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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<5>エースのために! 一丸となってチームの勝利に貢献するアシストたちの存在

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 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス、レイディオシャック・レオパード)とペテル・サガン(スロバキア、キャノンデール プロサイクリングチーム)――今年の石畳クラシックを象徴する2人の戦いは、ツール・デ・フランドルでクライマックスをむかえ、カンチェッラーラが勝利。ゴールのタイム差1分27秒に見る要素は一体どこにあったのか、考えてみたいと思います。

パワー、経験、そしてもう1つの勝因

ツール・デ・フランドル表彰台、左から2位のペテル・サガン、優勝のファビアン・カンチェッラーラ、3位のユルヘン・ルーランスツール・デ・フランドル表彰台、左から2位のペテル・サガン、優勝のファビアン・カンチェッラーラ、3位のユルヘン・ルーランス

 3月22日のE3ハーレルベーケに勝利したカンチェッラーラと、その2日後のヘント~ウェヴェルヘムに勝利したサガン。かねてから4月7日のパリ~ルーベには出場しないとサガンが宣言していたこともあり、互いに優勝候補として雌雄を決するのは、ひとまず3月31日のツール・デ・フランドルが山場となった。ここまでの勝利数だけを見ればカンチェッラーラ2勝、サガン1勝との形に。

 例年カンチェが注力しないヘント~ウェヴェルヘムは除くとして、E3とフランドル、趣の近いレースで単純な力を比較すると、やはりまだカンチェの方が上と見て良いのではないだろうか。ただし、個の力だけでは量ることができないのがロードレースなのである。

 フランドルのレース内容から2人を比較すると、大きく見て3つの要因が挙げられる。1つは石畳(パヴェ)が2km以上も続くオウデ・クワレモントや、短いながらも最大勾配20.3%のパテルベルグで見せたパワー。2つめには経験。そして最後はアシストの差だったのではないか。

パテルベルグでサガンを引き離すカンチェッラーラパテルベルグでサガンを引き離すカンチェッラーラ

 早い段階からメイン集団をコントロールしていたレイディオシャック・レオパードのアシスト陣。一方のキャノンデール プロサイクリングのアシストは、サガンがトラブルで後方に下がるなどしていたこともあり、引き上げに脚を使ったり、激坂コッペンベルグでの足止めに遭うなどして人数を減らしていった。

 ここ数年のカンチェッラーラは重要局面で孤立する場面が多く、アシストに恵まれないといった評価もあった。しかし今回は3回目のオウデ・クワレモントでアタックするまで、チームの誰かしらが集団の前方でコントロールする状況を作っていた。

ツール・デ・フランドルでカンチェッラーラを好アシストしたデヴォルデル(ティレーノ〜アドリアティコ2013)ツール・デ・フランドルでカンチェッラーラを好アシストしたデヴォルデル(ティレーノ〜アドリアティコ2013)

 2回目のパテルベルグ以降のスティーン・デヴォルデル(ベルギー)の牽引は強力だった。石畳クラシックのすべてを知るかつての“王者”の加入は、チームに勢いと勇気を与えたと言っても良いだろう。彼以外にも、マルケル・イリサル(スペイン)、ハイデン・ルールストン(ニュージーランド)、グレゴリー・ラスト(スイス)らが交代でコントロールを担った。その甲斐あってか、カンチェッラーラが最初のアタックを繰り出すまでに、サガンをある程度消耗させることに成功した。

 1人のエースのために身を粉にして走る。時に「なぜそこまでして走るのだろう?」と感じてしまうこともあるのだが、それがサイクルロードレースの美しさでもある。決して大きなリザルトは残せず、リーダージャージやトロフィーを手にすることも無い。それでも我々は、レースを観た者として、彼らの姿を記憶に残し続けていきたい。

いよいよパリ~ルーベ カンチェッラーラの3冠なるか?

2012年のパリ~ルーベ。選手が砂埃をたてて観客の前を通過する2012年のパリ~ルーベ。選手が砂埃をたてて観客の前を通過する

 4月7日のパリ~ルーベで、今シーズンの“北のクラシック”は終了する。レースは254km、そのうちパヴェが52.6kmを占める。27のセクションのうち、アーレンベルグやカルフール・ド・ラルブルといったおなじみのパヴェは健在。特にカルフール・ド・ラルブルはゴールまで残り約18kmと、勝敗を左右する動きが起こりやすいポイントだ。

 アルデンヌクラシックへの調整に入るサガン、負傷欠場が発表されたトム・ボーネン(ベルギー、オメガファルマ・クイックステップ)が不在となる今回のパリ~ルーベでは、カンチェッラーラが優勝の最有力候補だ。E3、フランドル、そしてルーベの3冠がかかる。

 続くのは、スペイン人として初のルーベ制覇を目指すフアンアントニオ・フレチャ(ヴァカンソレイユ・DCM)や、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、オメガファルマ・クイックステップ)ら。チーム力で勝負のスカイ プロサイクリングやBMCレーシングチーム、2年ぶり出場の別府史之(オリカ・グリーンエッジ)にも期待したい。

今週の爆走ライダー: アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

「爆走ライダー」とは…
1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

ピュアスプリンターとされてきたグライペルもツール・デ・フランドルで逃げを見せたピュアスプリンターとされてきたグライペルもツール・デ・フランドルで逃げを見せた

 近年のサイクルロードレースは、脚質に合った“土俵”でだけ走っていればOKとはいかなくなっている。スプリンターであっても、山岳アシストを求められることがあるし、逃げを任されるケースだってある。

 HTC・コロンビア時代はピュアスプリンターとして常に守られる存在だったグライペルだが、現チームに移籍後は自身が主役になるレースやステージ以外では、献身的なアシストに徹する。特にクラシックで逃げに乗ることが多い。

ツアー・ダウンアンダー2013の表彰台。ポディウムガールと並んだグライペルのたくましい脚に注目ツアー・ダウンアンダー2013の表彰台。ポディウムガールと並んだグライペルのたくましい脚に注目

 フランドルでも逃げた。“ゴリラ”と称される筋骨隆々の体でオウデ・クワレモントを軽々上ってしまう様子には、オールラウンダーとしても並の走力ではないはずだと確信させられた。最終的に5分56秒遅れの集団ゴール(51位)だったところをみると、メイン集団吸収後もそれなりに粘ったのだろう。チームとしてもユルヘン・ルーランス(ベルギー)が3位に入り、それを演出したグライペルはアシストとしての責務をまっとうした。

 彼について1つだけ気になっていることがある。昨年のツール・ド・フランスの第13ステージ、後半の3級山岳とゴール直前での横風をクリアしステージ優勝した際に、「グライペルはジュニア時代にヒルクライムのチャンピオンだった」とツイートした海外のジャーナリストがいたのだ。それは果たして事実なのかネタだったのか、それは次に“爆走ライダー認定”をするまでの宿題にしておこう。

文 福光俊介・写真 砂田弓弦

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)
自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて数十年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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