも、晋一にあからさまに2人の教育係をお願いするつもりはなかったですね。やっぱり晋一にはエッ?? と言われましたが、僕自身の考えは揺るぎませんでしたよ(苦笑)。

 主力選手の内間康平がナショナルチームでカタール、オーマンに派遣されていた背景もありますが、たとえアンダーの1~2年目の若者でも、将来性が見込めるのならこのくらいのミッションは経験しないとどうしようもないと思ってます。プロツアーのメンバーも調子が不安定な時期だし、決してビビることじゃない、無謀なチャレンジではないと思いました」

緊張感に包まれながらスタートを待つ石橋学。プロとしてのレースや、外国人のチームメイト……彼らにとって、右も左もすべてのことが初めての経験だった緊張感に包まれながらスタートを待つ石橋学。プロとしてのレースや、外国人のチームメイト……彼らにとって、右も左もすべてのことが初めての経験だった

 ――チームは大学生2人にどのようなオーダーを出したんですか?

 福島「最初、2人には集団のなかでとにかく脚を回して、逃げに乗れたら乗って…といった具合いで、そんなに負荷はなかったけれど、リーダージャージを取ってからは『仕事をして絶対完走!』という雰囲気になって…(笑)」

 大門「エッリが現役時代、大きなチームにいた経験しかなかったので、強引に2人に無理をさせてるんじゃないかって心配していました。海外で走るのも初めて、HCクラスも初めて、こういったメンバーで総合を守るミッションも初めて、外国語のコミュニケーションも初めてと何もかもが“初体験三昧”(苦笑)で確かに色々と無理がありました。

第8ステージのスタート前。表彰式でもらったマスコットにチームキットを着せて遊ぶ選手たち。明るいキャプテンのバリアーニがムードメーカーだ第8ステージのスタート前。表彰式でもらったマスコットにチームキットを着せて遊ぶ選手たち。明るいキャプテンのバリアーニがムードメーカーだ

 彼らは経験が浅く力がない分、無理もさせられないので…ただ、そこまで経験がないとはエッリも信じがたい状況だったはずです。キャプテンのバリアーニもさぞ困惑してるんじゃないかと察したので、彼には『未経験三昧の彼等を前方に出してコントロールさせることには懸念がある。力がないだけならまだマシなんだけれど、無意味に引きまくって消えてしまうような事態も彼らなら有り得る。無駄にエネルギーを消費させないためにも、まずはバリアーニや晋一の真後ろ(横とか極力近い位置)にいさせて、タイミング的に必要な時に的確なアドバイスを出すように。晋一を全面的に信頼しても大丈夫だから!!』と伝えました。

 バリアーニも迷いが吹っ切れたみたいで『やっぱりそうだよな…。俺もそう思ったんだけど、特に学生の2人は言葉も通じないので困った』って(笑)」

 福島「最初はアタック合戦には参加しないで、アタックをかけた選手のあいだを埋めるのは僕やバリアーニなどある程度力のある選手がやって、そこで力尽きないようにって言いましたね。逃げが決まったところから、彼らには仕事をしてもらった。でも、このうえない貴重な経験ができたと思いますよ!」

(インタビュー後編に続く)

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